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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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強行突破

 森の手前に辿り着いた時、入り込む面々は互いに顔を見合わせる。俺は各々の表情を観て、覚悟が決まった様子であるのを確認し――森へ入り込んだ。

 その直後、森の中にいた魔物達が一斉に咆哮を上げた――直後、森の外にいる騎士や魔法使いが反応する。


「援護します!」


 そう告げると同時に、光の槍が俺達の後方から森へと放たれた。それに直撃した魔物はあっさりと消滅し――途端、ここまで待機していた魔物達が暴れ始め、中には森の外へ出て騎士へ攻撃を始める個体も現れる。


「さっきまで魔法を撃っても避けるだけだったんだがな……!」


 俺の横にいる魔法使いが叫ぶ。その変貌ぶりに驚愕しているらしい。

 この状況下では、一度森の外へ出て様子を見るのも一つの手だが……森に入った時点で状況判断はザナオンの役目だ。


「ザナオン、確認だがどうする?」


 俺は近づく魔物を切り払いながら問う――森の中で戦闘に入るわけだが、このくらいはまったく問題ない。


「当然進む……というか、わざわざ森に引きこもっていたのに、俺達が入っただけでここまで反応するなんておかしい」


 そうザナオンは言う――うん、俺も同じ事を思った。

 魔物の挙動としてはどう考えても変だ……これはいよいよ森の奥に魔物を指揮する存在がいる、という推測が現実味を帯びてきた。


 そいつを見つけ出して倒せば、状況を大きく変えられるかもしれないが……現段階ではあくまで可能性。なおかつ調査である以上は、とにかく推測を事実にするために動かなければ。


「魔物との交戦は最小限に! 最初の目的地へ突っ走るぞ!」


 ザナオンは叫び、俺が先導する形で森を突き進む。


「俺は指示に従うからザナオン、頼むぞ!」

「任せとけ!」


 返事に俺は前方の魔物を倒すことで応じる。そしてヘレナは横から仕掛けてくる魔物を担当し、ザナオンは彼女と並んで彼もまた側方を警戒。

 そして魔法使い二人は片方は後方に注意を払い、もう片方は俺達の援護……森は所々太陽の光が差し込むくらいのもので、木々の間に隙間も多い。大木の根っこなどに足を取られないよう気をつけながら、魔物を迎撃しつつ進んでいく。


 森の奥にいる個体も、強さは最初に交戦した個体とさほど変わりがない様子……これなら魔物を倒しつつ調査はできる。よって、俺はザナオンの指示に従いひたすら突き進む。

 時折魔物は数体まとめて襲い掛かってくるが、それでも俺は全てを薙ぎ払い――やがて最初の目的地へ到達する。


 そこは、小さな泉……メルが魔法で調べ、怪しい場所と示したポイントの一つだ。

 その水面を見れば、異質な状況であるとすぐわかる。森の中で動物達の渇きを癒やすはずの泉から、異様な魔力が漂っている。


 間違いなくここが魔物の発生源の一つだ……そう思いつつ、俺は泉を注視。透明度は高く、どの程度の深さなのかも確認できる。

 そうした中、俺は見つけた……泉の中に、魔力を発した紫に輝く物体が存在するのを。


「もしかしてあれが……魔物の発生源か?」


 それはどうやら魔力を含んだ鉱物……魔石、と呼ぶべき物。どこかの山とか鉱山から採掘されることが多く、岩や石が魔力を含み濃度が上がると、普通の石とは比べものにならない魔力を溜めることができるようになる。そういう物を魔石と呼び、魔法道具の一種として流通している。

 道具として使う場合、魔石から魔力を引き出して瞬間的に魔力量を増やし、魔法の威力を上げる、といった扱われ方をする……魔物などとの戦いではよく使われるお助けアイテムの魔石だが、泉の中にある物はひと味違った。


 というのも、大きい……石、じゃなくて岩と形容するような、円錐に近い形状をした、明らかに泉の中に存在してはいないはずの物。


「どう考えてもどこからか持ってきて泉の中に放り込まれているね」


 ヘレナが言う。すると一人の魔法使いが俺の横に立ち。


「水底から魔力を発している。勇者トキヤの見解は間違っていなさそうだ」


 そう言うと彼は手をかざした。


「破壊する」


 言うと同時、問答無用で光の槍が放たれた。刹那、泉の中へ入り込んだ魔法は勢いそのままに魔石を刺し貫く。

 直後、光の槍が爆ぜて盛大な水しぶきが上がった。突然の行動であったため、せめてもう少し確認してから……と、思ったが、周囲の状況がそれを許さなかった。


 気付けば泉を包囲するように魔物がいる。悠長にしていると、あらゆる包囲から攻撃されて面倒なことになる。


「……魔力が喪失したな」


 そして最後にザナオンの言葉。彼の言う通り、魔法使いの魔法によって魔石は砕け、周囲にあった澱んだ魔力はその多くが消え失せた。

 もし、他の怪しい場所も同様に魔石があるのなら……そう考えた時、


「よし、次の場所だ。強行突破するぞ!」


 ザナオンが言う。同時、俺は思考を中断していよいよ襲い掛かってくるであろう魔物へ先んじて仕掛け――瞬殺。勢いを維持し、魔物の包囲を強引に突破して森へと突入した。



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