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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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密談

 オルミア郊外にある小さな森の中には小型の魔物が生息しており、俺とメルはその気配を捉え一体ずつ駆除していく。

 俺と彼女なら、さして時間は掛からない。まあ話し合いの口実に用意した仕事なので、元々俺達が出向くほどのものではないが……とりあえず、エルフの里の中が政治的な言う意味でだいぶドロドロとしてきたので、気分転換にはなる。


「なあ、メル」


 俺は小型の魔物を倒しながら彼女へ尋ねる。


「今回の事件、どのくらいで解決すると思う?」

「わかりません。首謀者の尻尾をつかむのは……短期間では難しいように思います」

「ミストというエルフが首謀者である可能性は低いか?」

「私はそう思いますが、仮に首謀者だとして……それを証明することも、あるいは首謀者でないことを証明するのも大変ではないかと」


 なるほどな……状況を一気に変えることができる何かがあればいいけど、そう都合よくはいかないかな?


「とにかく情報がないよな」

「はい、情報を手に入れるためにエイベル様が動いているわけですが……果たして、調査によってどこまで情報を得られるか」

「……解決した上で、旅を再開したいところだな」

「はい、私としてもできれば……」

「俺も同意するから心配するな……まあ、問題は滞在費だけど」

「さすがにエイベル様が負担すると思いますので……と」


 メルは一つ呟き立ち止まる。俺も立ち止まるとそこは小さな森の中に存在する木々のない空間。

 魔物の気配はなく、さらに言えば周囲を探っても小型の魔物すらいない……駆除できたかな、と思いつつ俺はメルへ首を向け、


「魔物の討伐は終わりかな?」

「はい、そのようですね……では、帰りましょうか――」


 そう彼女が述べた時、突如口が止まった。何事かと思っているとメルはあさっての方向へ目をやり、


「……同胞が近づいてきます」

「ここに?」

「森の中を進んでいるようですが……どうしますか?」


 ――俺はその言葉に対し眉をひそめた後、


「……隠れてやり過ごそう。メル、魔法は使わないように」


 その指示にメルは従い、俺達は気配を消しつつ茂みの奥へ隠れた。


 夜襲の時と同様に魔法は使わない。魔力を発せば気付かれる可能性がある……刺客であるエルフ達が気配を消して気付かなかったことを踏まえると、エルフ達は魔力による気配探知に頼り過ぎているような気もする。

 よって、魔法を使わない方がバレない……そんな風に思っていると、やがて森中にある小さな空間に男性エルフがやってきた。それは、


「え……」


 メルが小さな声を上げる。だがすぐさま声を殺し、一方で俺はじっと茂みの奥で息を潜め、当該の存在を見据える。

 現れたのは、ファグ――さらに言えば、後方から別のエルフがやってきて、どうやらここで密談をする様子だ。


 ――これも、メルが先ほど言っていた運の良さだろうか。おそらくここで繰り広げられる会話は……半ば予期しつつ、俺は彼らの言葉を待つ。

 そして、


「……状況はどうだ?」

「作戦が失敗し、かなり悪い。まだ調査の手は伸びていないし、証拠も隠滅しミストの方へ調べるよう仕向けたが、こちらに来る可能性も十分ある」


 ファグの問い掛けに別の男性エルフが答える……こうして会話をしている以上、おそらく首謀者――あるいは、それに近しい場所にファグがいるのだろう。

 ならばどうして彼が……という疑問はあるのだが、まあそこはひとまず置いておこう。捕まえさえすれば、事情はいくらでも聞けるわけだし。


「逆転の道はあるか?」


 正直、ファグにとってかなりまずい状況ではあるが……明確な証拠が出ているというわけではないし、俺達もここで密談をしているだけで捕まえることはできない。

 さて、どうすべきか……思考する間にも話は進んでいく。


「現状、確たる証拠は渡していない。エイベルは調査をしているだろうが、少なくともそれで足がつく可能性は低い……が」

「俺が勇者トキヤに接触したため、その辺りの情報がエイベルに渡っていると考えるべきだろう」


 ファグは言う……状況的に失態と言うべきものではあるのだが、相手の男性エルフはその点について言及することはない様子。


「いずれ刃を突きつけられるのは確定だが……どうする?」


 ファグが問うと、男性エルフは少し間を置いて、


「現状では、おとなしくしてやり過ごすというのが最適解のようにも思えるが、実際は調査が進む以上、ただの時間稼ぎにしかならない」

「つまり、先手を取ると?」

「そうだ」


 まだオルミアのどこかで何かをするつもりなのか……? 疑問に思っていると、男性エルフは話を進めていく。


「手がないわけじゃないのはそちらもわかっているだろう? オルミア自体に大きな傷を負わせてしまうのは納得がいかないかもしれないが、状況的にはどうしようもないことはファグも理解できているはずだ」

「……そうだな」


 肯定するファグ。ふむ、これは止めないとまずそうな話だな。


「しかし、準備が必要だろう。隠れ家の方には――」

「そこでは、既にヤツが動いている」

「……信用できるのか?」


 ファグが問う。それに男性エルフは頷き、


「ああ、裏切りはしないだろう。向こうもある意味窮地ではあるからな」

「……わかった。ならそちらの方針に従うとしよう」


 どうやら、大きな山場が待ち受けているらしい……俺は彼らの会話を聞きつつ、頭の中でこれからのことを考え始めた。


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