4-9 出産
「うー……い゛た゛い゛〜!!」
「トリーシャさん!!」
「はい、頑張ってね。まだ初産だし時間かかるからねぇ」
助産師さんは今の国王を取り上げたという大ベテランだけあって落ち着き払っている。
シワの深い顔が今は頼もしい……。
トリーシャが臨月になり、家族の団欒の最中に破水してからはバタバタしてしまった。
セオドアは慌てすぎてタマの長い尻尾を踏んで、怒ったタマに腕を引っ掻かれ、ミケはタマの怒りの声に驚き外に逃げ出し、シロがタマを宥めつつクロはミケの後を追った。
レオだけが冷静に急ぎ執事のもとに走って知らせ、メイドのメアリーに手を貸して貰ってベッドに横たわっていたところで、助産師が馬車で堂々と登場したのだ。
「トリーシャさん…………」
涙目のセオドア。
「お母さん…………」
同じく涙目のレオ。どちらかと言えば母 母親似の顔だったのに最近セオドアと似てきた。
「にゃー……」
クロに連れ戻されたミケも空気を察してそれっぽい雰囲気で鳴いている。
「ほらほら、男たちは邪魔だよ!さっさとどっか行きな!」
「トリーシャさん……!」
助産師さんに怒鳴られたセオドアがさらに目を潤ませつつ退室する。
「お母さん!がんばって!」
「ま、任せて……!」
トリーシャは痛みを堪えつつ、何とかレオには笑顔を見せた。
汗だくの中々引き攣った顔だったが、レオは大好きなお母さんの笑顔にギュッと拳を握って応援の意思を見せた。
よし、頑張るしかないわよね。
「うぐぐぅ………………」
恥ずかしくてセオドアの前では出せないタイプの呻き声を上げつつ、痛みに耐える。
「ほら、ちゃんと息して!」
「ひ、ひ、ふー!」
……で良いのよね?
「よし!あんた根性座ってんじゃないの。ほら、まだ掛かるからね」
「ひ、ひぃい〜……」
「気合い入れなさい!」
そこから痛みが引いたり、また押し寄せたり。
外もすっかり暗くなってから、どれだけの時間が経ったのか。
「んぐぐぐぅう〜……」
何度も何度もいきんだ末に――
「おぎゃー……おぎゃー……」
う……生まれたぁ……………疲れた。可愛い声してる。可愛い……。
疲れ切って感動とか、そんな感じではなかった。顔は汗だくだし。
「元気な子だね。女の子だよ」
腕の中に抱かせてもらえて、しわくちゃの顔を見ているうちに段々と胸の中に実感が湧いてくる。
「はじめまして、私の赤ちゃん」
自然と頬に笑みが浮かんでくる。
「トリーシャさん!」
「お母さん!」
「にゃー!!」
男性陣が慌ただしく部屋に入ってくるのを、トリーシャは満面の笑顔で迎え入れた。
猫たちは少し離れたところから遠慮がちにこちらを見ている。
「女の子です。レオ、あなたの妹よ。仲良くしてね」
「うん!」
深夜にも関わらずレオは元気いっぱいに返事をした。
そして、恐る恐る手を伸ばすので、そっと腕の中の娘を差し出す。
「あ、指握ってくれた!ほら、お父さん」
「わ、私も……!」
赤ん坊に指を握って貰って、セオドアもレオも嬉しそうに顔を見合わせる。
トリーシャはそれを幸せな気持ちで眺めていた。
いうも読んでいただき、たくさんの人に応援いただき、めっちゃ喜んでます!
物語の終わりまで後ほんの少しなので最後までお付き合いいただけると更に嬉しいです!




