うさ耳くんと、山の中 ①
「んー、難しい!」
まだ七歳の俺だけど、父さんたちの狩りに何度も連れて行ってもらって、少しずつ経験を積んだ結果、村の近くの山にならば一人で入ってもいい許可はもらった。
奥に一人で入らないようには注意されたけれど、俺も一人で奥に行って予想外の魔物に襲われたら大変なことぐらいは分かるから奥にはいかないよ!
許可が出てから俺は訓練を山の麓で行うようになっていた。
だって、俺が五感の一つを閉じて訓練しているところをじっと見られるのもアレだし。俺は幼いころから訓練をしているから村の人たちは俺がそういった訓練をしているのに慣れてはきているけれど、見られない場所で出来るならその方がいい。
俺的には、誰も知らない力を実は持ち合わせている的なのも結構好きである。やっぱり武器っていうのは隠し持っていたほうがかっこよくない? 俺が勝手にそう思っているだけだけどさ。
五感を塞いでの動きも、前々から行っているからか俺自身も大分慣れてきていた。
――なんだろう、目を塞いでいても魔力を通して周りが見えるというか、なんとなく何が何処にあるかとかが分かるというか、そういう感じ。うん、もしかしたらこの世界の人たちは五感が元から欠損していたとしても魔力を通して生活に支障なく生きている人だっているのかもしれない。
今のところ、俺はそう言う風に障害を持っている人達に遭遇したことはないから分からないけれども。
俺はまだ五感を塞いでくるような相手と戦ったことはない。でもきっと世の中は広いからこそ、そういう相手がどこかにきっといるはずだ。
そう言う相手と戦うことがないかもしれないけれど、もしかしたら遭遇するかもしれないことを考えて俺は行動する。
だってさ、いつかノアレと再会した時に、ノアレを守れるようにしないと! 俺はノアレに何かあるのが嫌だし、この世界をもっと冒険したいし。うさぎの獣人は戦闘に向かないっていう認識を覆せたらきっと面白い。……まぁ、俺がこれだけ訓練していても俺の知るうさぎの獣人は全然戦闘職を目指そうとしている人もいないけれど。
でもちょっと考えてみると、将来、俺の様子を見て強くなりたいって思ってくれるうさぎの獣人が居たら面白いなって思うんだ。誰かに憧れられたりとかしたら、うん、ノアレも俺のことかっこいいって思ってくれるかもしれないし。
そんなことを考えながら、俺は森の中で目を塞いでいる。
そうしていれば小さな魔物の気配がする。目を塞いだまま、攻撃をよける。流石に五感を塞いで魔物ともやりあっているって両親に知られたら止められそうなのでその辺は報告してない。
……母さんは多分、俺が訓練をしているだけか五感を塞がずに魔物の相手をしているだけだと思っているっぽいけど。うん、でもこういうのは実戦経験を積んだ方がいいんだよ。そうじゃないと本当のところは分からないから。
魔物を避けた後、そのまま剣で魔物を倒す。
視界を塞いでいたのをとって、まだまだだなと落ち込む。だって、確かにその魔物を絶命はさせられたけれども、剣筋が荒い。見えていなくても正確に、魔物の急所をどうにかできるようになりたい。
こういうのも出来るようになったらきっと楽しいし、かっこいいし。
その後、その魔物を解体する。
この魔物ってすごく小さいから、もっと大きい魔物ともやりあえるようになりたいな。そういう魔物だと解体もきっと大変なのだろうな。誰かが解体しているところとかも見たいなぁ。
学園に通うようになって、そしてもっと大きな街とかに行けるようになればそういうのも見れるようになるだろうか?
あとそうだなぁ、やっぱりドラゴンとかに男としては憧れる。
……ドラゴンを倒すような英雄とかもいるんだろうか? 俺は田舎の村に住んでいるからそういう情報もほぼ知らない。外の世界、どんな感じなのだろうか。俺の憧れるような英雄がいるのだろうか。そう考えるだけでやっぱりワクワクした気持ちになる。
二つ名とかついている英雄ってきっとかっこいいよなぁ。
俺も将来、かっこいい二つ名とかつけられたい。やっぱりファンタジー世界だとそういうのがつけられた方が楽しいと思う。
そんなことを考えながら俺は引き続き、訓練を続ける。
それにしても山の中だと、ものすごい匂いがする植物とかもあるんだよなぁ。獣人は嗅覚が鋭いから正直言ってそのままだとキツイ。
でも魔力で鼻を覆って塞ぐと、平衡感覚派狂うがこういうのも調べてみたいから。
なんだろう誰も手に取らない植物とかって、色んな可能性があると思う。そういうのを調べるのも楽しそうなので、村の人たちが何の足しにもならないと言っているものもたまに集めたりしているのだ。
……家族には何を集めているんだってそんな風に言われたけれど。ちゃんと匂いとか漏れないようにしているし。




