表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《完結》はずれ王子の初恋   作者: 三條 凛花
第2部 実らぬ初恋
32/54

9.ある令嬢の野望(2)

 --ところが。悪役令嬢が戻ってきてしまった。


 クレメント王子とは個人的に話をするくらいには親しくなっていたので、ノエミは、フルールの専属侍女に立候補した。


「学院でもフルール嬢と親しくしていたノエミ嬢なら、きっと彼女も安心して過ごせるだろう。

 なにか変わったことがあれば報告してくれ」


 彼はきらきらした笑顔をノエミに向ける。フルールの名を口にするときの彼は、誰が見ても恋する男であった。

 胸にどす黒いものが広がっていくのを感じた。




 二年ぶりに会うフルールは、眠っていたという言葉のとおり、あの頃のまま変わっていなかった。


 たった二年の差だというのに、肌の透明感がまったく違うことに、頭をがつんと殴られたような衝撃を受けた。


 少女らしさを孕んだ、危うい美しさがそこにはあった。それは、ノエミがもう失ってしまったものだった。




 フルールはジルベルト王子にこだわっていた。まだ愛着があるのだろうか。


 会いたいという要望を突っぱねると、子犬のようにしゅんとした。


 理由などもちろんあるわけがないので、適当に誤魔化しておくと、そのうち何も言わなくなった。



 ノエミは、フルールの世話をしつつ、彼女を泳がせておいた。


 本当は四六時中ついているべきなのだが、なにか彼女を追い落とすための火種がほしかったのだ。


 孤独さを感じたのか、フルールは、御庭番などに成り下がったアンリとよく会うようになった。


 これをうまく使えればと思ったが、たまたまの邂逅を果たした一度目とは違い、その後はアンリの方がひそかに侍女と侍従を温室の奥に控えさせるようになってしまった。

 これでは醜聞になり得なかった。




 そんなある日、サーブルザント王国からの商品を輸入している少年に出会った。


 私は、彼の瞳が遠くを散歩するフルールを追っていることに気がついた。


 だから、持ちかけたのだ。あの人を攫ってみませんか、と。




 単に、少年が叶わぬ初恋に夢見ているだけだと思っていた。ささやかな醜聞を起こせれば、それでよかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