うさ耳くんと、二度目の街 1
ノアレはまた村へと帰っていった。多分、次に会うのはまた先のことだろう。ノアレに次に会う時、ノアレに勝てるように俺は頑張ろうと思う。
俺はノアレが大好きなのだ。
そんなノアレに追いつくために、振り向いてもらうためには努力を惜しみたくない。耳に魔力を込めて、隙をつくことはできたから、もっと油断させて、勝つのだ。
――そんな思いで俺の急所でもある長い耳を、武器に変えるためだけに時間を費やす。失敗して耳が痛んだこともあったが、それでも俺はこの戦法でノアレから勝ちをつかみ取ることを考えているのである。
「ユーリは相変わらず、頭がおかしいわね」
「俺はおかしくないよ!! 俺は耳でも戦える男になるんだよ」
「いや、それがおかしいのよ。最悪の場合、大変な目に遭うのに」
確かに失敗して耳が完全に聞こえなくなってしまったりすることはあるかもしれない。でもそういうでも――を考えても仕方がない。
俺は俺がやりたいようにやる。二度目の人生だからこそ、後悔がないように過ごしたい。
俺が転生者ではなければ、ノアレにここまでグイグイ迫れなかったかもしれない。だって前世の俺はこんなに恋に積極的ではなかったのだから。
そんなこんないつも通り過ごしていたある日、村人が街に出かけることにしたらしい。この村から街に行くことは珍しい。俺も魔力検査のために向かった以外は行ったことがない。
「ユーリは学園に行くんだろ。じゃあ、一緒にいくか」
俺は学園に入学する予定があるから、外の世界を知っていたほうがいいだろうと連れて行ってくれるとのことである。
俺はそれにわくわくした。
次にノアレに会うのは先のことだろうけど、今度はノアレへのお土産などを買おうかな。俺が狩った魔物を売って、お金に換金したらいいっていってもらえたし。
ちなみに他の子供達も、社会勉強のために何人か連れてくらしい。兄さんも一緒である。兄さんと一緒に街に行くのは初めてだし、結構楽しみだ。
兄さんはゲルトルートさんに惚れていて、いつかゲルトルートはこの村から出て行く。ならば兄さんも外に出ていくのだろうか。
母さんや父さんは寂しがりそうだけど、兄さんも諦めなさそうだもんなーって正直思う。
まぁ、兄さんの心をこの村の子供達が射止められたら此処に残るかもだけど。
そんなわけで馬車に商人の馬車に乗せてもらって、街へと向かう。
馬車ってたまにしか乗らないけれど、お尻とか痛いんだよな。やっぱり前世の車は揺れにくかったのだなと実感する。友人でちょっとしたバスとかで滅茶苦茶酔っていた人もいたけど、絶対この馬車だと酔うんだろうなと思った。
「ユーリ、結構揺れるな」
「うん」
兄さんに声をかけられて、馬車から外を見ながら頷く。兄さんは相変わらずイケメンである。……うん、俺もこんなかっこいい男になりたかった。いやでも、ないものねだりしても仕方がない。俺は俺である。うさぎの獣人として生まれたことは受け入れなければならない。
というか、俺みたいな可愛い見た目だったら油断させて倒すとかもできるからな。魔物相手には出来ないだろうけど、人相手だと十分出来そうだ。
馬車に揺られていると眠くなってくる。兄さんに「眠るか?」と聞かれて、兄さんの膝に頭をのせて、俺は眠った。
しばらくぐっすり眠っていた。街について兄さんに起こされて、馬車から降りる。兄さんの膝を占領していたことに、女の子たちに睨まれてなんだかなぁとなった。ちなみに馬車は二台にわけて、結構な人数で街に来た。
ほとんど街にも行かない村人たちだが、必要があれば街に行くので子供達も適度に街に連れて行くようにしているのだ。
とはいえ、街に連れて行くのも本当に生涯数度でも数えられるぐらいらしい。今回はたまたま街に行くタイミングがあったので、俺達は連れてきてもらえたのだ。
相変わらず街は大きい。
俺の住んでいる村の小ささを実感する。俺はまだまだ限られた世界を生きている。もっと広い世界に飛び出したら、俺はどんなものを見れるだろうか。どんなものが待っているだろうか。
そんな高揚感が俺の心を支配する。
俺は学園に通うというのもあって、一人で買い物をやるようにと挑戦を叩きつけられている。いやー、結構難しいよな。村に居る商人としか交渉したことないのに!! でも俺も子供とはいえ、十歳になったら学園に行くのだ。それまでに時間はない。俺は村から一人で学園に行く。……よく考えたら凄い冒険だ。それまでに様々な経験を指せようとしてくれている村の大人たちに感謝しかない。
学園に行ったらノアレはいるだろうけれども――それ以外の知り合いはいないのだ。そんな場所に向かうのは、苦労するだろう。
「……じゃあ、ユーリ、まずは換金に行くか」
「うん!!」
まずは連れられて換金をして、お金を手に入れる。




