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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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戦場の変化

 状況が変わったのは、作戦を開始してから一時間が経過した時だった。

 俺やヘレナにとってはさほど疲労しないレベルではあったが、周囲にいる兵士や騎士の動きは少しずつ鈍り始めていた。


 そのタイミングで後続から騎士や兵士がやってくる……後詰めで疲労が強くなった者達から、一度陣地へと戻っていく。ここが彼らにとって一番負傷しやすいところ。後退するタイミングで魔物に襲われたらひとたまりもない。

 よって俺とヘレナは援護に回り、ひとまず討伐隊の面々が入れ替わったタイミングで少しだけ休憩に入った。


「……魔物の勢いは少し減ったけど、それでも森から出続けているな」


 俺が言うと横にいるヘレナは同意するように頷き、


「森にいる魔物の気配は少なくなっている……でも、奥から新たに出現しているような雰囲気もある」

「さすがに減ったそばから増えているわけじゃないと思うが、それでも継続的に魔物は生まれているのかもしれないな」

「……魔物の発生原因をどうにかするってことは無理なの?」


 疑問がヘレナの口から発せられる。確かにそれができれば現状を打破できるわけだが――


「そもそも、具体的な発生源があるかどうかもわからない」

「どういうこと?」

「魔族なんかが故意に魔物の生成場所を作っていなければ、おそらく精霊が出現していた場所の魔力が汚染して魔物の発生源になっている可能性がある」


 その言葉にヘレナは押し黙る。


「もしそのケースだったら、魔物の発生源を潰すことは精霊の発生源を潰すことにもなる」

「……発生源が無事なら、魔物を全て倒せば元通りになって精霊が生まれる?」

「森が再生されて元通り、というのは長い時間必要だとは思うけど、精霊が生まれる場所なんかを残していれば、あるいは……ただまあ、人命を優先すべきだと思うし、ここが聖地なのであれば、人の手を入れるという選択肢もある」

「……それが無難な結論なのかな」


 ヘレナの言葉に「そうかもな」と応じつつ、俺はここからどうするか考える。

 戦いが始まって一時間ほど。騎士や兵士達は後詰めと後退し、敵を減らし続けていることで士気も高い。だがその一方で森へ踏み込むのは現状では危険すぎる。


 一時間で交代というのはいくらなんでも早すぎるのでは……という見解があるかもしれないが、これは兵士や騎士の能力によるものだ。最初の時点で魔物の数はかなり多かったのもあるし、俺やヘレナなら対処は難しくない魔物でも、彼らにすれば一体一体が全力で応じなければいけないほどの強さ。交戦直後は魔物の数も多いこともあって、限界が早々に来ても仕方がない。

 後退した騎士達は、魔物の数もある程度は減っているため、長時間戦えるはず……そんな風に考えた時、騎士が森から出ていた最後の魔物を倒した。


 ここで選択に迫られる。森の中に魔物はまだ多数いる……が、警戒度を上げて出てこなくなった。ならばこちらが仕掛けるか、あるいは他に何か――

 その時、俺は背後から気配を感じ振り返る。前線までバルドが来ていた。


「陣地から出るのはまずいんじゃないか?」

「潮目が変わったからな。状況をこの目で確認したい」


 言いながらバルドはじっと森へ視線を送る。


「魔物が動かなくなったか」

「バルド、ここからどうする?」

「……ザナオンがいる場所からも先ほど連絡があり、森から魔物が出てこなくなったらしい。この調子だと他の場所も同じだろう」

「数を減らしたから、少し様子を見るという選択ができなくもないが……」

「ここで一度退却しても、数が増えて元通りだろう。次の一手を打たなくてはならん」


 バルドは断言。そこで、


「しかし、森の中に入るとなれば……」

「今の戦力では辛いか……魔物を誘い出せればいいんだが」

「実を言うと、交代要員にはそれに関する道具を持たせている」


 バルドが言う。俺は彼へ視線を送り、


「道具を?」

「森の中で戦うのは危険すぎるし、何より経験者が少ないことも考慮し、最初から想定していない。その代わり、魔物をおびき寄せる効果のある道具を用意し、動きが鈍ったのであればそれを使い森の外へ誘う予定だったのだが……」


 バルドは一度騎士達へ視線を送り、


「道具を使用しているみたいだが、それでも魔物は出てこなくなった」

「……森の中に魔族がいる可能性が高まったんじゃないか?」

「ああ、そしてそういうことであれば余計に森の中に入るのは敵の思うつぼだ」

「メルから何か連絡は来ているか?」

「調査中とのこと。魔物の数は大きく減っていると語っていたため、そこは朗報だがやはり予想したとおり森の中で魔物が新たに生まれている兆候があったと」


 ならば、どうするか……言葉を待っていると、バルドは次の作戦について語り始めた。


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