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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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総合武術大会⑩

滅多に人前で泣かない僕だったが、悔しさのあまり泣いてしまった。

しかもシェナの胸まで借りてしまって……。

暫くして泣き止むと僕は顔を上げた。

シェナの顔がにこやかと微笑んでいて、自分でも分かるくらい顔が紅潮してしまう。

は、恥ずかしい……。


「な、なに──」


「ウィル様でも悔しくて泣いてしまうことってあるんですねって思っただけです」


「わ、悪かったな……でも、ありがと……」


「シェナはいつでもウィル様に心と身体を預けますよ」


なんでそんな恥ずかしいことをサラッと言えますかね。

でも助かった──

この世界に転生してきて初めて敗北というものを知った。

悔しさのあまり心が引き裂かれそうになったけど、シェナの優しさと温もりで、なんとか心の平穏が保てた。

ありがと、シェナ。


それと──バツが悪そうにケインがこちらを見ている。

あッ……もしかして、見てました?


「いやぁ……ウィルも悔しくなるとあんなに泣くと思わなくて……」


やっぱりね!やっぱり見てましたよ!!

お恥ずかしい限りです!

シェナならまだしも、ケインがバツの悪そうに黙って見られてたっていうのが、本当に恥ずかしいッ!!

穴があったら入りたい! いや、いっそのこと自分で掘ってしまおう!


「でも──悔しくて泣きたいのは俺も一緒だ。俺もダンタリオンに負けた。俺なんて剣すらダンタリオンに届かなかった……。もし──もし、ウィルみたいに俺にも神聖魔法が使えてたら……」


「ケイン、神聖魔法があるからって悪魔に必ず勝てるわけじゃないわ」


「それはシェナが神聖魔法が使えるから言えることだろッ。──ごめん、言い過ぎた、忘れてくれ」


気持ちは分かるよケイン。

でも──シェナの言う通りだ。

神聖魔法があるからって悪魔には勝てない。

現に僕は神聖魔法を行使しておきながら、ダンタリオンに負けたのだ。

純粋な力では僕の方が上だろう。

しかし──知力、洞察力、判断力、どれを取っても、ダンタリオンの方が上手うわてだった。

だから僕は負けた。

もし──ダンタリオンが攻撃してきてたら、僕は確実に死んでいただろう。


「全く──戦闘中にウィル様をチラッと見たら、メス猫が抱きしめてて集中できませんでしたわ。お陰で時間が掛かりました」


「おい、殆どの戦闘を俺にやらせておいてそれはねえだろ」


「あら──最強の戦鬼様が魔獣如きに苦戦するなんて、腕が落ちたんじゃない? やっぱ、歳には抗えないってやつなの?」


「言いたいこと素直にベラベラ喋ってんじゃねえぞッ!! このバカエルフがッ!! まだ現役だしッ まだ強ぇーしッ」


父さんとアンジェラ先生が口論しながら僕の元にやって来た。

どうやら魔獣を倒せたみたいだが、魔獣っていっても、魔核を取り込まれ魔獣化した生徒なんだよな。

その件に関してもダンタリオンは話さなかった。


「んで──シェナ、その格好で居ていいのか? ケインはこのこと──」


「大丈夫──彼はシェナの正体を知ってる。ウィル様が信頼してる人間だし、シェナも信頼する」


「それならいいんだがよ。なんで急に魔獣なんかが闘技場に現れたんだ? ウィルはこのこと知ってたのか?」


「それは──」


僕はことの経緯を説明した。

怪しいと思い始めたのは、上級Aクラスの先輩たちが立て続けに棄権したことが発端だ。

全員魔素溜まりで精神異常を来たし気絶してしまった。

そして──ジェイドの発言の一貫性の無さ。

まるで、自分が人間ではないということを表しているかのように。

案の定、ジェイドは悪魔ダンタリオンに身体を支配されていた。

恐らく──魔核を取り込まれた生徒は、ダンタリオンの被害者だろう。

このアクシデントを演出する為に、魔核を取り込まれ魔獣化してしまったのだ。

あとは──


「一度、ダンタリオンはジェイドと心を入れ替えたんだ。その時、彼はエルフ国が危ないって言っていた」


エルフ国はアンジェラ先生の故郷──

人間であるジェイドがエルフ国のことを話すなんて、万が一でも有り得ない。

でも──絶対になにか裏がある。


「もしかして──この騒動は、人間側がエルフ国に干渉しないがための陽動だったりして──」


「どういうことだケイン」


「あ、はい。ウィルとダンタリオンの戦闘を見ていた時に思ったんですが、ダンタリオンはウィルと本気で戦闘をしなかったんです。悪魔はウィルという器を狙っています。もし──ダンタリオンの狙いがウィルだったら、ウィルを回収するため本気で殺しに来るはずなんです。でも──それをしなかった」


「だから──エルフ国のことに目を向けさせないために、生徒を魔獣化させて混乱を招き、あたかも僕を狙ってるかのように見せかけた──」


だとすれば合点がいく。

ダンタリオンの言動や消極的な戦闘──

どれもこれも、トゥルメリア王国内で混乱を招くために起こされたブラフ。


「とりあえず──今は事態の集収が先だ。急に大会が中止になって1番混乱してるのは国民だからな。エルフ国に関しての情報は外交官と連絡してみる」


父さんの言う通りだ。

まずは──国民に大会が中止になった経緯を説明しなければならない。

年に一度のお祭りを中心に王都の経済は動く。

このアクシデントのせいで、本来大きく動くはずだった経済が一時停滞したのだ。

その説明責任をしっかり果たさないと、打倒派の勢いを増す結果になってしまう。


「シェナ、誰か近いづいてくるわ」


「わかってる」


アンジェラ先生の言葉にシェナは人間の姿に変身した。

すると──その言葉通り、この闘技場に人が入ってきた。

アリスとシノだ。

それと、誰かを抱えてやって来ている。


「アンジェラ先生──ッ」


「どうしまし……ッ」


アンジェラ先生はその子を認識した瞬間──バツの悪そうな表情になった。

隣に居た父さんも気まづそうな顔をする。

シェナにも顔を合わせようとしたが、シェナもバツの悪そうな表情になってしまった。

一体どういうことだ?


「アンジェラ先生、このエルフさんが先生に用があるって……先生?」


「アタシら学院の課題で探索任務にでてたんだけど、ダンジョンから戻ってきた時に、入口でこのエルフが倒れてたのよ」


総合武術大会に出ないAクラスの生徒は、ダンジョンの探索任務を課せられていた。

アリスとシノは大会に出ないため、今日はダンジョンに居たということになる。

その帰り道でこのエルフを見つけたのか。


「てかなに? 闘技場ボロボロじゃん。なんで魔獣も倒れてんの?」


「ごめん、それはあとで説明する。それで──先生、このエルフとは知り合いなの?」


「えっと……その──」


「ノエル──ッ!!」


後ろからいきなり叫ぶ声が聞こえた。

そこには──血相を変えたノーマンが立っていた。

ノエル? この子の名前なのか?

ノーマンはアリスの元に駆け寄ると、気を失っているノエルを抱きしめた。


「ノエル……どうしてこんなにボロボロに……。アンジェラ、どうしてノエルがここに居るんだッ」


「そんなの……私が知りたいわよ……」


どういうことだ?

話が全く分からない。

僕とケイン、アリスとシノは状況が読み込めないのか、ポカンと呆けてしまう。

ノーマンはやれやれという表情で、簡単に説明した。


「ノエルは──わたくしとアンジェラの……娘だ」




「…………………………………………えっ?」






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