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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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魔力の刃

 俺は両足を強化し一気に森へと接近。それに追随するようにヘレナが続き、その後方に騎士や兵士達が続く。そして俺の動きに魔物は反応し、列を成した魔物達が一斉に襲い掛かってくる――


「ふっ!」


 俺は剣に魔力を込め、一閃する。まだ魔物と距離はあるのだが、刃に収束した魔力が刀身から離れ、それが三日月のような形となって魔物へ飛来していく。

 色は白銀で、言わば魔力による刃……魔法で主に行える遠距離攻撃を、魔力練り上げれば戦士でも可能。もっとも、刃を用いて相手を斬るわけではないため当然威力は低くなるのだが――


 俺の斬撃が魔物に直撃すると、一気に爆ぜた。白い魔力が轟音と共に拡散し、巻き込まれた魔物が一気に消滅していく。

 直撃せずとも余波だけで十数体の魔物を倒すことに成功……生き残った魔物も吹き飛ばし、魔力の刃が駆け抜けた場所、その直線上にいた魔物は一切合切消え森への道すら現れる。


 しかし、即座に森から新たな魔物が……なおかつ、横に広がった魔物達に対し一撃ではさすがに倒しきれず、左右から俺やヘレナへ向け押し寄せてくる。

 俺は次の刃を放とうとしたが、それより先にヘレナが動いた。


「は、あっ――!」


 声と共に彼女は俺が放ったものと同じような魔力の刃を剣先から解き放った。それは一番近く似た魔物に直撃すると、またも轟音。俺とは異なり色は青く、余波の影響は俺よりも広がり、多数の魔物を飲み込んで滅ぼすことに成功した。


「さすがだな」

「……別に、誇るようなことでもないでしょ」


 俺のコメントにヘレナは肩をすくめる。


「あなたもできるし、ザナオンだってできる」

「だとしても、これだけの威力を出せる使い手はそう多くない――」


 別所で轟音が聞こえ始める。さらに爆発音や、落雷のような音も……魔法が使われ始め、魔物の数を減らしている。


「さて、魔物の強さはそこそこと言ったところだが……」


 俺は突撃してきた魔物を避けつつすれ違いざまに一閃。それで一体倒しつつさらに魔力の刃を放つべく構える。

 刹那、今度は俺とヘレナの刃が同時に飛んだ。再び轟音が生じて、森手前にいた多数の魔物を飲み込んで、数を減らす。


 しかし、それでも断続的に森から魔物が姿を現す……そこに、騎士達が到着し交戦を開始。槍や剣で牽制しつつ、後方にいる魔法使いで魔物を倒していく。

 騎士の中には単独で魔物を倒せる者もおり……うん、このまま魔物の強さが変わらなければ、戦線をある程度の時間維持できそうだ。


 陣地には後詰めの部隊もいることだし……俺はここで森を見据える。現れる魔物を蹴散らしつつ、森を注視して軍勢の数などを確認できないか探り始めた。


「ヘレナ、森の中で何か違和感とかあったら言ってくれ」

「怪しい場所ってこと? 正直今の段階だと、どこもかしこも魔物だらけという印象しかないよ」

「その中でも変な部分とかはあるはずだ。もしかしたらそれが討伐を果たす糸口になるかも」

「わかった、色々と私も探ってみる」


 彼女の返答にこちらは頷き返しながら魔物を倒していく。騎士や兵士も順調に魔物の数を減らしているが……他の場所でも、同じように順調なのだろうか?

 どこかで人間側が負ければ、そこを起点として形勢が一気に魔物側に傾く可能性だって存在する……さすがに俺が縦横無尽に活躍する、なんてのは難しいので頑張ってもらうしかないのだが――


「他の場所が心配?」


 ふと、ヘレナが俺へ向け問い掛けてきた。


「現在はどこも順調に魔物を倒せているみたいだけど」

「わかるのか?」

「人間の魔力はザナオンと一緒に旅をしていて把握できるようになったから」


 へえ、それなら……彼女へ視線を送っていると、解説が入る。


「魔物は森からゾクゾクと出てきているみたいだけど、それを倒せている……少なくとも人間側の陣地に魔物の気配はない」

「ひとまずは順調か……問題は数がどれだけ減っているかどうか。今の調子で魔物を倒しても、森からの気配が減らなければ……」

「相当数が多い。もしくは現在進行形で魔物が増えている」

「森の中を探っているけど、俺にはまったくわからないからここはメルの活躍が鍵だな。おそらく森の中について調べているだろうから、その調査が終わるまでは持ち堪えないと」

「その時間くらいはありそうだけど」


 会話をする間にさらに魔物が森から出てくる。しかし最初の勢いはなく、俺とヘレナは魔力の刃を使うことなく、敵を倒すことに成功する。

 列を成していた最初の魔物を倒して以降は、断続的に森から出てくる魔物を対処するだけなので、比較的容易に倒せる。ただ、それでも森から発せられる気配はあまり変わっていないように思える。


 状況が変わらなければ、どこかで人間側が対応に迫られるだろう。長期戦になって疲弊すればまずいことになる。余力がある内に次の一手を打たなければ……そう考えつつ、俺はさらに押し寄せる魔物を倒し続けた。


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