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難攻不落の魔王城へようこそ~デバフは不要と勇者パーティーを追い出された黒魔導士、魔王軍の最高幹部に迎えられる~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第三章◇勇者集団VS魔王軍

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108◇怪物の集まり(後)

 



 上位ランクのパーティーに共通するのは、強さ。これは必須条件と言える。


 ダンジョンを攻略出来ないままに人気を得ることは、とても難しい。

 では強いだけで人気が取れるか、これも難しい。ニコラさんやフィリップさんの過去パーティーもそうだったように、勝利だけでは注目されない。


 実績を積み重ねることで、ある時人気に火が点くこともあるが……稀な例だ。


 だから冒険者に必要なのは、強烈なスタイルの確立。

 上位に来る者達には、それがある。


「それとだ、レイス。先達へは敬意を払うべきだ」


 窘めるようなエアリアルさんの言葉。

 スカハさんへの態度の件だろう。


「敬意、ね……。まぁ、そっか。一緒に戦うってことは、一時的とはいえ仲間ってことだもんね、うん。分かった。ごめんね、スカハさん。レメさんに逢ってはしゃいじゃったんだ。ここからは静かにしてるよ」


 素直というか、柔軟なのか。

 個人的な好悪があっても、共に戦うならば仲間。尊重すべき。それに納得した、といった感じだ。


 ニッコリと微笑むレイスくんに、スカハさんも毒気を抜かれた様子。


「……いや、俺も大人気なかった」


「ううん、俺の方が失礼なこと言っちゃったもん。謝るよ。レイド戦で勝って、強さを証明して、四位に戻れるといいよね」


「……あぁ」


「なんだスカハ。そこは四位じゃ物足りない一位になってやる! くらい言え」


 ヘルさんが言うと、スカハさんが挑戦的に笑う。


「はっ、お前を引きずり下ろすのは楽しそうだがな」


「いいね、調子出てきたじゃないか。ま、無理だけど」


「……俺たちが抜く時に四位に下がっていたりするなよ。落ち目を抜いても盛り上がらんからな」


「あはは、ぶっ飛ばすぞ静電気野郎」


「出来るのか、筋肉女」


 二人の掛け合いは一見物騒だが、まぁじゃれ合いのようなものだ。

 長いことランクが近いと、色々あるのだろう。

 実際、二人に殺気も怒気もない。会話を楽しんでいるようにさえ見える。


「……スカハ。誰も気にしていないようだが、レメ殿に知られてよかったのか。レイド戦は、公式には発表前だが」


 話を聞いていた全員が「あ」という顔をした。

 誰も僕の魔王城勤務を知らないので、当然の反応。


 ……あれは、スーリさんかな。


 スカハさんのパーティーメンバーで、【無貌の射手】と呼ばれる【狩人】だ。

 ダンジョン攻略だけでなく、プライベートでも顔を見せないようケープのフードを深く被っている。


 世界で三人しかいない『神速』の遣い手だ。

 どういうわけかリリーは彼のことが好きではないらしく、彼を超えることを一つの目標にしていた。


 単純な弓の腕はリリー以上で、更に隠密を得意とする。

 スカハさんのパーティーは、『速さ』が売り。


「済まないレメ。このメンバーが集まっている時点で何かあるのだと想像していただろうが、この件は内密に頼めるだろうか」


「えぇ、はい、もちろん」


「レメさんが俺の仲間になれば解決じゃん」


 静かにする発言の後だからか、ちゃんと先程より声が小さい。


「今の仕事が好きだから」


「……え、勇者になるんじゃないの? その仕事でなれるの?」


「あぁ、なるよ」


「んんっ? よく分かんないな。……いや、言えないっぽいし良いけど。要するに、今の仕事より俺のパーティーに魅力を感じてもらえばいいわけでしょ? いつでも言ってよ。枠、空けとくからさ」


 レイスくんのパーティーはまだ完成前だが、どんなスタイルになるのだろう。


「良い返事は出来ないよ」


「絶対はないでしょ。気が変わることもあるって」


 レイスくんは自信があるようだ。


「あまりレメを困らせるな」


「おじさんだってレメさん欲しかったくせに」


「そしてお前と同じく振られてしまったよ」


「俺は諦めないし」


「本人の意思は尊重すべきだろう」


「うん、だから待つって。アピールはするけどね」


「ふむ、空きがあればこっちにも誘うんだが」


 ヘルさんが会話に混ざる。


「姐さん! うちに男なんて要りませんって!」


 ヘルさんのところは『肉弾戦』だろうか。ニコラさんの憧れた、泥臭い真っ向勝負がウリ。


「おや、大人気じゃないかレメ。だが最初に目を付けたのは私だぞ」


「あたしは前パーティーにいる時から鍛えてる奴だなって気付いてたけどな」


「どっちも既に高ランクじゃん。レメさんは一から上がっていくのが好きだって。だっておじさんそれで振られたんでしょ?」

 

 なにやら自分の話題で盛り上がられるのは、中々ない経験なので照れくさい。


 ……いや、最近ニコラさんとミラさんが僕の話で盛り上がってたか。僕のファンという非常に貴重な存在が邂逅するとあぁなるのか、と嬉しいやら気恥ずかしいやらだった。


「…………」


 そんな三人の会話を、スカハさんは無表情で眺めている。


 ……うん、分かります。僕の追加を望むなんて、少数派どころか此処にいる人達くらいということは。


 大会の件で、確かに好意的な意見も増えた。

 けれどダンジョン攻略で有用かは、また別。


 あの戦い方では多人数に対応出来ないし、優秀な相手を倒す代わりに退場寸前の負傷では割に合わない。

 【黒魔導士】はサポート役。戦闘に参加してサポートが疎かになってはダメだ。


 元々大会用に考えた戦い方なので僕は問題ないが、『そのままダンジョン攻略に組み込めるか』という観点だと、ダメダメだろう。


 三人はそれぞれの理由で僕を評価してくれているが、一般的な感覚とはズレている。

 だからこそ、そういった存在は貴重で、とてもありがたいのだけど。


「話は食事しながらもいいんじゃないか?」


 スカハさんの言葉に、三人は頷く。


「あー、これは僕も居ていいんでしょうか? 何か違う企画の顔合わせなのではと思うんですけど」


「いや、いいんだよレメ。君が言い触らすとは思っていないしね」


「レメさん、俺の隣座りなよ。大会の話聞かせてほしいな。あの蟲人のことも聞きたいし」


「あぁ、あたしもあいつ好きだな。どこで見つけたんだ?」


「……そういうことなら、俺はフルカス戦について聞きたい。あの槍の攻略法はどう気付いた? 同種の魔法具を知っていたのか、あるいは勘か?」


 レイスくんに腕を引かれるまま、卓につく。


 なんだか夢のようなメンバープラス新たな冒険者二人と共に、その日は食事を楽しんだ。

 彼らが全員敵だと思うと、改めて脅威だなと頭の隅で思いながら。




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