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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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森の中の戦い

「自分の実力に相当の自信があるみたいだが、俺はそちらの言葉をそっくり返そう。魔王を討ち果たした実力、その目で確かめてみるか?」

「いいだろう……ならば後悔させてやろう」


 魔物の包囲が徐々に狭まっていく。状況的に逃げ場がない……ヘレナはそれがわかっているためか、先頭に立ち神族を鋭く見据えている。

 おそらく同族ということも、前のめりになっている理由だろう……これなら――


 考える間に魔法使い二人が俺達の左右に。それで神族も警戒したか目を細めた。


「いいのか? 私ばかりに集中しては周囲の魔物に食い殺されるぞ?」


 なおも魔物達が近づいてくる。神族としては周囲に気を取られている間に、俺達のことを仕留めるという目論見なのだろう。

 包囲しながらの交戦は非常に危険であり、このまま戦えばどうなるか……そうした中でヘレナは魔力を発し、目前にいる敵を排除しようという動きを見せる。


 魔力を解放し、全力戦闘を仕掛けるつもりなのだろう……魔物がなおも接近してくる。そこで――動いたのは、魔法使いだった。

 俺から見て右にいる魔法使いが同時に、神族へ向け魔法を放った。魔物を一撃で倒せる光の槍ではあるが、


「効かん――!!」


 声を発しながら神族は薙ぎ払う。相手が握りしめる剣が光の槍に触れ――パアン! と破裂音に加えて閃光が生じた。

 その光は、一時周囲を照らし視界が真っ白に染まる。しかし魔力で魔物や神族が動きは捉えている。


 どうやら神族は動いていない……そこで俺は、剣を鞘に収め、突如近くにいるヘレナをひょいと抱えた。


「……へ?」


 虚を衝かれた彼女は間の抜けた声を上げ――その間に俺は、全速力でこの場を逃げ出した。


「え? え? え――? ちょ、ちょっとトキヤさん!?」


 直後、今度は爆音が聞こえた。光の槍を放った魔法使いとは違う方が、魔法を放ったようだ。木々を振動させるような轟音ではあったが、神族には大して効いていないだろう。

 けれど、最初の魔法の時点で受ける構えを示した様子だったので、動いていない……その間に一歩遅れて魔法使い二人とザナオンも動き出す。具体的に言えば……俺の後を追い、逃げ出した。


「――貴様ら――!」


 そこで神族の声が聞こえた。決戦のつもりが一転、全力で逃げる俺達を見て怒ったらしい。

 でもまあ、ここで戦うなんて愚の骨頂……襲い掛かってくる魔物は、ヘレナを抱えながらでも剣を振って対処。そして俺は易々と包囲を突破。そこにザナオン達が続いた。


「ね、ねえっ!? 逃げるの!?」

「わざわざ相手に有利な陣地で戦う必要ないからな」


 俺はそう答えつつ、一目散に森の中を駆ける。


「相手が神族であることはわかった。例え今から逃げ出しても、今から陣地へ戻ってメルに報告すれば敵を追うことはできる」


 ――この世界に転移魔法なんてものは存在しない。よって、俺達の行動に対しならば逃げると決断をしたとしても、メルの索敵範囲から逃れることはできない。


「もし追っかけてきたら、森の外で迎え撃てばいい。逃げたらメルの索敵魔法によってどこまでも追い掛ける。敵の総大将がわかった以上、強引に戦う必要性はどこにもない」

「――ま、ヘレナがいて助かったぜ」


 と、気付けばザナオンが隣にいて声を掛けてきた。ついでに言うと、魔法使い二人も強化魔法によって俺達にきちんとついてきている。


「ヘレナが戦う気満々の様子を見せていたから、ヤツも逃げず決戦になると考えていたはずだ。そこで魔法を撃って視界を塞ぎ、全力で逃げる……包囲する魔物が懸念だったが、魔法による目くらましが効いていたっぽいから、動きも鈍かった。なおかつ敵は迎え撃つ腹づもりだったから、楽に逃げられたってわけだ」

「……もしかして、戦おうと思っていたのは私だけ?」


 問い掛けに俺は頷く。


「そうだな。ちなみにヘレナ以外とは会話をする必要はなかった。視線とか発する気配ですぐに理解できたよ」

「そもそもトキヤが逃げる気満々だったからなあ」

「ザナオンは状況に応じて判断、と事前に言っていたが……魔物の包囲がたいしたことなかったし、あの状況なら逃げ一択だった」


 応じる間に――俺は後方を一瞬だけ見やる。そこで察する……どうやら、追ってきている。


「向こうは怒り心頭だな」

「わざわざ森の外へ出る気なのか? だとしたら決着は遠くなさそうだな」

「おそらく周囲にいる魔物達全てを率いて攻撃を仕掛けてくるだろう。向こうが森に出るまでに準備をしないと」

「バルドが上手くやるだろ……肝心の神族だが、どうする?」

「俺が戦うよ。さっきの会話の間に能力もおおよそつかめた。ヘレナ、悪いけどここは俺に花を持たせてくれ」

「勝てそうか?」


 ザナオンの問い掛けに、俺は口の端を少しつり上げ、


「神族が魔族の力を得た……確かに脅威だけど、ザナオンはわかっているだろ?」


 俺が問うと彼は「そうだな」と返事をして、


「なら、頼んだ……ヘレナを含め、他の人間は魔物達を討伐する……さて、いよいよ作戦も終盤だ。気合いを入れ直すとしようぜ――」


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