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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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魔力制御

「まず、魔力制御の修行についてはじっくりかつ、しっかりとやる。ただその一方で、一時的に全力戦闘を長時間行うことができる手法も模索する」

「強化魔法か何かで、全力戦闘できる機会を増やすというわけですね」

「そうだ……問題は、そんなことが実現できるのかどうか、だが」

「やりようによってはあります……ただしそれは、ヘレナにとって負荷が掛かる話でもあります」

「……メルさん、どういうこと?」


 眉をひそめるヘレナに対し、メルは解説を始める。


「簡単に言うと、魔力の制御法を魔法……あるいは、薬などによって無理矢理変えます」

「魔力制御を……そんなことができるの?」

「はい、可能です。そうやって一時的に魔力の扱い方を変更することで、とんでもない力を発揮していた人物を知っています」

「マヌエラだな」


 メルの言葉に俺が口を開く。


「元々研究者だった人物だが、十年前の戦争で攻撃を仕掛けられた際、自分が戦えるように魔力の流れを調整する薬を開発した」

「薬……」

「ただし、デメリットはある。魔力の制御などを無理矢理変える、というのは普段はないような動きを体に強制するということ。薬の持続効果はマヌエラ場合半日はあったが……反動として、丸一日くらいは魔力をまともに制御できなくなっていた」

「薬の副作用、といったところ?」

「そんなところ……もっとも、ヘレナは神族だしマヌエラが効く薬を作成できるかはわからないが……薬があれば、一時的でも全力戦闘ができる時間を増やすことができる」

「確かに、メリットは大きそう……」

「ヘレナは全力戦闘をまったくできないわけじゃなく、時間制限があるだけだ。つまり、全力で剣を振ること自体は経験があるし、時間を増やせば一時的でも満足のいく戦いができる」


 そこまで言うと俺はヘレナへ確認を行う。


「現状できる中で、納得できそうな案だと思うんだが……どうだ?」

「うん、私はそれでいいよ」

「なら次はマヌエラに会うこと、ですか」


 メルが言う。そこで俺は、


「ん、首都――ダルディアにいないのか?」

「十年前の戦争後、ダルディアを離れたという話を聞いています。以降の足跡については、たどってみないとわかりません」

「ふうん……そっか。でも丁度いいタイミングで、情報を得られるかもしれない」


 俺がそう言う……理由は、旅の進路。次の目的地に設定している町は、言わばフリューレ王国で魔法の研究が盛んな場所だ。

「次の目的地であるレメイトの町に行けば、何か情報があるだろ。もしかするとそこにいるかもしれない……あのマヌエラが、研究を止めて畑を耕しているなんて、とても思えない」

「そうですね……ならレメイトで調べましょう」

「どんな人なの?」


 ヘレナが問う。それに俺は彼女のことを思い出し、


「一言で語るなら……変人だな」

「変人……?」

「人生のすべてを研究に捧げていた人物だった。そうだからこそ、色々やらかしてもいた」

「トキヤの剣も研究対象でしたね」

「そうだな。無理矢理剣を奪われて研究していたよ」

「なかなかに、無茶苦茶な人みたいね……大丈夫なの?」

「仕事はできる。それは間違いないが……まあその、本人と会ってもあんまり引かないでやってくれ」

「かなり独特な方ですからね」


 ……メルの表現はかなりマイルドである。俺達の言葉を聞いてヘレナはどういうことなのかなんとなく理解はしたのか、


「なんとなくわかった。覚悟はしておく」

「想像ついたのか?」

「ザナオンと修行をしていて、癖のある人もいたからね」

「なるほど」


 それなりに経験があるらしい。


「とりあえず、マヌエラと会うことも目標の一つにして……ただ、基本的には調査を優先にするから、そのつもりで」

「マヌエラの技術に関するものは国が保管しているでしょうし、場合によっては国に協力を仰ぐというのも一つの選択肢ですね」

「なんだか話が大きくなっている気がするけど……」


 ヘレナが述べる。まあ確かに、自分の魔力制御について色々やろうと思ったら、国を巻き込む可能性がある……というのは、ちょっとビビるかもしれない。


「私についてはあんまり大事になったら引いてもいいよ……あんまり迷惑はかけたくない」

「わかった。とりあえずレメイトでマヌエラの所在について調べよう。期間は……数日滞在するくらいなら、いいかな?」

「はい、おそらく今日中にはたどり着きますから、今日は宿を探して明日から行動に移しましょうか」


 俺は頷き、ヘレナもまた首肯……というわけで新たな目標を設定。首都へ赴くついでなので、負担にもなっていない。

 さて、今のマヌエラはどうしているのか……俺の剣を研究していたことを思い出しつつ、俺は街道を進むことになった。


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