第9話.はじめまして四足歩行!
ドン、ドン!!
数回の爆発音。突風が吹き砂が舞い上がる。視界が砂色に染まった時、地面が叫んだ。
ゴゴゴゴゴッ!
大きな音とともに、建造物が右に左に揺れだした。アリサがふらつきながら、砂エルフたちに発破をかけていく。
「爆撃か?地震か!?武器を取れ、敵が来るぞ!」
地震が続く中、戦士たちはそれぞれの獲物を持ち、戦闘の準備が行われていく。スイカがうつわの中身を飲み干してから立ち上がる。
「メイちゃん、スイカちゃん。大丈夫?」
「はい」
「うん。おばあちゃんも大丈夫」
メイは長老の袖をしっかり握っている。まだ止まらない地揺れ。さらに揺れが強くなったかと思うと、足下の砂が二つに割れていく。
「あぶなっ!?落ちないように気をつけて!」
しばらくすると、揺れが止み。同時に地の裂け目から巨大な何かが這い出してきた。真っ黒な塊に、小さな丸い赤い光が灯っている。
「なんだ!?何か出てきた!」
「犬どもの新しい武器か!?気をつけろ、弓を構えろ!!」
キィィィィン、と甲高い音をあげて。それの全貌が姿を現した。金属でできた四つ足の雪だるま、そんな風貌の何かだ。四肢を自在に動かして、地の底よりのぼり出たのだ。
「ナナコ先輩!メカですよ!?」
「自立式の兵器かな。攻撃してくるようなら……」
言い終わる前に、その四足のメカから銃口が飛び出した。同時に周囲の人間に発砲を始める。
ドドドドッ!!
砂エルフは素早く散開して、それぞれ近くの遮蔽物に入った。重い機関銃の音が轟く。豆腐でも砕くかのようにコンクリートを簡単に突き抜けて、銃弾が突き抜けていく。制服の三人も、それぞれ身を隠した。
「魔法生物だ!戦えないものは隠れていろ!」
声の方へ機銃が掃射された。薙ぎ払うように撃ち出された弾丸が地面を切り裂いていく。
「火の神よ、我が弓に加護を!そして我らに仇なす者に鉄槌を!」
いつか聞いた魔法の詠唱。アリサを筆頭に何人かの砂エルフたちが、炎を纏った矢を放った。キュインと間接が火花を散らしてゴーレムが回避行動を取る、大きな図体に似合わない機動性を発揮して数本の矢を回避した。だが残り三発それぞれが黒い巨体に直撃する。
ドドンッ!!
エルフ達の矢が装甲面に当たった瞬間、一気に燃焼し爆発。黒い図体が白い煙をあげて仰け反った。だが目に見えるほどのダメージは残っていない。二本の銃口が装甲の隙間から顔を出して、それぞれが好きな方向へ銃弾を吐き出した。
「ぐぁ!?」
方々で砂エルフがうめき声をあげる。銃撃の切れ目にナナコが遮蔽物から飛び出した。肩に大きな金属製の筒を担いでいる。
「みんな隠れて!ぶっ飛ばすよ!」
言うが早いか彼女はロケット推進式榴弾砲を構え、引き金を引いた。高圧のガスが砲身の後方へ噴出され、同時に弾頭が飛び出して火を吹いた。成形炸薬弾は直撃すれば戦車の装甲ですら無事ではすまない。高速で飛翔するそれは、ゴーレムの横っ腹に直撃して轟音と共に爆発した。
ドン!!
それでもやはりよろめくものの、貫通はせず。装甲が凹んで焦げた程度であった。ゴーレムは再び駆動音らしきものをあげて動き続ける。ナナコは榴弾の発射機をその場に捨てて走り始めた。反撃の機銃の掃射を回避しながら一人考える。
「んー。前世紀の火器じゃ限界かなぁ。かと言ってあんまり大規模なやつは……」
その時、再び大きく地面が揺れた。
「うわっ!?」
ナナコは足を取られながらも、転ばずに踏みとどまる。同時に先ほどゴーレムが這い出てきた裂け目から、二体目のそれが姿を現した。
「もう一体!?どうなっているんだ……」
砂エルフたちの絶望する声が聞こえてくる。その時、ナナコの腰に柔らかいものがぶつかった。
「っく!?」
声をあげて何かがよろめいた。彼女は反射的にそれを手で支える。腕の中にはミカがいた。あの捕虜とした獣耳の少女だ。
「あ、獣耳ちゃん?ごめんぶつかった!」
「ミカだ!それより早く隠れろ!」
二人して近くの建物の残骸に飛び込んだ。ミカは肩で息をしながら言った。
「四脚戦車がなぜこんなところに……」
「あの機械のこと知ってるの?」
「話に聞いた事があるだけだ。掘り出せなかったでかい戦車が眠っていたと……起動には失敗したはずだが」
「じゃああれは獣耳ちゃんたちの味方じゃないんだね?」
「違う。我々の武器ではない。こちらにも攻撃を仕掛けてきたのがその証拠だろう」
「そっか」
よく見ると、ミカの服はところどころ破れ汚れている。頭からも少し血が出ているようだ。この戦闘で負ったものだろうか。額の血を拭いながらミカは言う。
「悪いが、私はこの騒ぎに紛れて逃れさせてもらう」
「仲間のところに帰るの?」
「そのつもりだ。アレに捕まらなければな」
そう言いながら、ミカはゴーレムを見る。視線を同じにしてナナコが言った。
「わかった。私もついていくよ」
「はぁ!?何を……!」
「私の目的はこの砂漠化の原因を探る事。獣耳ちゃんの仲間が砂を掘ってるってことは、何かわかることがあるんじゃないかなって」
「勝手な物言いだな」
「タダじゃないよ。私たちであの四脚戦車を潰してあげる。あなたも骨になって仲間のところに戻りたいわけじゃないんでしょ?」
ミカは少し考えたあと、笑って言った。
「はは、良いだろう。あれをなんとかできるなら仲間に会わせてやる。話ができるように口も聞こう」
「オッケー!約束だよ」
そう言うと、ナナコはふわふわの耳をもふもふと撫でる。
「おい!」
非難する彼女を無視してナナコが立ち上がった。




