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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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鍛錬の方針

 俺とメル、そして仲間に加わった神族のヘレナの三人で、フリューレ王国内を進んでいく。目指すは王国首都のダルディア。目的は魔王復活についての情報集め。

 首都へ向かうまでの道中で、俺とメルはヘレナに対し鍛錬を行う。彼女は魔力制御が不完全であり、全力戦闘は数分しかもたない……制限時間を過ぎると周囲に被害が及ぶくらいの暴走を見せる……という状況であるため、まずはメルが色々と検証を行った。


「で、調子はどうだ?」


 旅を開始しておよそ五日。歩きながらメルは色々と指導を続けており、ある程度見えてきたらしい。


「そうですね……ザナオンが語っていた通り、生来の魔力制御に色々と問題があるというのは間違いないようです」

「口ぶりからすると、それを矯正したら解決というわけでもなさそうだな」

「はい、とはいえザナオンとの修行により、改善はしているので私はそこから先を指導すれば……」

「どのくらいで全力戦闘を……それこそ、時間無制限にできる?」

「到達するまではまだまだ長い時間が必要になるかと思います。単純に制御できればいいというわけでもなさそうですし」


 俺はヘレナを見る。彼女の方は歩きながらうんうん唸っている……旅が始まってこんな感じだ。


「時間は掛かりますが、いずれ全力戦闘できるようになるでしょう……ただ、それがこの旅路の中でなのか、という点についてはわかりませんが」


 そう述べるとメルは俺に一つ質問をした。


「トキヤ、鍛錬の内容や方針についてはここまでの検証でおおよそ理解できました。鍛錬メニューについてはこれから考えますが、この旅路の中で間に合わせるよう調整しますか?」

「魔王に対する調査である以上、今後も魔族などと戦う可能性がある……ならば急いだ方がいい、という話か?」

「はい」


 頷くメルに対し、ヘレナの顔は少し緊張する。この旅路……場合によっては、復活した魔王に挑むかもしれない。そんな事態になれば、当然全力で戦闘できた方が間違いなくいい。

 かといって、急ぐことでヘレナに負荷が掛かる……彼女がどれほど才覚があろうと、旅をしている中で鍛錬をやろうとするのだから、かなり大変だ。


 ただ、彼女としては最強を目指す以上は、一日でも早く……と、考えているだろう。なおかつ、この旅で共に戦うのであれば、すぐにでも強くなった方がいいはずだと考えているに違いない。


「……そうだな」


 俺は少し考えた後、


「確認だが、無理のないペースで修行、急いで修行、それぞれどのくらいの時間が必要だ?」

「ゆっくりやったら一年くらいは……それを急いでやるのであれば……そうですね、無理矢理やってもすぐ解決できるタイプのものではないので、半年くらいはかかるかもしれません」

「それは現時点での見解だな?」

「はい」

「わかった。なら今のところは無理のないペースで」

「どうして?」


 問いかけてきたのはヘレナ。そこで俺は、


「時間的なものを考慮すると、今急いでも仕方がない、というのが俺の見解かな」

「仕方がない……?」

「魔族が色々と謀略を巡らせて、各国に干渉している……それは間違いないし、ヘレナが急ぎたいという気持ちもわかる。だが、現状修行に掛かる時間を考えると……間に合わないし、余裕がある」

「……どういうこと?」


 首を傾げるヘレナ。一方でメルは理解できたようでうんうんと小さく頷くのが見えた。


「もし、今回の騒動によって戦争が起こるとしたら……現時点で既にいろいろな国に介入しているのは明白だ」

「そうだね」

「俺とメルはそんな魔族の活動を潰しているわけだが……十年前の戦争のことを考えると、魔王が復活し魔族が本気なら計略を一つ二つ潰しても戦争を仕掛けてくるだろう。そしていろいろな場所で活動しているなら、下手すると数ヶ月以内には動き出すかもしれない……なら、今急いでやっても間に合わない」

「それは……そうかもしれないけど……」

「ただしその一方で、まだ謀略を巡らせている段階なら、年単位の余裕があるだろう。俺としてはこっちじゃないかと思っているんだが……」

「もしそうなら、焦って修行する必要はないと?」

「そうだ。ただまあ、ヘレナが色々と懸念するのはわかる。戦争が起きなくとも、旅の中でツォンデルのような戦いに挑むことだってある。その時に全力戦闘に時間制限があるのは……という考えもある」

「うん」


 素直に頷くヘレナ。俺はその事実を認めつつ、


「けど、だからといって付け焼き刃のように修練をするのはよくない。というか、そんな風に無理矢理やってもパフォーマンスを出し切ることは無理だろう」

「将来を見据えて、しっかり確実にやった方がいいという話?」

「そういうこと……ただ、ヘレナが懸念することはもっともだから……メル、一つ提案をしていいか?」

「はい。いいですよ」


 俺がそう質問をしてくるのを予想していたようにメルは頷き、俺は彼女へ話し出した。


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