表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/127

豊作すぎるのだが。2

 だが、夜の間は光合成をするわけにもいかないだろうし。


 働き過ぎは、絶対によくない。


「リィト、さま?」


 難しい顔をしていると、フラウがリィトの顔を覗き込んでいた。


 あいかわらずの美少女だ。


「それにしても、フラウはどうやって人族(ニュート)の言葉を覚えたんだい?」


 フラウが大事に抱えている古い辞書が、彼女の教科書だろう。


 けれど、完全な独学はありえない。


 人族(ニュート)語の文字の読み方や基本的な文法などのきっかけが必要だ。


 この世界、ハルモニアの識字率はあまり高くない。


 リィトの感覚では読み書きがきちんとできるのは、四人に一人くらいか。


 こんな人里離れた辺境の花人族の少女に、文字と言葉を教えるなんて相当な変人だろう。


 フラウの抱えている辞書を貸してもらう。


 何度もページをめくって学習しているのがすぐにわかるボロボロの辞書。


 ぱらぱらと中身を見ても、変わったところはみつからない。


 最後に、奥付を確認すると。


「うわっ!!!!!」


「ど、ど、どうし、ました、か?」


「……。なるほどね」


 そこに記されていたのは、辞書の前の持ち主──フラウにこの辞書を授けた者のサインだった。

『偉大なる大魔女』の文字。


 癖のあるトメハネには、見覚えがある。


「だ、いじょぶなのは、リィトさま、なの?」


「フラウ、心配してくれてありがとう。色々納得しただけだよ……流石、師匠だ」


 転生者であるリィトが神童、魔導師として覚醒したのには、いくつか理由がある。もちろん、リィトのやり込み資質やナビの存在などもある。


 が、師匠との出会いは大きい。


 誰よりも自由で、誰よりも傍若無人(はちゃめちゃ)で、誰よりも優しい人だ。


 基本的に自由な旅人なので、ひとところに留まることを知らない。


 こんな辺境で、花人族の少女に気まぐれに人族(ニュート)語の読み書きを教えるくらいのことはするだろう。


 師匠が教えたなら、たった一人の少女が人族(ニュート)語を学び続けても不思議じゃない。あれは、そういう人だから。


 もちろん、師匠が去ってからも学び続けたフラウの努力に拍手である。


 フラウが何も喋れなければ、ここまで上手くことが運んだとは思えない。


 というか、上手く運びすぎた。


「いっぱい、できましたっ! アリガトー!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