お出かけ
翌日のこと、レベッカやマリーにいろいろ言われつつも屋敷を出た。
詳細は省略するが、帰った後がちょっと怖い。
馬車に乗って行き先を告げ、相当時間がかかると思って覚悟をしていたら、30分ぐらいで着いて拍子抜けをした。
「え、ここですか?」
「聞いた住所はここですが、なにか間違いがありますか?」
「いえ、別に……」
御者は馬車を駆って去って行き、俺は雑多な建物が並ぶ通りに残された。
今日はさすがにメイド服では無く、マリーに借りたダボダボのワンピースみたいな服を着ている。
なんか、常にマリーに見張られているような妙な気分になって怖い。
そして、履いている靴はもちろんクロエに買ってもらった布靴だ。
なんか、常にクロエに見張られているような妙な気分になって怖い。
でも、今はそんなことはどうでもいい。
「え、本当にここ……?」
アルフォンスの屋敷の周りには、同じような大きな屋敷が並んでいたのだが、ここは明らかに雰囲気が違う。
日本の一軒家のようなサイズの建物もあれば、もっと小さい建物もあり、区画も碁盤の目では無く斜めに走っている道もある。
日本の変な道が多い城下町みたいな街だ。
ダニエルも貴族のはずだ。
こんなところに貴族の屋敷があるのだろうか?
「え、ど、どの家?」
通りの向こうから、あからさまに一般人みたいな人が歩いてきてびっくりする。
そういえば、この世界に来てから貴族系の人しか会ってない気がする。
一般人の普段着というのは、染色とかが結構安っぽいみたいだ。
通りを行き交う人々の服装をチラチラ見ながら、通りを歩いて行く。
そういえば、クロエとマリーと買い物をしたときも、女モードでぶっ飛んでいたとはいえ、普通に街中を歩いた。
でもあの時は二人と一緒だったけど、今は一人だ。
そして素面。
一人で知らない街の中を歩くのは初めてだ。
な、なんか怖いな。
ここ、治安は大丈夫だろうな?
キョロキョロしながら通りを歩いて行く。
しかし、貴族がいそうな大きな屋敷は見当たらない。
「まさか……御者が場所を間違えた?」
ダニエルの家名は確か「ミニョレー」だ。
「ミニョレー……そんな名前ないよな……」
各家の入り口に小さく彫り込まれている家名に目を通していく。
中にはかなり敷地に入らないと家名が読めない家も多く、かなり気を遣いながら目を通していく。
「ん……ここ?」
足を止めたのは、かなり古びた建物の前だった。
建物自体のサイズは、日本の普通の一軒家の二倍はあるし、この辺りでは高級住宅と言えるだろう。
しかし、庭は手入れはされていないし、アルフォンスの屋敷と比較すると比較にならないほど小さい。
貴族の屋敷かと聞かれると、そうとは思えない。
「でも、ここしかないよな……?」
恐る恐る、ドアに着いた金属の輪「ノッカー」を叩いて、家人が出てくるのを待った。




