第13話.宇宙と世界と!
薄暗い教室の真ん中に地球が浮かんで光を放っている。メイが何か呟くと、部室の電気が灯り明るくなった。
「おかえり〜」
「ただいま!」
ナナコとスイカがお互いに労いの言葉をかけあった。
「大変ですね。何がどうなっているのか」
「ん〜。そうだね。ところでメイちゃん話って?」
「ん」
近くにあった机をガガガっと音を立てて引っ張って前に持ってくる。その上にメイが手をやると、ピカピカと青白く光るフレームが机の上に現れた。
「僕は天才だからわかったんだけど。コレ、地球上には存在しない物質なんだ」
「コレって?」
「あの機械。ゴーレムの装甲の一部」
「ってことは……」
「これを作った人間は、宇宙に行ってる」
言いながらメイは人差し指をぴっと立ててみせる。
「じゃあ、やっぱり旧人類っていうのは宇宙開発もしてたってことだよね」
「たぶん、そう」
「裏が取れたね。あとはそんな発展した文明がどこに消えて、なんでエルフちゃんや獣耳ちゃんが地上にいるのか」
「やっぱりこの砂漠化問題の鍵は、旧人類ですね!」
「うん」
ナナコがふと窓の近くまで歩いて、カーテンを開けた。分厚い遮光カーテンに遮られていた西日が部室の中に入ってくる。
「とりあえず今日は終わりにして、続きは明日にしよっか」
「もうこんな時間ですね。採掘場は朝日が綺麗だったのに」
「時差でボケちゃう」
ふふっと三人で笑う。
「明日、また頑張りましょう!」
「うん」
そうして彼女たちは解散した。真っ暗な部室にぽつん浮かぶ世界。うっすらと青白い光がその周りをくるくると回っている。
……
翌日。よく晴れた日。再び三人は部室に集まっていた。世界は部室の真ん中で静かに回っている。
「むぅー?」
「どうしたの、メイちゃん」
「データが異常に増えているような」
「砂漠化に何か関係ある?」
「あんまり関係はない」
「そっか。じゃあまたこっちが解決したら見てみよう」
「あい」
三人は改めて自分たちの世界を見た。
「じゃあやろっか!」
「はい」
ブワッと黄金の風が吹いた。三人は発掘現場に戻ってきた。人々の慌ただしい雰囲気はそのままに、重機が稼働を止めていた。空気が変わっているのが感じられる。
「あっ!あなたたちは、こんなところで何してるんです」
「んー?昨日のゴーグルちゃん」
そこには、昨日出会ったゴーグルの獣耳少女がいた。三人の姿を見ると、商売道具のハンマーを地面に下ろして話かけてきた。
「さっきミカさんが探してましたよ。また戦闘があったとかで」
「そうなんですね。ミカさんはどこに?」
「今は船の方にいるんじゃないですか」
「わかりました!ありがとうございます」
何があったのだろう、それを確かめるために三人は空飛ぶ魚号に向かった。船の近くには武装した兵隊が何事か話しながら立っている。
「ああ、神さまたちかね」
「船長さん、何かあったんですか?」
「襲撃だ、クソエルフ共のな。第二採掘場がやられた。正真正銘今度は我々の土地だぞ。クソッたれがついにクソをたれやがった」
立ち話をはじめたところでミカが歩いてやってきた。
「船長、口が悪いぞ。ちょっと焦ると口が悪くなるのは悪癖だ。いつも通り、もっとドンと構えていてくれ。指揮が下がる」
「う、うむ。ミカか、被害はどうか」
「負傷者はすべて仮設病院に放り込んだ。人間より施設の方が悪いな、穴が崩落したところが数カ所。車両は火を着けられて燃やされている」
「エルフどもはなんと言っている?」
「すべて過激派が独断でやったことで、長老会の連中は知らんとさ」
「なに?ならばクソテロリストは引き渡すんだろうな」
ミカは肩をすくめて答えた。
「ともかく、エルフの婆さん連中は話し合いがしたいということだ。どうする?」
無言の時が流れる。飛行船、空飛ぶ魚号のプロペラの音が響く。しばらくして船長が口を開いた。
「なら、この船に招待してやろう。我々の腹の中で十分に話を聞いてやろうじゃないか」
「そう伝えよう」
短く返答すると、ミカはそのまま去っていった。その後ろ姿を見送ってから船長は言う。
「聞いての通りだ。どういうつもりかエルフは我々の施設を焼き討ちにして、大切な仲間を傷つけてきたと思ったら話し合いがしたいそうだ。何と言ってくるのか楽しみだよ」
船長は額に親指をあてて、しかめっつらをしている。相当苛立っているようだ。
「あー、船長ちゃん。何か手伝おうか?ほら人命救助とか」
「必要無い。できることは終わっている」
「じゃあ……」
「神よ、望みは一つ。これから我々がすることに口を出さないで欲しい。この憎しみも、争いも、我々自身が解決しなければならない。そうでなければ誰も納得できない」
「わかった。自分たちに被害が及ばない限り、手出しはしない。約束するよ」
ナナコが頷いた。
「あの船内のあてがった部屋は引き続き好きに使ってくれていい。しばらくはこの場所にとどまるつもりだ」
「オッケー、ありがと」
返事をかえすと、船長はふっと笑った。




