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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第一部 トゥルメリア王国編

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トゥルメリア王家の過去③

ゆっくりと前に歩き出す母上。

しかし──私を守っているノーマンに止められます。


「じぃや離してッ!!」


「なりませんお嬢様!!マーサ様のお考えがあってのことです!」


「でも──でもッ!!」


その時、幼いながらに分かりました。

母上は自分の大切な子どもを守るためだったら手段も自身の命も問わないと──


「リリース──エクスチェンジ」


すると──母上と赤子のウィルは入れ替わり、元の母上の位置にはウィルが、捕らえられていたウィルの位置に母上が入れ替わってました。

母上が使ったのは、魔道具マジックウエポンのリングで、リングの中に収められている魔法名を言い放つと効果が発動する、魔法が使えない人でも簡単に行使できる便利アイテムの一つです。

エクスチェンジは、対象となる位置と自身の位置を入れ替える魔法で、母上は対象者をウィルにし──自身を犠牲にしたということになります。

私は幼いウィルを抱き抱えました。


「マーサ!何をしておる!!」


「あなた──ごめんなさい……産まれたばかりの我が子を連れ去られるのなら、私が犠牲になる覚悟で使いました」


「そんなことをしなくても子どもは助けた!!ベリアル──マーサを離せ!!」


「ん?あぁ、ガキを捕まえたんだけどなぁ、いつの間にか歳の行った女にすり変わってんじゃねえか。そういうの困るんだよなぁ」


「だったら──王妃を離せ。戦いの決着は付いてねえだろ」


「いや──お前はもう飽きた。失せろ」


ベリアルは人差し指をヒュっと横にスライドさせた。

すると──ダグラスは飛ばされ、壁に激突する。


「ダグラス──ッ!!」


「この野郎ッ!!──ぬおおおおおお!!」


ガルドも同様に指一本で払い除けられ壁に激突する。

2人ともあまりのダメージからか、動けずにいました。

近接で戦闘できる二人が行動不能になり、残りは魔法特化のアンジェラと父上、近接戦闘だが私を守るために動けずに居るノーマンのみ。

状況は悪くなる一方──


「だからさぁ──お前らじゃオレに勝てねえって。そこの嬢ちゃん、さっさとそのガキ寄越せ」


私はギュッとウィルを抱きしめる。

やっと出来たかわいい弟──そんな弟をこの悪魔は連れ去ろうとする。

しかも、母上は命の危機に瀕している。

どうすればいいかわかりませんでした。


「ベリアル──ワシの子どもを連れ去るなら、まずワシを殺してからにしろ!」


「おぉ〜、英雄気取りですか? 見上げたものですねぇ。でも──あんたに興味はねえ。興味あんのはあのメスガキが抱えてる赤子だけだからなぁ、最悪てめえら全員殺したっていいんだよ!!」


「──やめてくださいッ!!」


母上が大きな声を出して、ベリアルを静止させました。


「あなた、私はあなたの元に嫁ぎ──王妃として、この上ない幸せを頂きました」


「ノーラよせ」


「いいえ、あなた。そしてアリス。その子の──いや、ウィルが誇れる立派なお姉ちゃんになるのよ」


「母上……いやだ、いやだ……私助けるから……そんな事言わないで」


母上の言葉はまるで、死期を悟ったそんな言い方でした。

このままだと母上を失うかもしれない。

でも──ウィルを手放したら、悪魔がいう偉大なる御方の復活を決定づけてしまう。

私には命を天秤にかけることなど出来ませんでした。


「あぁぁぁぁ!!!だりぃな人間は!どいつもこいつも!!」


「よせ!!ベリアル!!」


「めんどくせえ、全員殺してやるよ。ガキなんざその後でも手に入る。まずはマーサ、お前から──」


「やめてくれ!!!」


「──死ね」


「あなた、愛してるわ──」


「マーサぁぁぁぁ!!!!」


ベリアルの鉤爪によって首を掻っ切られ、無惨にも母上の頭と胴体は切り離されました。

床に転がる母上の亡骸。

私は泣き声を立てず静かに大量の涙が頬を伝わりました。


「人間ってやっぱあっさり死ぬよな。ほら、こうなりたくねえだろ?さっさと──」


「ベリアル……貴様──ッ!!」


ダグラスはフラフラとしながらも立ち上がる。

あともう一撃を食らってしまえば、死ぬレベルだった。


「おいおいまだ立てんのかよ。なぁ、戦鬼──お前はそこらの人間とは比べ物にならないくらい強い。でもなぁ、所詮──人間は人間なんだよ。よぉぉぉくわかっただろ?人間は悪魔に勝てねえの」


