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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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墜ちた神族

「一撃で、終わらせてやろう!」


 森から出た墜ちた神族は、そう宣言すると共に剣を握る右腕に魔力を集め、俺へと一閃した。まさしく電光石火の一撃であり、騎士達は捉えることすらできなかったかもしれない。

 けれど、俺は応じることができた――相手の剣を受ける。金属音が響き、腕に衝撃が伝わってくるが、刃はがっちりと噛み合いほんの僅かな時間、せめぎ合いとなる。


 神族は叩き潰すとして押し込んでくる……が、俺は一切揺るがなかった。そこで相手は眉をひそめ、


「なるほど、この力に抗えるとは、さすが魔王を討った勇者というわけか」


 その言葉を聞いて俺は……相手に目を見据え、


「お前の敗因を教えてやろうか」

「ほう?」


 小馬鹿にするような物言い。相手は魔力をさらに高め威嚇しつつ、


「聞いてやろう」

「まず、抗えるなんて言葉を使っている点だ。俺の能力を見て……力の多寡を見てそう発言したんだろうけど、そうやって発言している時点で、何もわかっていない……無知であることがわかる」

「どういうことだ?」

「……剣を受けてわかったが、お前はまあそれなりに使えるみたいだが、技術的に人間レベルで言う達人の領域には至っていない」



 俺の言葉に神族は目を細める。だが声を発しなかったので、俺は続けた。


「なおかつ、魔力を察知する能力も並程度……ヘレナの方がずっとその辺りは良いな。ここはルシールという師匠がいる差、というわけか?」

「……ずいぶんな物言いだが、果たして貴様の考えは真実か?」

「真実かどうかは、すぐにわかるさ」

「ぬかせ!」


 神族は仕切り直しとばかりに一度俺の剣を弾いた。次いで剣を握り直し横薙ぎを見舞う。

 その軌道を、俺はしっかりと捉えながら再度受けた。金属音が響き、神族は力をもって俺を押し潰そうとするが……できない。


「この力に対抗できるだと……?」

「純粋な力の総量だけで言えば、この戦場にいる中でトップかもしれないな。しかし、圧倒的な力だけでは、こんな風にいなされてしまう」


 俺は逆に神族の剣を受け流した。すると相手は苛立った様子を見せながら、さらなる斬撃を放とうとする。

 暴虐とも呼べる魔力が神族の剣へと収束する……俺はそれを見ながら、発言した。


「その剣を俺に向けたら、お前は死ぬぞ」

「死ねぇぇぇっ!」


 こちらの端的に発言に対し、神族は怒りを込めた斬撃を繰り出した。一方でこちらは扱く冷静に、斬撃の軌道を見極め――瞬時にかわした。

 次いでこちらの剣戟を相手の体に当て――吹き飛ばした。鮮血が舞い、苦痛に歪む顔を見せながら神族はどうにか体勢を立て直し、距離を置く。だが俺の剣を一度受けた結果、魔力は大きく減少した。


 こちらは追撃を仕掛ける。神族は俺の剣――その威力を認識したか、警戒の眼差しを見せる。

 次食らえば、まずいことになる……そんな意図と共に、剣を構え直し迎え撃つ姿勢となる。先ほどまでの傲慢な気配は消え――瞳の奥に、俺は確実に恐怖が宿っていることを理解する。


 間違いなくそれは、動きを鈍らせる効果を与える……俺が続けざまに一閃した剣は、威力よりも速度を重視したもの。神族は最初反応できていなかったが、刃が届く寸前にどうにか剣をかざし、受けた。

 だが俺は即座に剣を引き戻し、二の太刀を繰り出す……神族は、この剣を完全に見えていなかったらしい。身じろぎすらできないまま刃を身に受け――そこから俺は三度、神族へ向け剣を叩き込んだ。


「が、あっ……!」


 神族は逃れようと後退する。それと同時に魔物をけしかけて時間を稼ごうとする。疲弊しているがまだ魔物の指揮権は維持できている……が、大きく減った魔力から考えると、風前の灯火だろう。

 俺は迫る魔物に対し剣を振り、瞬殺する。神族は目を見開き、さらなる魔物を突撃させようとしたが――それよりも早く俺は相手に迫り、その体へトドメの一撃を加えた。


「――――」


 神族は声にならない声を上げた。次いで倒れ込み、剣まで取り落とす。

 そんな相手の顔を、俺は覗き込む……神族の顔は驚愕に染まっていた。


「……馬鹿な、この力は、圧倒的だったはず」

「力の大きさで勝利できるんだとしたら、俺は魔王にやられているし、今頃世界は魔王のものになっているさ」


 こちらの言葉に……神族は今更気付いたかのような顔をした。そんな相手へ向け俺は、


「先ほどの攻防で、俺がなぜお前の剣を受けられたか……そちらは理解できていないだろう。だからこそ、負けた……それが答えだ」

「……ぐ」


 何か言おうとした。だがそれすらできないまま……名すら聞いていない神族の体は朽ち果て、塵へと変じ消え失せた。

 俺はそれを確認した後、周囲を見回す。指揮官を失った魔物達は……まだ突撃を続けている。


 どうやら命令系統は維持されている……というか、一度行った命令を、変更されるまでは維持するのだろう。俺はなおも森からやってくる魔物へ視線を送りつつ、


「さて、頑張るか」


 声と共に、こちらへ迫る魔物へ向け剣を放った。


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