コレットにキスしに行こう
その日は珍しくお風呂を沸かしていたので、残り湯につかって身体を洗った。
ぬるくていまいちだけど、それでもタオルで拭くだけよりはいい。
そこそこさっぱりした。
寝間着を着た俺は、手鏡で自分の姿をチェックした。
よし、髪の毛もはねてないし、見苦しくない。
「まずはコレットだな……」
覚悟を決めて、部屋から出た。
帰ってきてからコレットに出くわさなかったが、確実に今夜は本を持って現れてキスをねだるに違いない。
この後レベッカが控えているんだから、コレットで消耗するわけには行かない。
今日はこちらから向かって、こちらのペースで進めてやろう。
コレットの部屋の扉を叩く。
「コレット、いい?」
「あれ? いいですよ」
コレットの声が聞こえたので、扉を開けてコレットの部屋に入る。
ちょっと高そうな戸棚が置いてあるが、ここも女の子の部屋としては殺風景だ。
そもそもカラフルな物が少ない文化なので、日本人感覚だと全部殺風景に見えてしまうのかもしれない。
「アリスから来るのは珍しいですね。どうしたんですか?」
コレットが不思議そうな顔をする。
よし、相手は油断している。
今がチャンスだ。
「えーと、コレット、ちょっと眼鏡を外して」
「眼鏡ですか?」
コレットが眼鏡を外す。
よし。
「はい、じゃあ、今日の分ね」
よく分かっていない顔をしているコレットの両方の手を掴む。
この手で掴まれたらたまらない。
腕を掴まれたコレットが顔にはてなマークを浮かべる。
「キスするよ」
両手を掴んだまま顔を近づけて、唇を押しつける。
ふわふわな感触が伝わってくる。
気を緩めると危険なので、緊張感を持って唇を押しつけ続ける。
すると、コレットの手に力が入った。
明らかに俺を掴もうとしている。
その腕を全力で掴んで押しとどめる。
くっ、動かせてたまるか!
これで掴まれたら、また30分コースだ。
コレットの腕をしっかりと掴んだまま、30秒くらいしっかりとキスをした。
そして、キスを追えると、コレットの手を離すと同時に素早く2歩下がった。
「な、なんですか、いきなり」
コレットが目を丸くしている。
「えーと、今日からこういうシステムになりました」
「は?」
コレットが首をかしげる。
「コレットから俺の部屋に来るのは無し。今度から俺が来るから」
「え、それは……」
コレットが何か言おうとするのは遮って、俺は扉まで下がった。
「おやすみっ」
扉から素早く廊下に出て、胸をなで下ろす。
よし、コレットは体力を消耗せずに終わったぞ。
ふぅ……さて、いよいよレベッカだ。




