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アースウィズダンジョン 〜世界を救うのは好景気だよね  作者: バッド
5章 台頭し始める企業

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65話 ツアー

 だだっ広い平原に、膨大なマナを凝縮させた魔法の槍群が浮いていた。


凝集火炎槍マスファイアランス

凝集氷結槍マスアイシクルランス

凝集影槍マスシャドウランス

凝集魔法槍マスマジックランス


『舞い踊れ』


 マグマのように光る、燃え盛る炎の槍。

 冷気を纏わせて、氷粒が辺りを凍らせている氷の槍。

 気配を感じさせず、死を齎す漆黒の影槍

 マナを凝集して作られた水晶のような魔法槍。


 防人は人差し指をタクトのように振るいながら、魔法を操作する。それらが指示に従い宙を舞い、周囲を高速で複雑な軌道を描いて飛行していた。


「魔法を破壊せよ! あの魔法を破壊せよ!」


 怒鳴り散らすのは、ゴブリンキングだ。先程から空を舞う槍を撃ち落とそうと躍起になっていた。


 自らの多くの部下を指揮して、焦りを見せながら。


 平原に見える部屋内で、ゴブリンキングたちは陣形を作り、敵対者と戦闘を繰り広げていた。


魔法破壊マジックディスペル

魔法破壊マジックディスペル

魔法破壊マジックディスペル


 3人のシャーマンがマナをエネルギー波と変えて、空を飛ぶ魔法の槍を破壊しようとする。だが、空間を歪めて、マナの波が槍に迫ると、風にあおられる木の葉のようにふわりと飛び退り躱されてしまう。


 魔法破壊を躱した槍は、ピタリと空中で止まるとその先端をシャーマンに向けて、弩で撃ち出されたかのように突撃する。一瞬のうちにシャーマンたちは身体を貫通されて、燃え上がり、凍りつき、穴を空けて死んでゆく。


「グ、盾持ちよ!」


 盾持ちのナイトたちを前面に立たせて、防御しようとしてくるが、武装影虎がそこに突撃する。頭を下げて、バッファローのように突撃する影虎たちがタワーシールドにぶち当たると、押さえているナイトごと、トラックのような突進で吹き飛ばす。


 ガランと音をたてて、タワーシールドが放り投げられて、組み合わせた鉄板の鎧を着込んだゴブリンナイトが倒れると、その身体にのしかかり、魔法武器化された爪を突き入れる。


「みゃん!」


「ガフっ」


 可愛らしい鳴き声には似合わない凶暴さを見せて、その体重から繰り出す重い一撃でゴブリンナイトの頭を叩き潰し、鮮血を撒き散らせるのであった。


 同じように、他の盾持ちも影虎に倒されていく。対抗するために剣を振り上げて前衛のナイトが影虎を倒そうと駆け寄り、裂帛の叫びと共に剣を勢いよく振り下ろす。


「ムンッ」


 鉄板のような雑な作りの切るよりも潰すことを目的とした剣の一撃。これまでの一撃ならば、影虎の頭を潰していたその攻撃は、されど四肢を踏ん張り、魔法武器化により作り出された兜を被っている頭を突き出してきた武装影虎に、ガキンと金属音をたてて弾かれた。


「みゃんみゃん!」


 剣撃を弾き返されて、体勢を崩すゴブリンナイト。その隙を逃さずに、爪を伸ばして猫パンチを繰り出す武装影虎の連撃は、ナイトの身を覆う鉄板を軽々と切り裂き爪痕を深く残す。


 バタバタと倒れていく部下に、ゴブリンキングは焦り恐怖して、魔法の槍を操る魔法使いを見て唸り声をあげる。


「ぐぬぅ! 魔法使いを倒せば!」


 逆転を狙い、その巨体からは似合わぬ俊敏さを見せて、駆け出してくるゴブリンキングであったが、防人は冷めた表情で近づく相手を見つめて呟く。


「ほら、やるよ」


 クイッと人差し指を曲げる防人の動きに合わせて、槍がゴブリンキングに狙いを変える。飛来する槍に立ち止まり、ゴブリンキングは闘気を大剣に巡らす。


闘気剣オーラソード


 赤き光剣にて槍を切り裂こうと、その剣撃は正確に肉薄してきた影槍の穂先に命中する。そのまま切り裂いていくかと思われたが、


「ぐぬぅ?!」


 すぐに氷槍と魔法槍がその刃に命中して押し返す。3本の槍の力に押し負け始め慌てて力を込めて、負けじと必死の表情となるゴブリンキングだったが、勝負はそこで詰みとなっていた。


