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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第一話

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洞窟調査

 翌朝、俺はメルと共に宿場町を出て調査対象の洞窟へ向かった。小高い山の麓近くにあり、その手前には小さな森。よって俺とメルは周辺の調査もついでに行う。

 といっても、索敵系の魔法はメルがやっているんだけど。


「メル、どうだ?」

「……出発前に確認した位置に存在する洞窟周辺に気配があります。ただそれ以外は特に脅威はありませんね」

「じゃあ魔物を倒して終了か……魔物の巣というが、数はどうだ?」

「十数体くらいでしょうか。姿形は間近で確認しなければわかりませんね」

「ならまずは確認だな」


 というわけで、迷いなく山へと進んでいく……巣があるとはいえ、森の中は穏やかで魔物の影響は少なそうだ。


「話を聞く限り」


 歩いているとメルが話を始める。


「魔物が巣を形成したとはいえ……子供を生み出すような特性を持つ魔物がいるだけのような気がしますが」

「それならそれで魔物を倒して終わりだ。けれどもし違っていたら……」

「魔族の仕業だと考えているのですか?」

「あくまで可能性の話だけど、もしそうなら……」


 それ以上は言わなかった。ただメルも理解している。

 もし、魔物の巣が魔族の仕業であるなら――俺が先日倒した魔族の手によるものなら、ヤツが色々やっていたということになる。けれど違っていたら――


「メル、先日倒した魔族の力が今回の魔物に付与されているかどうか、確認できるか?」

「分析はしているので問題なくできます。仮にそうであれば、かの魔族がこの国で悪さをしようとしていた、ということですね」

「ああ、そういう見方で間違いない」

「魔王が復活したことで、戦争準備を始めたということでしょうね」


 彼女のコメントに俺は沈黙する……確かに普通に考えたらそういう風に解釈できるのだが――


「……ともあれ、まずは現地へ。そこで結論を出そう」


 俺は言いつつ剣を抜く。戦闘態勢に入りつつ――いよいよ洞窟近くへと赴いた。






 ルークが語っていた洞窟は、山の麓にぽっかりと空いた穴のようであった。

 それほど深くはないと聞いていたが、洞窟の入口について横幅が広く、漆黒が顔を覗かせ近づくのも躊躇われるくらいの雰囲気を出していた。


 そして、魔物の気配だが――


「メル……関係なさそうだな」

「はい、先日倒した魔族の気配はありません」


 メルはそう断定。そして魔物の姿も確認。狼のような姿をした漆黒の魔物……なのだが、特徴的な部分があった。

 それは、鎧のような物を着込んでいること……いや、正確に言えばそれは魔物の体の一部ではあるのだが、外皮と呼べる部分が金属のような物で覆われているように見える。


 安直だけど、名前を付けるならアーマーウルフとか、そういう感じだろうか……で、ああした特徴を持つ魔物は、自然発生では生まれにくい。もちろん生まれる可能性はゼロじゃないが……。


「魔物について、どう考察する?」

「……見えている魔物については、自然発生の魔物とは少し雰囲気が違いますね。魔族が生み出した尖兵と断言するのも難しいですが……」

「どういう個体にせよ、巣を形成している時点で様子がおかしいようだな」

「はい、そこは間違いないでしょう」


 メルは表情を引き締める。普通ではないことが起こっている……それを認識し、強い警戒をしている様子。

 一方で俺はこういう可能性を予見していたので、動揺などはしていないけれど……、


「数は十数体と言っていたな? もしそれが一斉に来るとしたら、対処できそうか?」

「総攻撃をしてくる可能性は低いですが、そうしたケースを想定すると……援護が必要でしょうか」


 メルはそう呟いた後、何か気付いたように、


「トキヤ、もし総攻撃が来たならあなたの技で対処すればいいのでは?」

「技……ああ、あれか」


 十年前や二十年前に戦っていた記憶を思い起こす。

 俺が手にした剣には、技がいくつか搭載されていた。技を放つことをイメージすれば、剣が魔力を発し俺が考える通りに技を使用することができる。


 二十年前、勇者として活動していた際、まずやったことは剣に秘められた力を引き出し、技を瞬時に扱えるようにすること――魔王と戦った時と比べればパフォーマンスが落ちているのは間違いないが、それでもちゃんと戦えることはわかった。

 よって、技も使えるはず……そしてもし、十数体の魔物が一斉に襲い掛かってきたとしても、俺には対処できる手段がある。


「メル、魔物の強さは?」

「先日の魔物と大差ないかと」

「よし、なら魔物の様子を見つつ洞窟へ近づこう」


 俺の言葉にメルは頷き、俺達は少しずつ洞窟へ接近していく。魔物の気配が明瞭となっていくが、洞窟周辺から遠くに行く様子はない。

 そして、俺が洞窟の入口に立った時――威嚇のようなうなり声が聞こえてきた。それがいくつも重なり、今すぐにでも俺へと攻撃してくるような雰囲気さえあった。


 俺は静かに戦闘準備を始める。呼吸を整え、右手に力を込めて魔力を流し――それで準備は完了し、俺は剣を構える。

 その直後だった――メルが洞窟内を照らすための魔法の明かりを生み出した瞬間、視界に入った魔物達が、一斉に襲い掛かってきた。


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