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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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77/93

首都を目指し

 バルドと別れた後、俺達は町へ戻りヘレナを待つことにした。その数日後には彼女がやってきて、


「改めて、よろしく」

「ああ」


 俺は返事をしつつ、彼女と目を合わせ、


「ちなみに剣の鍛錬とかは毎日するのか?」

「それはもちろん」

「……あんまり派手にやると騒動になりかねないから、全力でやるかどうかは俺の判断にするからな」

「わかった」


 大丈夫かなあ……そんなことを思いつつ、ヘレナが仲間となった。


「それで、これからどうするの?」


 ヘレナから問いかけが入る。そこで俺は改めて、

「フリューレ王国の首都であるダルディアへ向かう」

「目的は……野営の時にも言っていたっけ」

「そうだな。改めて言うと、俺達の目的は魔王に関する調査だ。この国を訪れたのはこの国なら何かしら知っているのかと考えたためだ」

「その中で今回、魔物討伐作戦に加わったと」

「そうだ。魔族が何かしら動いていることは間違いないが、その経緯とか目的は何もわからない。今回魔物討伐に加わる前の時点で俺は既に二度魔族と交戦したが、その内の一つはエルフも戦いに加わり、騒動も引き起こしていたわけだし」

「その一件と、今回の件は関係があるのかな?」

「現時点では不明。だからこそ、調べる必要がある」


 果たして、情報が出てくるのか――疑問はあるだろうが、ヘレナは何も言わなかった。俺の方針が正しいだろうという考えを持っている様子だ。


「というわけで、首都であるダルディアへ向かう……その間にヘレナの魔力制御なんかをやっていこう。まあひとまず路銀稼ぎのために仕事をしつつ……だな」

「トキヤさんとしては、特段急ぐ必要はないと思ってる?」

「調査そのものは焦っても仕方がない……というか、情報がなくてとっかかりもないし、追い立てられるように調べてもたぶん何も出てこない……もし同様の事例……例えばフリューレ王国内で魔族に関する騒動があったら首を突っ込むべきか検討するが、単なる魔物討伐とか、あるいは酒場で戦士に何かあるかと尋ねても、欲しい情報は得られないだろうし」


 そこまで言うと、俺は小さく息をつく。


「これはおそらく、広まっている噂を検証するというよりはどこか特定の場所に赴いて情報を手に入れる、みたいな話だ。魔王に関する情報……魔族に直接聞ければいいけど、そんなわけにもいかないから、国の上層部とかにまずは尋ねてみて、何か知っていないかを確認しよう」

「情報、出てくると思う?」


 と、ヘレナは首をかしげながら告げる。


「というか、魔王に関する情報でしょう? それを国の上層部だけが知っている……というのは、隠蔽しているとかいう可能性もない?」

「そういうケースであれば、俺が尋ねても素直に答えることはないだろうな。ただまあ、それならそれで何かしら反応があるはずだ」

「場合によっては敵の懐に飛び込む可能性があると」

「あまり無茶はしたくないけどな……あとは、そうだな……例えば真偽不明、もしくは具体的な物証がないため公表できないというのもある。魔王が復活した、という事実については公表したわけだけど、そこから先は情報が錯綜していて公表できないとか」

「それはつまり、フリューレ王国も魔王が復活した以外のことはわかっていない……と」

「そうだ。この場合は俺達が情報を求めに行っても無駄足になりそうだが、これまで魔族なんかと交戦した事実などを踏まえると、もしかすると未確定な情報に対しても何かしら有益なものが得られるかもしれない」


 そこまで言うとヘレナは「なるほど」と応じ、


「私達が得ている情報と国が持っている情報を組み合わせれば、何か新たな事実が浮かび上がるかもしれないと」

「そういうことだ……ま、国としてもっとも多くの情報が集まるのは中枢だ。そこに向かうのが、今回の調査で一番効果的な方法であるのは間違いない」


 ――バルドは国の上層部と話ができるのか、と俺に質問したがヘレナは何も言わなかった。勇者トキヤであるなら、国の上層部とコネクションがある……そんな風に解釈しているのかもしれない。


「というわけで目標はダルディアだ。二人の意見は?」

「異議はありません」

「同じく」


 メルとヘレナが相次いで答えたので、俺は小さく頷き、


「よし、それじゃあ出発だな……と、そうだ。ヘレナはザナオンと一緒に旅をしていた際、どんな会話をしていた?」

「唐突だね……」

「触れられたくない話題とかもあるだろ。そのあたりは事前に聞いておいた方が、険悪にならずに済むからな」

「その言い方、過去に何かあったように聞こえるけど」


 ヘレナの指摘に俺は少しだけ目を背ける。ちなみにメルも同じような反応を示した。


「……ちょっとだけ興味があるんだけど」

「まあまあ……で、何かあるか?」

「会話はもっぱら鍛錬に関することだね」

「ストイックだなあ……それじゃあメル、早速魔力の制御について歩きながらでもやっていくか?」

「理論とか教えることはできますからね……なら、始めましょうか」


 そうして、メルとヘレナは会話を始める。

 さて、新たな仲間も加わり旅の再開だ……俺は二人とともに、フリューレ王国首都を目指し、歩き始めたのだった。


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