第15話.襲撃者と神さま!
「ど、どうしましょう?なんかヤバい展開です」
座ったままのスイカが、隣のナナコに言った。いつからか、サングラスをかけた彼女は言葉を返す。
「んー。今考えてるんだけど、どうしようね。私って結構約束とか気にするタイプだからさ。口を出さないって言っちゃったからなぁ」
「そんなこと言ってたって……メイ?メイは?」
「メイちゃん消えちゃったね。いつのまにか居なくなってる」
「メイー!」
大きな声を出してしまったことに気がついたスイカが口を閉じる。が、時すでに遅し。小銃を持った仮面の一人が二人に近づいてくる。
「おい!貴様ら、何を座っている!立てっ!」
「んー。だって言ったじゃん、エルフはそっち、犬ちゃんはそっちって。どっちでも無いから座ってるんだけど?」
言いながら、ナナコはかけていたサングラスを外して机に置いた。
「貴様ッ!!」
そう叫ぶとナナコのこめかみに銃口を突きつける。
「神さま!」
アリサが叫んだ。
パァンッ!!
銃口が火を吹き、彼女のこめかみを焼いた。音速を超えるライフル弾がキュンっと甲高い悲鳴を上げると、勢いを失って地面に落ちた。
「熱っ!」
ナナコは銃撃を受けたこめかみを手で払いながら言う。
「んー。降りかかってきちゃったら、火の粉は払っても良いよね?」
言うやいなや、ドンっと机を両手で叩いた。光の粒子が空中を舞う。両手にそれぞれ粒子が集まったかと思うと、黒と銀の大柄な回転式拳銃がその手に握られていた。
「は!?」
右手の黒い一梃を、先ほど発砲した仮面の額に向ける。
「じゃあお返しね」
ドンッ!!10.9mmマグナム弾が至近距離で直撃した。フェイスガードになっている仮面が粉々に砕け散り、その衝撃で身体ごと吹っ飛んだ。
「ごめんね〜攻撃されたから反撃しちゃうけど。ほんとは人間達の争いごとに介入したく無いんだけどなぁ〜」
ナナコはしょうがないなぁなどと言いながら机の上に飛び乗ると、笑顔でマグナム弾をぶっ放した。呆気に取られていた小銃を持っていた仮面が二人、あっという間に直撃を受けてその場に倒れた。最後の一人。剣を持っていた仮面は銃弾を剣で弾くという神技を披露して、船長の背後に回った。手を捻りながら首筋に刃を当てる。
「動くな、動けばコイツの首を掻っ切るよ!」
「あっ、人質?そう言うことしちゃう感じ」
ナナコがスイカに目線を送る。その瞬間、世界から時間が奪われた。速さは意味を失い、スイカは仮面から船長を引き剥がすのになんの抵抗も受けなかった。
「……っ!?」
気がついた瞬間、手元から人質が消えた。仮面の奥で動揺が見える。
「すぅっ、ごめんなさい!」
スイカがそう言って仮面に向かって拳を振り上げる。敵も身を捻り剣を振った、何度も反復した動作が身体に染み付いている。水面を切って飛ぶ石のように刃が走った。だがその刃の先端、最速のきらめきより速くスイカの大ぶりな拳が先に当たった。顔面を、これ以上無いスピードで単純に殴られた。仮面が真っ二つに割れて、背中を床に叩きつけられた。バキッと木製の床が割れて跳ねる。
「っがは!?」
背中をしたたかにうちつけられつつも立ち上がった。半分に割れた仮面の奥には、砂エルフと見える顔立ちがあった。額から血を流しながら呪文を唱える。
「火の神よ、我が剣に加護を!そして我らに仇なす者に鉄槌を!」
「ッ!?爆発するぞ!伏せろ!」
魔法の呪文に反応して、アリサが叫んだ。彼女の村の村長に覆い被さって伏せる。ぶわっと熱された空気が持ち上がる。仮面の人間の剣の周りに炎の渦が巻いた。
「吹き飛びな!」
ボンッ!!会議室の内部がかき混ぜられて吹き飛んだ。椅子が宙を舞い、破片が散らばる。部屋自体が爆弾になったようだ。
「うわあ!?」
黒煙が立ちのぼる。煙の中で四つの人影が立ち上がった。仮面の四人だ。砕け散ったはずの仮面が元に戻っている。瓦礫の中から、ゆらりとナナコが立ち上がる。
ドンッ!ドンッ!!
煙を掻き分けて銃口が火を吹く。仮面のエルフ達はその場に倒れた。しかしすぐにもう一度起き上がる。彼女達は焦点の合わない目で照準を合わせて、反撃の小銃を発砲する。
パパッ!!
ナナコの前に青白い光の粒が浮かび上がり、空中に無骨な鉄板が出現した。そこにライフルの弾が直撃する、甲高い音と火花を生じさせながら鉄板が踊った。
「どうして不死身かな!」
ナナコは鉄板を蹴って仮面達の方に押し倒すと、横に転がりながら両手の大型拳銃の引き金を引く。10.9mmマグナム弾の火力を押し付けた。たまらず前方にいた仮面達の三人が後ろに倒れる。
「火の神よ……」
「せーっのっ!」
再び呪文を唱えようとする剣を構える仮面。直後スイカがドロップキックをした。コマ送りのような不自然なスピードで一瞬消えたかと思うと、突然出現して全体重を乗せたキックが炸裂した。蹴りを受けた剣が砕け散る。横っ飛びに吹っ飛んでいき壁に激突それをぶち破った。
「あ、やりすぎちゃったかも」
「んー。いや、まだ生きてるみたい。一回転して壁もぶち破ったのに、ずいぶんタフだねぇ」
壁の穴から物音がする、まだ動いているらしい。




