うさ耳くんと、初恋の女の子とエルフのお姉さん
「ノアレ、あのね、俺も魔力があって、まだ魔法は使えないんだけど頑張ってるんだ!! 絶対、ノアレに追いつくから」
「そう。良かったわ、じゃあ、魔法学園で一緒になるのね」
「うん!! 学年は違うけど、一緒に通えるの俺嬉しいよ」
ノアレが隣にいる、それだけでなんて幸せなんだろうと思う。ノアレは俺の事を好きになってはくれていないけれども、それでも好きな女の子が隣にいてくれて、返事をしてくれていて――本当に俺、幸せ。普段よりにこにこしてしまっている気がする。
「ユーリは、本当にノアレちゃんのことが好きなんだね。そういうのいいと思うわ」
「……ユーリは、この人にまでそんなことを話しているの?」
「だって、俺、ノアレの事好きだもん」
ゲルトルートさんの言葉に、ノアレが問いかけてくるので、好きだからと口にしたら恥ずかしそうにしてる。ああ、可愛い! 俺の事を好きになってくれたら本当にいいのに。
「ノアレ、ゲルトルートさん、色々知ってて凄いんだ。だから、一緒に色々話も聞こうよ。ノアレが聞きたい話もきっと知ってるからさ」
「……ええ。それにしても綺麗な人だわ。ユーリ、こんな人と結構一緒にいるの?」
「え、うん。時々お話聞いてるよ。俺、知りたい事いっぱいあるし。それに魔法も習いたいし。ね、ゲルトルートさん、ノアレが聞きたいことあったら答えてもらっていいですか?」
「ええ、もちろんよ」
ノアレも村からほとんど出たことがないと聞いているし、きっと外から来た人からも話を聞きたいだろう。そう思って問いかければ、ゲルトルートさんは頷いてくれた。
ゲルトルートさんが真正面に立って、俺とノアレはその向かいで座っている。
「ノアレ、何、聞きたい?」
「急に言われても分かんないわ……」
「そうなの? じゃあ、俺が聞く! ゲルトルートさん、俺とノアレの模擬戦どうでした?」
「そうね。二人とも頑張っていたと思うわ。ノアレちゃんは去年、魔力測定をしたばかりらしいけど、魔法は独学かしら?」
「……村に少し魔力ある人いるから、それで教えてもらった。でも、結構独学です」
ノアレは結構独学らしい。てか、ノアレの村に魔力ある人いるんだ。知らなかった。それにしても独学でそんなこと出来るとか、やっぱりノアレってすごいと思う。
「そうなのね。じゃあ、ユーリに教えるのと同時に魔法について教えましょうか」
「教えてもらいたいです。私はまだ、ユーリとの戦闘で使っただけの魔法師か使えないから」
「ふふ、いいわよ」
ゲルトルートさんはにこにこと笑っている。
ちなみに外で話しているので、ちょくちょく視線を向けられている。兄さんも相変わらずゲルトルートさんを度々見ている。
「ありがとうございます。あと、視線が凄いですね……」
「ゲルトルートさん、美人だからね。兄さんもぽーって見てるし」
「……ユーリは?」
「ん? 何が?」
急に言われて、何のことかいまいち分からなくてノアレを見る。ノアレは何だか言いにくそうな顔をしている。
「だから、ユーリは……どうなのって聞いてるのよ」
「ん?」
俺がどうのなってなんだろうか、と分からなかった。そしたらゲルトルートさんが笑いながら言った。
「ノアレちゃんは、ユーリが私に惚れたりしてないかって聞いてるのよ。そんなことを気にするなんてノアレちゃんは可愛いわね」
「……ゲ、ゲルトルートさん!?」
「間違ってはないでしょう?」
「ま、間違ってはないけど、そ、その――」
俺は戸惑って声をあげるノアレに、思わず驚く。え、ノアレが俺がゲルトルートさんに惚れてないか心配してくれたの? それってノアレが俺のことをそれだけ気にしてくれているってこと? なんだかそう思うと嬉しくて仕方がない。
俺はゲルトルートさんに恥ずかしそうに色々言っているノアレの名を呼ぶ。
「ノアレ!」
「な、なによ」
こちらを振り向いたノアレの手を取る。「なななな」とノアレが声をあげているけど、俺はそんなノアレの目を真っ直ぐ見ていった。
「ノアレ、俺、ノアレが大好きなんだ。ノアレが大好きだから、ゲルトルートさんがどれだけ美人でも惚れたりなんかしないよ。だって俺にとって一番可愛いのって、ノアレだもん」
「なっ……」
「こんなに本当に可愛くて、出会う度に好きだって思ってるのに他の人になんて惚れないよ! 俺、ノアレに勝てるように頑張るから!」
「なななな……人前で恥ずかしいこと言うのやめなさい!!」
ノアレは顔を真っ赤にしていた。凄く可愛い。まだ、ノアレに勝ててもないけれど、勝てたらノアレがのこと、好きになってくれたらいいなーって思ってにこにこしてしまう。
「ユーリは素直ねぇ……。ノアレちゃんが真っ赤だから手を放してあげたら? 話の続きをするわよ」
ゲルトルートさんにそう言われて、ノアレの手を離した。それから、ゲルトルートさんから俺とノアレは沢山の話をするのだった。




