旅の終着点
そして天王会議二日目に、俺達の下へ天王の使者が訪れ、正式に手を組むこととなった。
とはいえこれは公にするものではなく、あくまで情報収集などの間接的な協力。とはいえもし魔族と事を構えるのであれば、連絡してほしい――とのことで、戦力的にも援護がも会える可能性も含んでいる。
俺としては上々の成果……早速魔王の下を離れた魔族に関して調査を依頼し、使者はそれを受理した。
これで、天王会議でやることはほぼ終了したと言っていい。天王達とも話をしたし、もうロードガーデンを離れても良いのだが――まあさすがに、会議が開催する間は滞在することに。
「とはいえ、大通りの人混みを考えると外に出るのも億劫になるわね」
と、ヘレナは言う――廊下で偶然顔を合わせ、窓の外を見ながら話をすることに。
時刻は昼で、俺としてもやることもないので暇を持て余しいっそのこと寝るか、と思っていたタイミングであった。
「トキヤさんも外には出たくなさそうね」
「目的もなくうろつくのは勘弁願いたいかな……そっちは部屋の中にいてストレス溜まってないか?」
「この期間中にも色々とやれたし、まあ不満はないかな……体を思いっきり動かしたいとは思うけど」
「ロードガーデンを出るまで我慢してくれ」
そう言いつつ俺は――ヘレナへ尋ねる。
「……成り行き次第では魔王の城へ踏み込むことになるかもしれない。その辺りは大丈夫か?」
「あなたと一緒に旅をする段階で、既に心づもりはできている……あなたは話し合いで戦争のきっかけは作りたくないと言っていたけど、魔族次第ではそうなる可能性があるってこと?」
「今の魔族は魔王という絶対的な君臨者がいない。そしてフリューレ王国で攻撃を仕掛けていた魔族の指揮をしていた存在……その考え次第で、いくらでも話が転がっていく」
俺はそう言いつつ、小さく息をついた。
「正直、俺が動かずとも戦争が起きるかもしれない……その中で、俺が動くことによって騒動が巻き起こるのは避けたいんだが……先も言った通り今魔族を指揮する存在が誰なのか不明である以上、探り探りやるしかない」
「なかなか大変そうね」
「情報が得られればだいぶ展開が変わってくるんだけどな……理想を言えば、魔王の城に踏み込むことなく詳細をつかむことだが」
「私もなんとなく予感がする。どういう経緯にしろ、魔王の城へ踏み込むと」
俺は小さく頷いた……もう一度、あの場所へ向かうことになる。きっとそれが、旅の終着点となるのだろう。
正直、魔王の城は俺にとってさして思い入れがあるわけじゃない。決戦の場ではあるが、別に魔王の城で暮らしていたわけでもないし。
だが、あの場所が俺にとって特別な場所であることは間違いない……あの場所に再び舞い戻るということ自体、勇者として何か運命的なものを感じる。
ただ、外観は同じにしても中身がどうなっているか……ただ、魔王の城へ踏み込んだからといって全てが終わるかと言われると、わからない。
首謀者が別の場所にいる可能性も十分あるし……でも、
「魔王という存在が復活したと、天王達は一度公表した。敵が何者なのか不明ではあるが、もし魔王が復活していない……偽物の魔王と言うべき存在がいるとしたら、それはもしかしたら魔王の城、かもしれない」
「その場所に拠点があった方が、魔族に指示しやすいから?」
「それもあるだろうし、あの場所ほど秘密を隠しやすい所はないかもしれない……魔王の城は城下町も存在しているが、魔族達が入るようなことはしていなかった。許可なく踏み込むことはできない、魔族達の聖域とも呼べる場所……魔王の城はそういう意味合いだってあるはずで、だからこそ、今の魔王がどんな存在なのかを同じ魔族でも隠し通せている……かもしれない」
そう結論を出した時、ヘレナも頷いた。
「そうだね……天王達だって、情報収集をしているけど、何もつかめていないとしたら、絶対にバレない場所に何かを隠している、ってことかな」
「可能性はありそうだ。ま、今言ったことはあくまで推測でしかない。俺としては、魔王の城へ踏み込むことなく真相をつかんでさっさと旅が終わる展開を望みたいところだな」
「そんな上手くいくとは思えないな」
ヘレナが言う。俺はそれに対し苦笑し、
「願望を口にしたっていいじゃないか……ま、今後の方針は明確になっているんだ。会議は終わるまではゆっくりしよう。といっても、後数日だけど」
「ちなみにトキヤさん、メルとはどう?」
「……さすがに、こんな状況で二人して出かけるのはまずいだろ」
「それは私達もわかってる。けど、それならそれでやれることはあるんじゃないの?」
「……まあ、会議が終了するまでには何か考えておくよ」
そう答えるとヘレナは満足そうに頷いたのだった。