「終わりだ」


 防人が操る最後の槍がゴブリンキングの頭上に浮かび、それに気づいた魔物のボスは絶望の表情となる。そうして豪炎の槍は火の粉を散らし勢いよく落下して、被っていたヘルムを溶かし、その身体を貫き燃やし尽くし、灰と化すのであった。


 僅かな間に、ゴブリンキングの軍団は倒されて、その場に死屍累々と倒れ伏す。


「これで終わりだな」


 肩凝りをほぐすように肩を回しながら、防人は散歩でもしているように、気楽そうな表情であくびをした。


「え、エグいな」


「ソロで倒す……。これ、ソロにゃん?」


 一緒にボス部屋にいた信玄と、花梨が顔を引きつらせて戦闘結果を見て慄く。


「あんだよ。ソロで楽勝だって、言っただろ?」


 のんびりとした口調で告げる。ソロで攻略しているって、言ったでしょ。ナビゲートに雫さんがいるけどな。


「いや……もう一人ぐらいいるかにゃ〜、とか思ってたんだけどにゃ。防人が変態だと再認識しただけに終わったにゃん」


「そうか。お前の尻尾をちょうちょ結びにしていいか?」


 変態とはいい度胸だと、口元を曲げて、手をワキワキと動かしてやると、フニャアと飛び上がって、猫娘は後退った。


「影魔法って、良いよな。これ何匹ぐらい作れるんだ?」


 信玄が平原に座り込む影虎を羨ましそうに眺めて呟く。


 ここには武装影虎ウェポンタイガーが15匹ほどいた。敵を倒し終わり、みゃんみゃんと爪を仕舞って顔を洗っている。


「普通は3匹か4匹ぐらいと思うんだけどにゃあ。これなら数で敵を叩き潰せるよにゃ」


「そうなのか……。現在、70匹が最高だな」


 たぶん最大マナによると思うんだ。試した結果だから間違いない。弱くても強くても70匹。そして、使い魔はダンジョンのパーティー人数に引っ掛からないようだ。


「凄い使えるスキルにゃんこ! これなら兵士の損耗なく戦えるにゃんね?」


「そこまで強くはない。影魔法は魔法に弱いんだ。範囲魔法を使われると、あっさりと消えちまうから、安全に倒せるのはゴブリンキングぐらいじゃないか?」


 魔法武器化により、改造されてはいるが、それでも凶悪な魔法には耐えきれないと予想するぜ。


「あ〜。なるほどにゃあ。そう美味い話はないにゃんね」


 がっくりと肩を落とす花梨を横目に、ボス部屋のダンジョンコアがせり出してくるのを眺める。


「さて、今回はなにが出るかな?」


「防人、運が悪いからニャア。あちしが触れようか?」


 ダンジョンコアに触れる機会など、ほとんどないのだろう。興味津々で、ニャンニャンと身体をくねらせて、戦闘服の胸元を開く猫娘。色仕掛けに慣れていない様子でテレテレと照れていたりする。


『でぃぃふぃんす、でぃぃふぃんす』


 突発的に反復横飛びをしたくなったらしい雫さんが、俺の目の前でアホっぽくカニ動きをするので、目を逸して答える。


「駄目だ。これは攻略者の特権だろ?」


 ダンジョンコアに触れて、等価交換ストアーに仕舞うと、こっそりと隠しておいたポーションをポケットから取り出して手に握りこむ。


 そうして、手を開いて、ふむと頷く。手品師防人だぜ。


「ポーションだな。これはなんのポーションだ?」


 赤い液体の入っている小瓶。マークが入っているがよくわからない、フリをしておく。


「ポーションにゃ! 拝見させていただくにゃ」


 魚を見つけたように猫はポーションに飛びつく。と、ジロジロと眺めて、ため息をついた。


「これはスキルレベル2へレベルアップする経験値的な物を50%取得するポーションにゃ。価値はそれなりにゃんね」


「あぁ、それなら信玄にあげるか。っと、ダンジョンが消えるな」


 空間が虹色になり、消えていくと地上に戻る。そのまま信玄にポーションを手渡しておく。


 廃墟ビルの一つに変わり、辺りにコアが散らばり、木箱が一つか二つほど落ちている風景となる。


「おう。これでレベル2になると思うか?」


 どうだろうなと答えて、信玄がポーションを飲むのを見ながら、花梨に声をかける。


「これで俺のソロ攻略ツアーは終わりだ。満足したか?」


 口元を曲げて、腕組みをする俺に、花梨は疲れたようにため息をつきながら頷く。ダンジョン攻略で神経をすり減らしたらしいな。


「本当にソロでゴブリンダンジョンをクリアできるんにゃぁ。防人は凄いにゃんね。ポーションは高価にゃんよ」


 俺のダンジョン攻略を見てみたいと、花梨が言ってきて、信玄も興味があるというので、ツアーを敢行したのである。俺一人で楽勝なところを見せないといけないからな。結構緊張したが、ハードボイルドな男はそんなことはおくびにも出さないぜ。


