マリーの猛攻
マリーの部屋に入ると、マリーは怖い笑みを浮かべた。
「え……?」
「そんなに怖がらなくていいから」
「いや、怖いんだけど……」
うろたえていると、扉を叩く音がしてレベッカとコレットが入ってきた。
「今日は私だって言ったじゃん」
マリーが口をとがらせると、レベッカが肩をすくめた。
「いいじゃん。見てるだけだから。アリスも止めてくれる人が居た方がいいでしょ?」
「ですです!」
コレットもレベッカに同調した。
「ま、まぁ、それは……。ってか、なにするつもり? 一応正式に婚約してるわけだから、もう変な事はあんまりしないほうがいいと思うし……」
「別に変な事はしないわよ~」
マリーが歌うように言うと、ベッドに座っておいでおいでした。
「え、えぇ……? ほ、ほんとなにするの?」
マリーに近付くと、身体を掴まれてマリーの膝に座らされた。
同じ女性でもマリーの方が身長が高いので、すっぽり収まってしまう。
「な、なに……?」
「わかんない?」
「わかんないってば……」
すると、マリーは手を俺のお腹に置いて、なで始めた。
「う、うわ、ちょっと……」
「ほら、抵抗しない」
「え……」
どうやらマリーはアルフォンスがやったことと同じ事をしているようだ。
前を見るとレベッカもニヤニヤ笑いながら見ている。
「ど、どうしちゃったの。帰ってきていきなり……」
「うふふ」
うー、そういうことか……。
この三人、集まると悪ふざけというか行動がエスカレートするんだ。
レベッカもマリーも一人だけならそんなに強引じゃない。
コレットは……一人でもあんまり変わらないかも。
「あんまりよく見えなかったけど、こんな感じ?」
マリーが俺のお腹をなで回す。
ゾワゾワが半端ない。
「も、もっとおとなしかったし……」
「いい声上げてたじゃん」
「あ、上げてないし……。も、もう、やめよ」
「だーめ」
マリーが手を下に伸ばそうとしてきたので慌ててガードする。
すると、今度は手を上げて胸を触ってきた。
「そ、そこは駄目!!」
「いいじゃん。男の子なんでしょ? そんなに恥ずかしがらなくても」
「い、今は女です! ってか、ほんとにそこだめだって!」
「マリー、さすがにそれはやめてあげたら」
レベッカが言うと、マリーが渋々手を止めた。
「敏感で困ってるんだから……やめてよこういうの」
「あ……ごめん、本当に怒っちゃった?」
マリーの声のトーンが落ちた。
「敏感すぎてアルフォンスともどうしようかと悩んでいるのに……。あ、べ、別にさっきはあれ以上やる気は無かったからね!? そのー……こ、困ってるんだから、あんまりいたずらしないでよ」
そう言うと、マリーの顔がニマニマっと笑った。
「それってもっといたずらしていいって事よね?」
「ち、違うって! マリーのスイッチがどこにあるのか分からなさすぎる!」
立ち上がろうとすると、腕を回されて妨害された。
「ちょ……マリー!?」
「でもさぁ、慣れるためにも刺激を受けた方がいいんじゃない?」
「じょ、冗談じゃないよ! むしろトラウマ……。う、うーん……や、優しく優しくなら慣れるかなぁ……」
そう言いかけると、見物しているレベッカが首を振った。
「そんなこと言うとマリーが調子乗るから止めた方がいい」
「あ、そうだね……」
「んもー……わかったわよ」
マリーは胸に手を伸ばそうとするのを止めて、お腹を軽く撫でながら頭に手を乗せてきた。
「あ……」
マリーに頭を撫でられると身体がぽかぽかしてきて、そのまま脱力してしまう。
目を瞑って、マリーに体重を預ける。
時々お腹から来る刺激で、身体がピクッと震える。
「わぁ……」
レベッカのあきれるような声が聞こえて目を開けると、レベッカが棚の上にあった手鏡を取って無言で自分に向けた。
そこには、「乱暴な男に散々なぶられてめちゃくちゃにされたのですか?」と言いたくなるような、脱力して抵抗する気がなくなった自分の姿が映っていた。
「う、うぅ!?」
さすがにその姿で我に返って、マリーの手を振り払おうとすると、マリーに掴まれて無理矢理キスされた。
「んぐぅ!?」
ちょ……なにこれ、強引すぎ!
し、舌を入れないで、ダメダメ!
ダメ……あ、負けた。
マリーが自分の口の中をなめ回す。
う……そ、そんなとこ……う……うぅ……
だめ……無理……
死ぬ……無理……
う……う……
「ふぅ……アリスってほんとかわいい」
口を離したマリーが笑いながら言う。
「じょ……冗談じゃないって……か、身体が……」
刺激が強すぎて、指先がガクガクと震えている。
「マリー……アリスにあんまり強引なことしちゃダメだよ」
レベッカが控えめながら、マリーに釘を刺した。
「だって……かわいすぎて……」
「だ、だったら、頭なでるまでにして……。ディープキスとか……き、きつい……」
俺は口を押さえながら立ち上がった。
「マリー……悪乗り戻ってきてるから、ほどほどにして……」
「ご……ごめん。やりすぎたかも……」
申し訳なさそうにするマリーを後にして、俺は自分の部屋に戻った。
そして、疲れが一気に出て死んだように眠りについた。




