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自由を謳歌しようと思う~ギルド自治区ガルトランド~6

 猫人族だ。帝都では珍しかったが、ギルド自治区の街中ではちょくちょく見かけている。


「おあ……わがはいをいじめていた連中に……天罰が下った……だとぅ!?」


 白くてふわふわの髪をした猫人族の少女の目が、キュピーンと光る。


(え、一人称が『わがはい』なのか……癖が強いな、あの子……)


 僕っ娘ならぬ吾輩っ娘とかさすが猫人族、とリィトが感心していると。


 猫人族少女の瞳孔がかぱっと開いて、リィトをとらえた。


 まずい。


 とっととこの場を立ち去ったほうがいい。


 そう思って踵を返した瞬間に、路地裏から飛び出してきた猫人族の少女の声が、リィトの背中を追いかけてくる。


「そこなお人ーぅ!」


 思わず、振り返ってしまった。


 バッチリ目が合ってしまう。


「あなた、そこのあなたですぅ!」


「ん?」


「うしろを振り返っても誰もいませんぞ」


「えー、あー、もしかして僕に何か用ですか?」


 よし、しらばっくれよう。


 猫耳をぴこぴこさせて、こっちに詰め寄ってくる女の子。


「わがはいを助けてくださったのは、もしかしてあなた様か?」


「違います」


「なう~? ここにはあなたしかいないですぞぅ」


「違います、違う!」


「でーもーでーもー!」


「とうっ!」


 ぽいっ、と投げたのはマタタビの種子。


 〈生長促進〉によって、たちまち実を結ばせる。


「……ふにゃあ~?」


 猫人族の少女は、目をハートにして崩れ落ちた。


「わ、わー! 誰かー! 女の子が倒れているぞー!」


 リィトが大声をあげると、大通りの向こうから女性の集団がやってきて、「やだ、大丈夫?」と口々に声をかけていた。


「よし、今だ!」


 ダッシュで逃走。


 宿屋に飛び込んで、高速チェックイン。


「はぁ、はぁ……」


 なんとか逃げ切れた。


 あの女の人たちもいい人そうだったし、ひとまずあの子も安心だろう。


 好奇心旺盛そうな子だったが、妙な噂にならないといいけれど。


「ふぅ……今日は疲れたなぁ」


 熱いシャワーを軽く浴びて、ごろりとベッドに横になる。


 シャワーがあるのも自治区ならではだ。ありがたい。


 旅が続いていたから、久しぶりの寝床。仰向けに横たわると、疲れが背中から吸い取られていくような気がする。


 もちろん、星空の下のキャンプ生活も楽しいけどね。


へー面白いなーと思いましたら、


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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろいっすね 派手な魔法とかじゃないチートってなんでこうも面白いんだろうか
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