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住民を受け入れようと思う。3

 花人族の料理は、森でとれたものばかりを使っている菜食だけれど、味付けが絶妙だ。


 塩は最低限。


 そのかわりに、よく下ごしらえされた素材の味がよくわかる。


 ベリーのジュースも、妙な味がするポーションとは比べものにならないくらいに美味しい。


「材料さえ集まれば、美味い料理が作れそうだ」


 異世界メシマズ問題に心を痛めているリィトとしては、色々と試したいことがあるのだ。大豆が作れたら、大豆ミートのハンバーガーとか作ってみたい。


 ……しかし、それにしてもだ。


 リィトは、さっきから気になっていたことを、意を決して口にする。


 隣に座っている、花人族の少女についてだ。


「あの、フラウさん」


「ぁい?」


「あの、そんなくっつかないで……」


「……むー」


「不満を顔全体で表現しないで……」


「なあ、ナビからもなんとか言ってよ……」


「マスター。そういう『困っちゃうなぁ』という態度は、少々アレかと」


「アレってなんだよ」


「休眠モードに移行します」


「う、裏切り者……」


 そのとき。


 リィトにぴっとりくっついていたフラウが、すくっと立ち上がった。


 たたた、と駆け出す。髪の花が、咲き乱れている。


「~~っ!」


 宴会の輪にやってきた女性に、フラウが抱きついた。


 女性はとても痩せていて、フラウと同じく髪の毛にゆるく絡みつくように生えている蔓は萎れている。


 遠目から見ても震えている。泣いているんだろう。


「……そっか、なるほど」


 女性は花冠を被っていて、フラウにそっくりだった。


 フラウの母──この花人族の集落の長だ。


 彼女を助けるために、フラウはひとり奮闘していた。


「……助けてあげられて、よかったな」


 アリガトー、アリガトー、とフラウに教えられた人族(ニュート)の言葉を繰り返す花人族たちに囲まれて、少しだけ、ほんの少しだけほろりとしてしまうのだった。


「あ、の、」


 フラウの声に顔をあげる。


 手に分厚い辞書を抱えている。表紙の文字を見るに、古い人族(ニュート)の辞書のようだ。これで人族の言葉を勉強していたらしい。


 フラウの隣には、族長が立っていた。


 とても綺麗な女性だ。


 威厳があるし、病気から回復したばかりなのに瑞々しい美貌。



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