うさ耳くん、寂しくなりながらも八歳を迎える ①
「いい感じ!」
俺は魔物相手に狩りを続けている。
俺は八歳を迎えた。ノアレからは手紙は届いているけれど、会うことは叶わない。きっともっと可愛くなっているんだろうなと考えると、彼女に悪い虫がつかないかとそんな心配をしてしまう。
こうして離れている今だと、どうも対処は出来ないけれど。
というか俺、相変わらず背が低くて女と間違われるような見た目をしているからこんな外見じゃノアレの横に居ても男が近づいてこないように出来ないかもしれない。
きっとノアレは強くなっているとは思う。向上心が強い女の子だから。俺はノアレのそう言う強い性格も含めて好きだ。というか、それも含めて可愛い。
ノアレはそれこそ俺に追いつかれないぐらいの一生懸命だろうから、俺だって頑張らないと。ただでさえ歳の差がある。余計に俺はもっと頑張ろうと、よく山に顔を出している。相変わらず夜は一人で来させてはもらえないけれど。
すっかり山の中は俺の庭……というには言いすぎかもしれないけれど、すっかり俺は一人前の狩人認定されている。うん、子供でもちゃんと魔物を狩れているからな。それに村にお肉や素材はちゃんと卸しているし。
それもあって、子供達の中でも「凄い」って目で見られたりする。ただし俺がうさぎの獣人で、背も低くて見た目はかっこいいとは言い難いので恋愛対象的な意味合いでは全く見られてないけれど。俺はノアレ一筋だから別にそう言う感情は要らないけれど、周りの反応を見るとノアレにも弟的にしか思われないのかなとかそんなことを考えて少しだけ微妙な気持ちにはなってしまうが。
うさぎの獣人って、どちらかというと守られる対象みたいに思っている人が多いのだ。戦闘の時でも裏方でサポートとかする人ばっかりだし。うさぎの獣人の性質的にはそれが合っているからそちらを選ぶのは当然だけど。
俺は子供だから、村の外に向かう際はいつも大人と一緒だ。街に出かけた際は冒険者達と話すことも多い。
俺が冒険者になりたいというと、支援職って思われることばかりでそれはちょっとうーんって思う。この世界が見た目で判断が出来ない実力者も多いとはいえ、やっぱり一番最初に目に入る情報というのは容姿だからな。
ちょっとワイルド風にしてみる? 周りから見て、怖れられる風にするとか? でもなんかそれって凄く中二病っぽいからなぁ。
学園への入学が着々と近づきつつはあるから余計に同年代に侮られないようにはしたいなと思ったり。
やっぱりあれだよなぁ。
新しい環境だと、最初が重要だろう。獣人だと特に強い相手がいうことが絶対な部分はある。というか、強者であればあるほど一目置かれるというか。まぁ、この世界だと他の種族でも強ければそれだけ憧れなどの感情を向けられそう。
そうなると学園に入学したら、強さを示せるようになった方がいいだろうな。うん、最初にこう、向こうから喧嘩をふらせて、強さを見せつけたい。
俺はそんな野望に燃えている。
だから今日も、山の中を走り回る。
常に体力をつけようと考えて行動していたのもあって、日に日に動きやすくなっているのを実感すると嬉しくて仕方がない。
思うがまま足を動かせると、これだけ気分がよくなれるのだ。
もっと俺が魔法を使えるようになって、身体能力をあげられればもっと出来ることがどんどん増えていくはず。
見たことがない景色や戦ったことのない魔物など――そういうものを見られると思うと、興奮していた。それでノアレが一緒に居たら一番いいよなぁ。
ってまたノアレのことばかりを俺は考えてしまっている。
ノアレのことを思考すると、寂しい。声が聞きたいし、もっと一緒に居たい。鍛錬もしたいし。ご飯を食べたりとかも。
ただ何気ない日常をノアレと一緒に過ごせるだけでどれだけ幸せなんだろうかとそんな妄想ばかりをしている気がする。
今、ノアレは何をしているんだろうか?
時間的にご飯の時間か? 俺はこうして山をうろつくようになったけれど、ノアレの方にも同じような変化があるかな?
手紙のやりとりはしているから、なんとなくノアレがどんなふうに過ごしているのかは想像することが出来る。ただあくまで想像するだけなのだ。
実際にどうすごしているか見たり聞いたりしているわけではないので、どうなのか分からないけれど。俺も手紙は書いているけれど、それでも書ける情報は限られているのだ。
だから俺は沢山のことをノアレに報告しているつもりでも、全ては伝えきれていないのだろうなとも思っている。
再会したら、俺、ノアレが引くぐらい沢山話しかけそう。後は許可してもらえたらべったりくっつきそう。セクハラになるだろうし、許可されない限りは我慢するけれど、ノアレの姿見た途端に抱き着きたいぐらいには寂しい……ってなっている。
毎日毎日、ノアレのことばかり考えている。
寂しい気持ちを紛らわせるためにも、俺は魔物を狩っている。




