表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/36

VS魔王 Ⅰ

「イリスはリアに事情でも聞きつつ待っててくれ」

「いえ、私も露払いくらいはしますよ」


 イリスは疲れているのかよろよろしながらも、ついてきてくれた。言動はあれだが、その使命感には素直に感心する。


「それは頼もしいな」

「そりゃ、SR神官ですから」


 が、その途端にドカーン!というひと際大きな音が響いたかと思うと、「壁が破れたぞ」という叫びが聞こえてきた。


「ついに来たか」


 俺たちが音のした方に走っていくと、赤黒い肌をした角の生えた二~三メートルほどもある巨人たちが巨大な棍棒を振り回して防壁を破壊したところだった。巨大な防壁だったが今では大きな亀裂が入り、近くに破片が飛び散っている。兵士たちは逃げ去るか瓦礫の影に身を潜めているだけだった。


「グォオオオオオオオ!」


 巨人たちは咆哮を上げながら防壁の割れ目に手をかけて割れ目を広げようとしてくる。それを見たイリスは真剣な表情で詠唱を開始する。


「我、神に願う。邪悪なる者どもを殲滅し我らの秩序を守らんことを。エクスキューション!」


 瞬間、イリスの体から前方に白く光る衝撃波のようなものが放出される。その先にいたのは先ほどの巨人たちである。衝撃波の直撃を受けた巨人たちは体を粉々に粉砕され、さらに衝撃波は後続の魔族の軍勢たちを蹴散らしていく。

 強靭な魔族たちをいともたやすく吹き飛ばす魔法に改めて俺は感心した。この一撃で魔族の軍勢の一角に、切り込みを入れたパイのように隙間が出来た。


「ご武運を」

「ありがとう」


 俺はそう言ってイリスが作ってくれた隙間に向かって駆けだす。当然魔族たちもそんな俺を袋叩きにするため四方八方から群がってくる。

 俺はメテオストライクを使うか考える。すると昨日レベルアップした影響なのか、メテオストライクの範囲と威力を調整出来るような気がした。簡単に言うと範囲を狭めて威力を増すことが出来る気がする。ということは魔王以外を普通に倒せば魔王に超強力な一撃を当てられるということだ。


「ディメンジョン・ソード!」


 レベルが上がったせいか通常攻撃も強化されていた。空間ごと切り裂く無属性の魔法が次々に魔物を打ち倒していく。ディメンジョン・ソードの前にはどんな巨大な魔物も、どんな固そうな鎧もバターのように切り裂かれていった。

 そしてそのたびに俺は自分のレベルが上がっていくのを感じる。


「ち、やはり雑魚じゃ勇者の相手にならねえか。俺は魔王軍四天王、怪力のゴルド」


 周りの魔物が次々と倒れていく中、流星を受けても倒れない巨漢が現れた。トロールの進化系なのだろう、身長は二メートルほどとそんなにでもないが、血まみれの重装鎧を身にまとい、手にした棍棒はそいつの身長ほどもある。ちなみにSRだ。


「ディメンジョン・ソード!」


 俺は再びゴルドに向けて魔法を発射する。が、ゴルドの棍棒は特別な物なのか、何と俺の魔法を殴って打ち消した。


「ふん、この程度が通用するのは雑魚までだ」

「そうか、だが打ち消すには棍棒で殴らないといけないようだな?」

「どういうことだ」

「こういうことだ……ディメンジョン・ソード!」


 すると。今度は俺の手元から数十近いディメンジョン・ソードが一斉にゴルドに向かって放たれた。

 すでに至近距離にいた俺の攻撃を避ける暇はない。慌ててゴルドは棍棒を振るっていくつかの魔法を打ち消すが、残った数十の魔法がゴルドの体に命中する。


「ぐあああああああああああああああああああああ!」


 ゴルドの鎧は特別なものだったのか、いくつかのディメンジョン・ソードは弾かれたが所詮焼石に水。瞬く間に全身穴だらけになってその場に倒れた。


 それを見た俺を囲んでいた魔族たちもさすがに動揺を隠せないようだった。基本的に魔族に恐れの感情は希薄だが、四天王の一人が一撃で消し飛ばされたことはさすがにショックだったらしい。俺の周りの魔族たちの包囲が徐々に遠巻きになる。


「お見事お見事」


 すると、そんな魔族の間から手を叩きながら一人の男がやってきた。男は人間のような平凡な体躯をしていた。身長も二メートル未満だし角も牙も翼もない。服装も黒いローブに剣という普通の人間とそんなに変わらない。


 にもかかわらず圧倒的に他の魔族とは格が違った。こいつはSSRだ。


 俺も緊張しつつ杖を構える。相対したときの緊張感がまるで違う。俺の身体からじっとりとした汗が噴き出す。こいつは他の魔族と違って、普通の攻撃では一撃で葬ることは出来ない。直感的に俺はそれを悟った。

 ここまでSR以下の相手には適当に戦っても勝つことが出来た。しかしレアリティ差が一つでは万に一つもということはある。


「お前が魔王か?」

「いかにも、人間からはそう呼ばれている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