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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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能力考察

 ――二十年前、魔王討伐へ至る道において、俺は基本的に誰かと一緒に旅をしていたので、一人になることはなかった。

 よって、探索とかする場合でも仲間がいた……完全に一人で、となると数えるほどしかない。しかも今回は山に入って採取……基本的に複数人で行動した方が良いのだが、メルとしても「トキヤなら大丈夫だろう」という感じで送り出したわけだ。


「よっと」


 山中へ入り込んだ俺は、崖にある野草とかを順調に採取していく。魔法によって空中浮遊し、マヌエラからもらったメモで逐一確認しつつ、一つ一つ集めていく。

 本来、登山となれば相当な準備が必要だが、魔法によって移動手段を持っている俺としては、街道を歩くのとそう大差はない。


 朝から山へ入り込んで、昼には半分以上の素材を収集した。このペースなら夕方前には帰ることができるかも……マヌエラの検証作業は時間がある程度掛かるので、別に数日間かけて採取を行っても問題はない。というか、素材の量からして数日はかかる、というのがマヌエラの想定だとは思う。

 だが俺は無理のないペースではあるが、間違いなく彼女の想像を上回る速度で素材を手にしていく……山中を歩きながら、俺は改めて自分の能力について確認をしていた。勇者として活動を始めてから、二十年経過し明らかに体力などは落ちている。魔力による強化はあるが、それでも全盛期にはほど遠いはず。


 けれど、ここまでの戦いなどを踏まえれば……俺が思っているより、能力は落ちていないのではと感じたし、こうして山中で一人歩き回っても、昔旅をしていた時のような感覚すらあった。


「やっぱり魔力とこの剣が偉大って話か」


 腰に差した剣を見る。マヌエラが希望の剣と評したこの剣の力によって、今の俺は十分なパフォーマンスを出せている。とはいえ、さすがに魔王へ挑むような状況になったら厳しいだろう。

 もし、今魔王が襲いかかってきたらどうするか……そんな想定を頭の中に浮かべる。魔族の行動などを踏まえると、おそらくそんな事態になる可能性は低い……と思うのだが、それでも最悪の可能性は考えておく必要がある。


「今の俺に、というか各国に戦う力があるのか……魔王は文字通り、一騎当千の強さを持つ。俺が勝てたのは多くの支援があったからこそ。二度戦ったけど、三度目は……」


 呟いてから、俺はため息をつく。さすがに厳しいとは思うが――


「もし魔王が復活したら、再び戦争を仕掛けてくる……それをするだけの動機が魔王にはある。各国は魔王が復活したと判断したが、実際は何か異変が生じている……ってことで、いいんだよな?」


 疑問を呟くが、答える者は当然いない……俺は歩きながらさらに考える。間違いなく全盛期は過ぎている……純粋に強くなって魔王に対抗することはできない。なら、工夫をする必要がある。


「鍵となるのは魔法だけど……ふむ、剣以外に何かしら武具を得るか? でも、この剣の特性が特殊すぎて、他の武器や道具などを使おうとすると反発していたんだよな」


 だが、もし俺が強くなるとすれば、ここだろう……すなわち、俺が持つ剣と組み合わせて良い物。あるいは、相乗効果をもたらすもの……後者であれば、魔王に対抗できる力を得られるかもしれない。


「魔王の情報を得るついでに、武具などの情報を集めてみるか」


 もし天王達と顔を合わせる機会があれば、あるいは……魔王を二度倒し世界を救ったのだ。三度目があるかもしれないとして「俺が戦えるよう協力しろ」と言っても、まあ意見を受け入れて検討するくらいのことはしてくれるだろう。

 俺は頭の中で今後の方針について一つ決定し……さらに素材を採取していく。昼食は持参してきた弁当で済ませ、その後も山脈移動し続ける。


 魔物については可能な限り回避し、時間をロスしないよう心がける……念のために携帯食料なんかを持参してきたけど、この分なら必要なさそうだな。

 素材収集については、夕刻前になったら終わっていなくても切り上げて町へ戻ろう……そう心の中で呟いた時、俺は違和感を覚えた。


「ん……?」


 方角としては、さらに上。俺がいるのは山の中腹だが、そこからさらに上へ向かったところに、魔力を感じ取った。

 最初は魔物かと思ったが、その魔力が何なのかと原因を探った時……もしかすると、と感じて足をそちらへ向ける。


 進む先に素材はないので、完全に魔力について調べるだけで無駄足になるかもしれないが……それでも足は自然と進んでいく。これは勇者の勘だろうか……もしかすると、これまでの経験から小さな違和感でも今回のは少し違う……そんな風に本能が語りかけているのかもしれない。

 そちらへ向かおうとしている時点で今日中に採取が終わらないことは確定だが……俺は突き進んでいく。やがてたどり着いたのは山の上に存在する岩場だったのだが――そこで、異様な光景を目にした。


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