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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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悪夢の幕開け④

エルフ王国首都ジャルダン内にある王城に着いた僕たちは、直ぐさま──戦略会議を執り行った。

そこには、フリーゲルとアンジェラ先生の兄二人、長男のアンデル第一王子、次男のテネス第二王子も同席していた。

見た目は如何にも、王政に興味が無く豪遊を重ねてそうな典型的なダメ王子の見た目をしていた。

この会議が面倒くさそうなのか、退屈そうな表情を浮かべているし、長男のアンデルに関しては、大あくびをかいていた。


「兄様方、これから戦略会議を執り行います。よろしいですか?」


「余に聞かずとも勝手に始めい」


そうアンデルは言うと、フリーゲルは不満そうに会議を始めた。


「現在──エルフ王国は魔族の侵攻に対して、国土の三分の二を占領されています。残っているのはここ、首都ジャルダンのみで、神聖魔法の大規模展開で魔族の侵攻を食い止めていますが、これがいつまで持つか分かりません」


「ということは──神聖魔法部隊の魔力切れは近いということ?」


「そうです姉様。この籠城戦を敷いてから既に一週間は経過しています。交代制で神聖魔法を切らさずにいますが、それも今では限界に近いです」


「エルフ王国にあるマナポーションはどれくらい備蓄があるのですか? 」


「既に在庫は尽きており、持ってあと数時間ほどで神聖魔法の大規模展開が瓦解します……」


そこまでこのエルフ王国は窮地に追いやられていたのか。

兵は疲弊し神聖魔法を大規模展開する為の備蓄用マナポーションも尽きている。

しかも──大規模展開した神聖魔法は、もってあと数時間で切れてしまう。

このままでは、首都を守るための最後の砦がなくなってしまって、この地は魔族によって蹂躙じゅうりんされる。

するといきなり──長男のアンデルが机を強く叩いた。


「どういうことだフリーゲルッ!! エルフ王国が魔族に屈するなどあってはならん!! この責任はどうとるのじゃッ!!」


「申し訳ございません兄様。しかしながら、王国軍も最善を尽くしており──」


「──言い訳は聞きとうないッ!! それに──エルドレッドはどうした!? 大将軍でありこの国の英雄であるエルドレッドなら、こんな魔族の侵攻など簡単に蹴散らすだろうに」


エルドレッド・サイフェン──

僕でも知っている、エルフ王国の大将軍にして英雄の武将。

父さん曰く──


『エルフ王国に居るエルドレッドって奴はかなり強い漢だ。エルフでありながら人間に寛容な漢で、なにより──器のデカい漢だよ』


と言っていた。

そのエルドレッドって人がこの戦略会議に顔を見せてない。

こういう大事な会議って、エルドレッドって人なら必ず参加するはずなんだけど。


「申し訳ございません。エルドレッドは一週間前に魔族の捕虜となってしまっています。安否は不明です」


まさか──そんな事態になっていたなんて。

おそらくこのエルドレッドって人は、フリーゲルと並んで軍の精神的支柱でもあるだろう。

そんな大事な人が捕まってしまったら、この軍の士気はかなり下がってしまう。

現に──エルフ王国軍の兵士の顔を見ても、彼らの士気はかなり下がっていた。

やはり、エルドレッドが捕虜として捕まっているのは、この戦いにおいてかなりマズいことになっているようだ。


「ふざけるなッ!! 直ぐさまエルドレッドを奪還しろッ!! それが出来ぬなら、フリーゲル──貴様を総司令の任から外すぞ!!」


「──お言葉ながら申し上げます。エルドレッドの安否が分からぬ今、防衛線を敷いている軍を前線に出すとなると、首都ジャルダンは一瞬にして魔族に蹂躙されます。得策ではありませ──」


「──黙れッ!! 誰に意見しておる。余に意見するなど言語道断じゃ。余がやれと言ったらやるのが、フリーゲル──貴様の務めじゃろう」


ダメだ──

このアンゲルっていう王子はフリーゲルの意見に聞く耳を持つ気が無い。

エルフ族が話し合いの主導権を握っている為、人間の僕は黙っていたが、ここら辺が限界かもしれない。


「──話し合いに割って入って申し訳ないですが、少しばかりよろしいでしょうか」


「なんだ人間。下等種族に発言など許されるわけないだろう」


アンデルは怪訝けげんそうにこちらを見る。

今は種族がどうのだとか関係ない。

僕は気にせず話し始める。


「このエルフ王国侵攻には悪魔が絡んでます。幾度となく魔族の侵攻を抑えてきたエルフ王国が、今回ここまで窮地に追いやられているのはそのせいです」


「悪魔ぁ〜? フッ……笑わせるな人間。悪魔が絡んでるなど百も有り得ない。この大事な会議で妄言を吐くなど無礼にも程があるぞ」


「しかしながら──この間までトゥルメリア王国は総合武術大会を開催しておりました。悪魔に乗っ取られた王国民が一度人格を取り返し言いました。エルフ王国が危ないと」


ジェイド・マーセナス──

悪魔ダンタリオンに乗っ取られ、現在は安否不明となっている。

おそらく──ダンタリオンもこのエルフ王国に入国しているだろう。


「そして──丁度良くしてノエルさんがトゥルメリア王国に支援要請するために我が国に使いとしてやって来ました。エルフ王国の魔族の侵攻、トゥルメリア王国に悪魔の出現。偶然とは思えません」


