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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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素材採取

 ――話し合い翌日から、俺達は頻繁にマヌエラに呼ばれた。まだ資材などは届いていない状況だったが、神族であるヘレナについて調べたいと、魔力などを採取して研究を始めた。

 それから数日経過した後、朝の時間帯に俺は一人呼ばれ屋敷へ赴いた。すると、


「資材についてはおおよそ調達した」

「見ればわかるよ」


 彼女の自室を訪れたのだが、以前にはない様々な器具があった。作業をするために机なんかも買ったらしく、さらに梱包したままの荷物があったりと、部屋の中がずいぶんと雑多な感じになっている。


「で、俺の出番はあるのか?」

「そうだな。幾度か屋敷に来てもらって悪かった」

「俺達が依頼したんだから当然だ……で、薬については――」

「結論から言おうか」


 と、マヌエラは俺に語る。


「魔力を検証した段階では、薬は作成できる……ただし、配合率などを変える必要は出るし、神族という種族の特性もあるため、効果も落ちてしまうだろうが」

「効果が落ちる、というのはどのくらいだ?」

「私の場合は薬を服用してから半日程度は持続していたが、それよりは短い……まあそうだな、一日に対し四分の一くらいだろうか」


 ――この世界では元の世界と同様におよそ二十四時間で一日が構成されている。よって、時間的には六時間程度だろうか。


「あくまで検証した段階であるため、実際の持続時間は不明だが……」

「現状数分なんだ。それが長くなるなら、俺達としては万々歳だ。なら、頼んでいいか?」

「構わないが、もう一つ確認するべき事項があるだろう」

「確認?」


 聞き返すとマヌエラはやれやれといった様子を見せた。


「薬を作成するのはいいが、それを全て消費したらどうするつもりなんだ?」

「いくつか選択肢はあるが……例えば、マヌエラに手紙でも送って作ってもらうとか」

「時間が掛かるぞ。それでいいのか?」

「そもそも、保険程度のつもりだからな……ヘレナとしては薬を飲んで戦える時間を増やしたいだろうけど、正直必要な事態にならないよう立ち回るのが一番だ」

「トキヤとしては使う想定をしていないと?」

「現時点では」

「なるほど、そういう考えながら問題はなさそうだが……それでもやはり、彼女自身が調合できた方が都合が良いか?」

「調合? できるのか?」

「素材の問題はあるが、決して難しくはない。素材そのものは最終的に粉末にして混ぜるのだが……あらかじめ素材を携帯しておき、必要になったら調合するといった方法もできる。そうかさばるものではないからな」

「なるほど……どうするかは、ヘレナと話し合って決めるよ。まずはちゃんと薬の効果があるかどうかの検証だな」

「わかった。それでは、素材についてだが――」


 マヌエラは語り始める。俺は同時に探りを入れてみるかと思いつつ、彼女の話を聞くことに。

 内容的には俺に採取してきて欲しい物に関する説明だった。俺はそれをメモしつつ、採れる場所などを考慮し、


「俺一人なら、丸一日あれば採取できると思う」

「険しい山の中にあるんだが……」

「問題ないよ……メルやヘレナはどうするか、だけど」

「それなんだが、二人を少しの間貸してもらえないか?」

「検証するために?」

「そうだ。実際魔力制御でどういった問題が抱えているのかを改めて調べたい。その結果、薬の配合率などが変わる可能性がある」

「わかった。もし追加素材があれば遠慮なく言ってくれ」

「早速採取に向かうのか?」


 俺が今すぐにでも向かおうとしている様子を感じ取ったのか問いかけてくる。


「んー、そのつもりだったんだが……さすがに明日の朝からにしようかな」

「トキヤは昔から、思い立ったら即座に行動するな」

「そうだったか? まあでも、即断即決しないとまずい状況が二十年前の旅でも、十年前の戦争でもあったからな」


 俺はそう言いつつ……頃合いかな、と話を変える。


「なあ、マヌエラ。話は変わるんだが……研究者を辞めた際、知り合いとかには驚かれたんじゃないか?」

「それは当然だな。昨日まで目の下にクマを作りながら研究していた人間が突然辞めるとなったら、誰もが目を見開く」

「そこまで急に辞めたのか……さっきマヌエラは俺に即断即決と言っていたが、そっちの方がよっぽど即断即決だぞ」

「ははは、まあそこについては色々あったからな」

「ちなみに友人とか知り合いはどう思っているんだ?」

「大半が訝しがっていたな。結婚したのはまあ良いにしても、なぜ研究者を辞めたのかという点について引っかかりを覚えた者は数多い」

「詮索くらいはされているか」

「そのくらいは想定していたさ。客観的に見て、おかしいからな」


 肩をすくめるマヌエラ。とりあえず異様な状況だという自覚はあるらしい。

 ふむ、ここからどう探りを入れようか……などと思った時、


「やはりトキヤも気になるか?」


 そう尋ねられ、俺は小さく息をついた後、彼女へ返答した。


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