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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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11. 緊急事態

このノエルっていう女の子が、アンジェラ先生とノーマンの娘……?

あまりにも衝撃的すぎて、理解が追いつかなかった。

だって──アンジェラ先生はエルフの血筋を何よりも大事にする純血思想の持ち主で、ノーマンはエルフ種ではなく、ただの人間だ。

なのに──二人の間には子供が居る。

大きな矛盾を孕んでいた。


「わたくしとアンジェラはかつて──種族の垣根を超えて愛し合っていました。しかし──世の中はわたくしたちを祝福してくれなかった」


それもそうだろう。

トゥルメリア王国も血筋を大事にする純血思想だ。

人間とエルフが婚姻を結び、子を宿すなど前代未聞すぎる。

ここに居るシェナだって半獣半魔であるがために、酷い虐待と迫害を受け、更には──奴隷にまで身を落とした。

シェナという──迫害の歴史を持つ生き証人がいるのに、エルフである彼女は人間と恋に落ち子を宿したのだ。


「アンジェラ先生って純血思想でしたよね? なのに、なんでノーマンさんと結婚したんすか? 矛盾してますよね?」


「それは……その……」


シノの指摘はごもっともだ。

アンジェラ先生は視線を落とし口ごもってしまう。

そもそも──彼女は本当に純血思想なのか?


「とりあえず──この話は後でしっかりしよう。今は緊急事態だ。事態の収拾が先。ノーマン──」


「なんでしょう、ダグラス様──」


「治療し目を覚ました後、俺の元に連れてこい。事情はそこで聞く」


「かしこまりました──」


「それとウィル──」


「なんでしょう父上」


「お前とシェナも王宮に来てくれ。そこで詳しい事情を聞く」


「わかりました」


そういうと父さんは事態の収拾に向かった。

年に一度の総合武術大会は、中止という形で幕を閉じた。

主催の学院側は催の一つとして開催予定だった、ダグラス・グレイシーのモンスター公開討伐に使うモンスターが檻から脱走し、それを討伐するために中止になったと報じた。

もちろん──事実は伏せなければならないため、それっぽいアクシデントを用意したわけだが、それで納得して収まらないのが市民の声というものだ。

賭け事をしていた人たちは返金しろと叫ぶし、露店を出し商売しようとしていた人たちは、仕入れが無駄になったと言って保証を求めてくるし、事態が収拾するどころか──返って悪化してしまっている。

その上、エルフ国の状況のこともあるし、とにかく何をしても大混乱に陥っていた。


暫く時間が過ぎ──僕とシェナは王宮の応接間に居た。

そこにはアンジェラ先生とノーマン、アリス、ケイン、シノ、父さんが集結していた。

ことの当事者であるノエルという女の子も、目を覚ましこの場に赴いていた。


「何故ここにノエルが来たのかという話は後にして、ウィル──ジェイドを操っていたのは悪魔でいいんだな?」


「はい──自らの口で、ダンタリオンと名乗りました」


そして僕は改めてダンタリオンと戦闘した時のことと、その前に起きた不可解な現象を併せて説明した。


「やはり──ダンタリオンとやらの目的はウィルの捕獲ではなく、あくまでトゥルメリア王国内部で混乱を招くことだな」


「そうね。ダンタリオンが戦闘に消極的な部分を加味すると、その線が濃厚ね」


「それに──俺もダンタリオンとジェイドが切り替わった時の会話を聞いていましたが、あれは紛れもなく、ジェイド本人でした。以前の彼はとにかく温厚な性格で、あんなに人の事を見下すような人間じゃなかった」


