新たな仲間
「……私は、なぜ神族があんなことをしたのかを解明したい。でもそれはきっと、同族達が色々と調べることになると思う」
ヘレナの発言に俺は頷く……まさしく、その通りだ。
「私はただ、最強になりたくて故郷を飛び出した。調査なんてやったこともないし、私が動いてもたぶん、何一つ変わらないと思う……」
彼女は何かを噛みしめるように、俺達へ語る。
「でも、私にやれることがあるのなら……考えて辿り着いた結論は、魔王に関して調査をするトキヤさんに協力すること……だと、思う」
そこで彼女は俺を真っ直ぐ見た。
「私は、トキヤさん達と共に魔族の行動を……果ては魔王復活の真実を知るために動く。それがきっと、凶行を起こした同族の原因にも繋がると思う」
「……俺は、ヘレナの意思を尊重するぞ」
と、ザナオンが彼女に向け口を開いた。
「突然同族が魔族の力を持って現れたのなら、気になって当然だ。国が調べるにしても、ヘレナだって何かした方がいいのかと思うのは至極真っ当な話だ」
「……修行を途中で放り出しちゃうけど」
「別にトキヤの下でも修行はできる……ま、コイツは指導とかそういうのに縁がないから技を見て盗むくらいしかできそうにないが」
「そこは正直、ザナオンの言う通りだな」
と、俺が続けて語る。
「ただ、魔力の制御面についてはメルが手を貸してくれる……よな?」
「共に旅をするのであれば、もちろん協力しますよ」
「なら、俺達との旅でもレベルアップはできるはずだ……剣術については、あんまり頼られると辛いけど」
俺はちょっと言い訳がましく語ると、ヘレナは小さく笑う。
「そこは期待してないから大丈夫」
「最初から期待されていないのも、それはそれでだなあ……」
「じゃあどうすればいいのよ」
俺は答えられず頭をかく。そんなやりとりを見て、今度はザナオンが笑った。
「それなりに馬が合いそうで良かった。これで性格的に相性悪くて毎日口論になるとかだったらルシールに申し訳ない」
「……喧嘩するようなら俺が引き下がるさ。あんまりワガママ言われると要相談になるけど」
「ヘレナは別に性格悪いわけじゃないから心配するな……というわけで、俺はお役御免だな」
「今までありがとう」
礼を述べるヘレナ。するとザナオンは驚いたような顔をして、
「今まで礼なんて言わなかったじゃないか。どうやら俺の修行によって殊勝な態度を学んでくれたか……」
「いや、ザナオンの修行は関係ない」
と、彼女はバッサリ斬った。
「子供とでも接するような態度だったから。私もそれに応じただけ」
「俺の方に原因があるとでも言いたいのか?」
「別に、そこまでは言っていないけど」
「お? やるか? 最後の最後にどちらが上か白黒付けるか?」
「ええ、望むところ。トキヤさんと戦って少しは強くなった自負もあるから、今日という今日は引導を渡してあげる」
「……もう遅いし、あんまり無茶はするなよ」
ヒートアップする二人に俺は横やりを入れる。とはいえ割って入るようなことはしない。なんというか、仲裁に入ろうものなら俺まで巻き込まれる気がしたので……。
――その後、両者はメルが生み出した魔法の明かりの下で最後の決闘を行った。それはまるで宴の余興のようであり、バルドを含め騎士達の賭けにまで発展。魔物討伐を果たした夜は、おかしな熱狂と共に更けていったのだった。
翌日、ツォンデル内の魔物について確認し、改めて問題ないことを確認。それで俺やザナオンといった雇われの人間は町へ帰ることとなった。
「今回の件、本当に助かった」
出発する前、見送りにバルドがやってきて俺やメルと挨拶を交わす。ちなみにヘレナはこの場にいない。一度ザナオンと共に彼が雇われた町に赴き、報酬をもらってから俺達のいる町で合流する手はずだ。
「魔族がいる可能性は考慮していたが、まさか神族だとは思わんかったぞ」
「俺も同意見だ……結果、余計に魔族の行動に疑問が出てきた。夜、寝る前とかに色々考えて、例えば戦争を仕掛けるにしても戦力が少ないから、他種族を引き入れつつ、戦力を崩していく……とか思ったけど」
「一応筋は通っているが、疑問は残るな」
バルドの言葉に俺は頷く。
「何かをやっているのは間違いないが、とにかく情報がない。今回、トキヤはフリューレ王国の騒動に首を突っ込んだわけだが、以降も情報を集めつつ旅をしていくことになるか……それで、ここからどうするんだ?」
「とりあえず王都に行って国の上層部の人に話をしてみるよ」
何の気なしに俺が言うと、バルドは眉をひそめた。
「話を通せる人間がいるのか?」
「とりあえず王都に行けば誰かしら引っ掛かると思う。ほら、二度魔王を倒した以上、顔だけは通っているからさ。まあ場合によっては王様とかに話を持ち込めばいい」
「……さすがに無理じゃないか?」
――いや、それができるんだよな。まあできる具体的な理由は絶対に喋ってはいけないんだけど。
「まあ、なんとかなるさ」
俺の楽観的な発言にバルドは呆れ顔。しかし、
「……トキヤが言うのなら、そうなのかもしれんな。では、旅の無事を祈っている――」