「これで5個のダンジョンクリアか。ここらへんはこれで安全になったな」


「防人は確率的におかしいにゃ? スキル3、10%レベルアップ瓶とスキル2、50%レベルアップ瓶が1つステータスアップ200。他は教えてくれないスキル2つと、ポーションの確率高いにゃんね」


 他のスキルやアイテムはどうなっているニャン? と頭を傾げる花梨。たしかに確率的におかしいよな。俺もそう思うぜ。


「これ、一度取得したスキルは除外されるんじゃねぇの?」


「たしかにその通りにゃん。スキルを大量に取得した人間が触ると、高確率でポーションになるにゃん。低レベルほど、その確率は高いにゃんけど……防人はあちしに隠しているスキルがあるにゃんね?」


「切り札は残しておくもんだぜ?」


「むむむ。教えてくれにゃーん。ほらほら……」


 胸を押し付けようとして、顔を赤らめて、ギシリと動きを止める猫娘。ブリキ人形みたいになるので、こいつがくノ一になるのは無理だなと苦笑してしまう。あざといですと、プンスコ怒る少女は見なかったことにしておく。


「儂もスキルレベルが上がったのを感じ取ったぞ! 見ろ『騎馬隊』」


 ジリジリと近づこうとする警戒心の高い猫を半眼で見ていると、信玄の爺さんが喜び、ドスのある声で手のひらを翳す。既に信玄には200ステータスアップポーションも渡してある。馬を増やしておきたいんだよな。


 マナの力が手のひらを輝かせて、魔法陣が描かれると、立派な体躯の騎馬が召喚された。それと共に信玄の身体に赤い光の粒子が集まると、武将鎧を着込み、槍がその側に転がる。


「グフゥッ」


 そのままバタンと倒れる爺さん。


「なるほどにゃ、『騎馬隊』って、本来はこういう機能にゃね」


「だなぁ。たしかにおかしいとは思ったんだよ。軍馬を喚び出すだけなら、『馬』とかじゃね? ってな」


「ぐぐ……お前ら助けろよ」


 俺たちは信玄と共に現れた軍馬と武将鎧と槍を見て納得するが、爺さんは苦しそうだ。


「なんで適当に使うわけ? 使い方が頭に浮かばなかったの?」


「とりあえず使ってみたかったんじゃ」


 信玄は武将鎧を着込んでいる。その上に武将鎧を重ねて着込み、さらに4人分の武将鎧が積み重なっていた。そりゃ重くて動けなくなるよな。


「あちしはこういう人を見たことあるにゃん。シューティングゲームが始まると全ボタンを押してボムを使っちゃう人。説明書をろくに読まないにゃんよ」


「なんだよ、内街ってゲームセンターまだあるの? 廃墟街と格差ありすぎだろ」


「その分、物価は高いにゃんよ。外街の数倍は高い……あにゃにゃ」


「なんだよ。納入の取引額を変えたかったら、言ってくれよな。じゃが芋の本当の価格っていくらなんだよ」


 慌てて口を噤む猫娘ににこやかに笑みを浮かべて問いかける。金はいくらあっても良い。コアを拾いながら、ふーふーと下手くそな口笛を吹く花梨を追及する。


「ちょっと助けろや、お前ら………」


 呻く声が聞こえるが幻聴だろう。なるほどなぁ、騎馬隊は武装込みで現れるのか。でも、恐ろしくマナを消費しそうだ。それが『騎馬隊』の弱点なんだな。


 マナがなくなれば、戦闘はできないじゃんね。


 ところで爺さん。召喚系統は任意で消せるぜ。気づくまでほっとこ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 数を召喚できる系は味方に1人は欲しい人材ですよね。
[気になる点] 鎧の名前が武田四名臣になりそうw [一言] 防人が変態・・・・・さきもりしゃん・・・・あっ(ボッ
[良い点] 猫(虎)が可愛い。 [一言] 猫娘はなあ、欲剥き出しすぎてて良い関係作れると思っているのかな?解っていてやっているのか、自制が効かなくなっているのか、どっちなんでしょうねw
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