もし──ダンタリオンがトゥルメリアに出現したことがエルフ王国に関係なく、偶然出現したのなら──僕はとっくに死んでいる。

でも──ダンタリオンは僕を殺さなかった。

このことが、エルフ王国の侵攻に対し悪魔が絡んでいるということが何よりの証拠だ。


「支援要請に応じたことは僅かながら感謝しよう。しかし──トゥルメリアの軍はなにをしておる。見た限り、そちらの総帥、ダグラス・グレイシーの姿がないじゃないか」


「現在──トゥルメリア王国は悪魔に対する防衛強化の為、非常事態宣言を発令しております。なので──エルフ王国の支援要請に対し、5人と少数精鋭で馳せ参じました」


「5人ッ!? 貴様、この窮地に5人で来るなど舐めているのか!? 下等種族の人間が高貴なエルフの土地を守る為にたった5人でやってくるなど不敬にもほどがあるぞ!!」


人数だけ見たらそう思ってしまうのも無理はない。

しかし──僕たちも悪魔や魔獣を蹴散らした実績がある。

椅子にふんぞり返っていて上からものを言っているエルフに言われたくない。


「トゥルメリア側も出せる人数がここが限界だというのはご容赦ください。悪魔との戦いは僕たちトゥルメリア側が引き受けます。エルフ王国の皆様は首都の防衛に徹してください」


「まだ悪魔が絡んでるとは認めておらんぞ。人間、貴様──かなり若く見えるが、その不遜な物言いをするのだから負けた時には責任を取ってもらうぞ」


「アンデル兄様ッ!! この方はトゥルメリア王国のウィル・トゥルメリア様ですよ!? 兄様こそ他国の王族に対して敬意を払ってください。兄様の発言はエルフ王国の発言そのものなんです」


「追放された異端がなにを言う。アンジェラ、貴様余に対して意見を言える立場だと思うなよ」


ダメだ。

このアンデル第一王子は権力を貪る癌だ。

相手の言葉を真っ向から否定し、自分の思うようにしかことを運ぼうとしない。

種族差別はあるといえど、これではまだフリーゲルの方がマシだ。

フリーゲルのほうがよっぽどこの国の為を思って行動している。


「ウィル王子の言うことがまことなら、悪魔との戦いはトゥルメリア側にお願いします。我らエルフ王国は首都ジャルダンの防衛に努め、魔族をこの地から追い出します。よろしいですね?」


「フンッ、勝手にせい。だが──エルドレッドの奪還も忘れるなよ?」


「分かっています」


このアンデル──相当エルドレッドを買っているようだ。

それほどエルドレッドが捕虜になったことが悔しいのか、奪還を固辞してやまない。


「それと兄様、パラマ王との謁見をしたいのですが、パラマ王はどちらに?」


パラマ・カリオペエルフ国王──

ここに居る四人の父であり、エルフ王国の王である。

戦略会議において王も出席するのが定石だが、パラマ王もエルドレッド同様、この会議の場に姿を現してない。

パラマ王の名が出た瞬間──アンデルの目が泳いだ。


「父様は現在体調を崩しており自室にて療養しておる……」


「それは心配です。このあと見舞いも兼ねて面会してきます」


「それはならん──今は面会謝絶にしておる。悪いが日を改めてくれ」


なんだか怪しい。

パラマ王のことになった瞬間、アンデルの背筋が丸くなったように見えた。

この王子──何か隠してる。


「そうですか。しかし──総司令として、この会議の報告をしなければ──」


「──それは余がしておくから心配せんでよいッ!! これで会議は終わりじゃ!! 早く持ち場に戻れッ」


半強制的にこの会議は終わりを迎えた。

皆不思議そうに顔を合わせるが、アンデルはそそくさとこの場を去ってしまった。

すると──ドタドタと足音が聞こえ、バンッと扉が開く。


「可及急ぎの件で参りましたッ──」


そこには血相を変えた兵士が息を切らしながらやって来た。


「どうした? 要件は」


「ま、ま、ま、魔族が、侵攻を再開しました──」


一時停戦をしていた魔族が再度侵攻を開始したという知らせだった。

場に戦慄が走る。

そして──それは凄惨を極める戦いの始まりの合図でもあった──

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