「だからなんだよ……悪魔だろうが人間だろうが、俺は負けねえ……俺はぁぁぁ!!!!最強だからなぁ!!!」


「死に急ぎ野郎がよ。なら死──」


「親愛なる光の神よ、我が言の葉の願いを聞き光の加護を。そして──我が言の葉の願いを叶え給い、悪しき者から尊き者を救う力となれ、オールハイネス」


私は──咄嗟に詠唱を始めてました。

もちろんオールハイネスをかける対象者はダグラス。

そして私は詠唱を続けます。


「親愛なる光の神よ、我が言の葉の願いを聞き光の加護を。我が慈愛の元に神の子らに癒しの恵みを授けた給え、オールヒール」


オールヒールは神聖魔法の中でも、怪我、状態異常、疲労を全て取り除く最上級の回復魔法。

もちろんこちらも対象者はダグラスで、ダグラスの傷やその他諸々は消え去りました。

でも──それだけでは足りません。


「親愛なる光の神よ──」


「やめろアリス!!それではお前の身体が持たない!!」


父上の言ってることは百も承知です。

ここでやらなきゃ全員死ぬのですから、出し惜しみしてはこのベリアルには勝てません。


「ありがとなアリス様、最終的に勝てば官軍ってもんだ」


ダグラスは再びベリアルと交戦を開始しました。

先程の攻撃とは打って変わってか、ダグラスの剣戟は勢いと重みを増し、ベリアルを圧倒してます。


「あのメスガキやるなぁ。こんな強えオールハイネスをかけるやつは久しぶりだぜ」


「悠長に感想なんか言ってんじゃねえ!!」


更にダグラスの攻撃は勢いを増します。

だが──ベリアルに傷一つ付けられてないのは先程と変わってません。

ベリアルもダグラスの攻撃を受け流すのに精一杯でした。


「そこだ──ッ!!」


「ンぐ──ッ!」


ベリアルの足に剣が突き刺さります。

ようやくベリアルに攻撃が通りました。

ベリアルはその場で膝を付きます。


「やるじゃねえか人間──でも、勝った気になるなよ。たった一撃が当たっただけだ」


「その一撃があるだけで十分だ」


「親愛なる光の神よ、我が言の葉の願いを聞き光の加護を。そして──我が言の葉の願いを叶え給い、悪しき者を尊き力によって、魂を浄化せん。さすれば──罪は消え、堕落した者を救う光の導きは、尊き者に変わり永遠の安らぎを給わるだろう」


「この魔力量──おい!あのガキなんだ!!」


もう──これ以上の魔力は残ってません。

私は最後の力を振り絞り詠唱しました。


「オールピュリフィケーション──ッ!!」


「ぬぐぁぁぁぁぁあ!!!」


先程アンジェラと父上が繰り出したオールピュリフィケーションは食らわなかったのに、私のオールピュリフィケーションは食らってます。

ベリアルの身体は光の柱によって徐々に焼けただれていきます。


「すごい──ワシとアンジェラが繰り出しても効かなかった魔法が、アリスの魔法だと効いている」


「これは少し嫉妬してしまいますわ」


光の柱が消えると、そこには──丸焦げになり、身動きは取れないベリアルが居ました。

私でもここまで力があるとは思いませんでしたが、ふとウィルを見ると、ウィルの手が光っていました。

そういうことか──

赤子で無意識ながらもウィルは私の詠唱を手助けしてくれてました。

例えそれがそうでなくても、私はそう思っていようと思いました。


「め、メスガキ……。ここまでやるとは……オレも不覚を取った……」


「悪ぃな、お前らの企みはここで阻止させてもらう。あんまり人間なめんなよ──」


ダグラスが剣を突き刺すと、ベリアルから黒い霧のようなものが噴射してきました。


「ちくしょう──今回は器の回収ができなかったが、人間、よく聞けよ。偉大なる御方は必ず復活する。その時てめえらは嘆き苦しみ絶望し、新たな世界が誕生すからよぉ、せいぜい首洗って待っとけや」


「負け犬の遠吠えにしか聞こえませんわ」


「言ってろ。くれぐれもそのガキ殺すんじゃねえぞ。おい──そこのメスガキ、てめえはオレがブチ殺す!必ずなぁ!!」


そう言い残すとベリアルは消えていきました。

部屋には静けさが戻り、戦いの爪痕と母上の亡骸だけが残りました。

神聖魔法を酷使しすぎたせいか──その後私は、深い眠りにつきました。

母上を無くした思いを胸に──

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