以前の彼を知らないからわからないが、ケインの言う通り、ジェイドと切り替わった時に感じたことは、僕も同意する。


「彼の一番の被害者である、ニーナ・オースティンはどうしてる?」


「彼女はわたくしが移送した際、大分消耗していたので、今は王宮の医務室で治療を行っています。現在も意識は失っていて、いつ目覚めるか分かりません」


となると──現状ニーナから事情を聞き取るのは難しいか。

しかも今事情を聞いたところで、彼女に植え付けられたトラウマを誘発しそうで不安だから、暫くはそっとしておいたほうがいい。


「ウィル──ダンタリオンと戦ってどうだった」


「はい、とにかく厄介でした。魔法で攻撃しても全てを予知したかのように防がれますし、何より──あのインフィニティっていう闇魔法は厄介です」


「インフィニティ? なんだその闇魔法は」


「シェナ──もしかして……」


アンジェラ先生とシェナが顔を合わせる。

一抹の不安が二人によぎった気がした。


「インフィニティ。闇魔法で、かなり厄介。それ使う奴、昔戦った」


「そうなの? 対抗策は?」


「ない。近接戦闘避けて、戦うしかない」


有効な対策が立てられると思ったがそれは難しいのか。

近接戦闘を避けても、ダンタリオンは魔法を防いでしまう。

そんな相手にどう戦えというんだ。


「あの時は100年前だったかしら。今はもう消滅した国だけど、魔族が侵攻してきてそこの将軍がインフィニティを使ってきたわ」


「ちょっと待って? 100年前っていつのことよ。てか、シェナって今いくつなの? アタシいよいよ分かんなくなってきた」


「私も分からないわ。説明ってして貰えるの?」


アリスとシノの視線がシェナに集中する。

無理もない。

二人はシェナが、半獣半魔の猫人族だって知らないから、話が理解できないのも当然だ。

もう隠し事はここまでにするしかないか──

僕は提案する。


「シェナ、そろそろ二人にも言っていいんじゃないか」


「うん、ウィル様、そう言うなら、明かしても良い」


「おい、待て──秘密をそんなひけらかすことなんて」


「シェナ、ウィル様に、心と身体、預けてる。シェナの意志、ウィル様の意志。二人に伝えても、問題ない」


父さんの制止を振り切り、シェナはオールパージを発動させた。

徐々に元の姿に戻り──そこには、猫人族姿のシェナが居た。


「うそ──」


「これがシェナ本来の姿よ。二人には黙ってて申し訳ないわ。シェナは半獣半魔の猫人族。トゥルメリアで生活する為に、今は人間の姿に扮しているの」


呆気に取られた二人は言葉を失い、目を見開いていた。

普通の女の子だって思っていたシェナが、実は人間じゃなくて、半獣半魔の猫人族だなんて思いもしないよね。

僕も最初は驚いたよ。


「このことは口外禁止で頼むわ。人間って血にはうるさいから」


「え、えぇ……もちろん。口が裂けても言えない」


呆気に取られてるシノとは対象的に、アリスの目はだんだんとキラキラしてきているではないか。

ん? どういうこと?


「シェナかわいいッ!! なんでもっと教えてくれなかったの?? こっちの姿の方が私は好きだわッ」


「アリス様……話聞いてました?」


「聞いてたわよ。何が血よ。私が言えばそんなくだらない思想なんて、この世から消え去るわ」


いやいや……。

何百年と生きているシェナが、人間は血にうるさいって言ってるんですよ?

アリスが言った所で、歴史や文化は簡単に変わりませんよ……。


「アリス様はお気楽で羨ましい限りです……」


「お気楽って何よッ! そんなことより──シッポ、触ってもいい?」


「んなッ!! シッポはダメです!!」


「いいじゃないッ!! 減るもんじゃないし」


猫人族のシッポを触るのは、人間でいう恥部を触られるのと同義なんだけどな。

それをズケズケと言ってくるあたり、アリスさんすげえっすわ。


「いいんじゃない? 確かに触られても減るもんじゃないんだから、愛でてもらいなさいよ」


「うるさいバカエルフ。他人事ひとごとだと思って無神経な事言って。お前の耳触ってやろうか」


「嫌よ。わたくしは関係ないもーん。それと生徒のいる前でバカエルフって言わないでちょうだい。私の格が落ちるわ」


「バカエルフのクセに格とか気にしてるのダサいったらありゃしないわ。さすが、プライドだけは高い、おエルフ様ね」


「なによメス猫ッ!! もういっぺん言ってみなさい!!」


「何度でも言ってあげるわ。高潔と傲慢を履き違えてるバカエルフ」


また始まった……。

この二人が口論を始めると中々終わらないんだよね。

ノーマンとケインは苦笑いしてるし、シノ、アリス、ノエルはポカンとしている。

一応、今ここが会議の場だってことは忘れないでね?

ただ──父さんだけは黙って青筋を立てていた。


「お前ら少しは喧嘩しないで居られないのか?」


「なによ、邪魔しないで頂けるかしら」


「黙れ──」


二人はピンと背筋が張った。

僕でも分かる。

父さん、マジギレしてますね。

こんな緊急事態で今後どうするか決める会議なのに、馬鹿みたいに口喧嘩してたらそりゃ怒るよね。

でも──父さんって怒ると本当に怖いね。


「今後を決める大事な会議に、口喧嘩を始めるなんて子供がすることだ」


「わ、悪かったわ……」


「シェナも自重する……」


あら、あんな制御不能だった二人が大人しくなった。

そういえば──実家に帰省した時も、アンジェラ先生とシェナは喧嘩してたけど、その時も父さんが止めてたんだっけ?

どう喧嘩止めてるんだろって思ってたけど、こんな鬼の形相で止めてたなんて意外だ。


「アリス王女、今は会議の場でございます。不敬を承知で申し上げますが、私的な会話はどうかお控え頂けると幸いです」


「私も悪かったわダグラス……。その……ごめんなさい……」


ちょっとッ!! 怖すぎてアリスまでドン引きしてるじゃん。

なんならちょっと泣きそうだよ?

後で少しメンケアしとかないと。

そうだ、シェナのシッポを献上しよう。

父さんに代わって謝っとくよ。心の中で。


「話はかなり遮られたが、ダンタリオンについて──現状、有効な策は見当たらない。有効な策が見つかるまで保留とするが、いつ戦闘になるか分からない。その時までしっかり準備しておくように」


これ以上、ダンタリオンの話をしても無駄だろう。

確かに──いつ戦闘になってもおかしくないから準備することに越したことは無いけど、その時まで対策を講じてないと。

次は本当に命を取られかねない。


「さて──次の問題だが、ノエル──」


全員の視線がノエルに集中する。

透き通るように肌は白く、耳が尖っている。

白装束に身を纏い、綺麗な金髪の長髪。

誰が見ても彼女はエルフだが、アンジェラ先生とノーマンとの間に生まれたハーフエルフ。


「君は、何故ここに来た」


「わ、わたし……」

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