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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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会議の仕掛け

 もらった手紙には、俺に対する感謝の言葉しかなかった。けれど俺は理解している……仕掛けが施され、そこにとある指示が書かれていた。

 手紙の文面については、本当に何の意味も込められていない……ぶっちゃけた話、内容はどうでもいい。問題は紙の上に存在する魔力。ほんのわずかな魔力……しかも、俺にしか認識できない特殊な魔力。それによって、俺だけに見える文字が手紙には存在していた。


 それを確認した瞬間、魔力はかき消え単なる手紙になった……俺は魔力による文面を思い出しながら町中を進む。目指す場所はわかっており、迷いなく進んでいく。

 俺は途中で会議場がある広場を通った。まだ人は多く、会議場を眺めながら雑談に興じる人もいる。


 そんな中を俺は素通りし、やがて大通りから逸れて路地に入った。そこでとある建物の中へ。

 そこは魔法関係の道具屋であり、位置的には会議場の裏側だろうか。


「いらっしゃい」


 中年男性の声が聞こえる。俺は「どうも」と応じつつ、男性へ近づく。


「呼ばれてここに来たんですが」


 その言葉に男性は頷く。


「わかりました……ようこそ、天王会議へ」


 彼がそう発言した直後だった。突如男性が霧のように消え失せた。同時に発せられたのは魔力。それは数秒で形を成すと、魔法による光の扉が生まれた。


「……相変わらず、演出過剰だな」


 俺は小さく息をつく。本来、わざわざこんなことをする必要はないはずだ。

 ついでに言うと本来の店主はどこにいるのか……そう思いつつ、俺は光の扉へ迷わず足を向け、入った。


 視界が一瞬真っ白になった後、目の前に見えたのは廊下。建物の中であり、さらに真正面に男性が立っていた。


「ようこそ、勇者トキヤ」


 老齢の執事、と表現すべき人物であった。俺は彼を見て、


「……前の案内役とは違うな」

「私はフリューレ王国に仕える者です。以前の案内役は、おそらく他国の方だったのではないでしょうか?」

「なるほど、そういうことか……各国にあなたのような存在がいると?」

「はい、案内役は必要ですからね」


 彼の言葉に俺は「そうか」と答えつつ、


「あなたは……事情は知っているのか?」

「当然です。でなければこの仕事はできませんから」


 そう言うと男性は俺に向け礼を示す。


「私はただ、指示に従うだけの存在です。例えば意見を聞かれたとしても、お答えはしませんのでご注意ください」

「わかった」


 俺も別に会話をするつもりはない……そう思いつつ、彼に別のことを尋ねた。


「このまま話し合いができるのか?」

「はい、ご案内します」

「……このタイミングで話を振ってきたということは、向こうには何か思惑があるのか?」


 俺が問うと案内役は笑みを浮かべ、


「あなたとまず、話すべきだとお考えなのでしょう」

「俺と話をした上で、今後の方針を決めると」


 納得した俺は、案内役へ要求する。


「それじゃあ、連れて行ってくれ」

「はい」


 男性が先導を始め、廊下を歩む――今いるのは会議場の中。先ほどの光の扉をくぐった先は、天王達が集う建物の中というわけだ。

 なぜ、こんなことをするのか――これは本来、俺に用意された仕掛けではない。元々、天王会議にはこうした仕組みが存在していて、十年前の戦争終結後、俺はこのシステムを利用して同じようにここを訪れた。


 それは天王会議が開催された時の話ではない。公にはされていない……戦争が終了した後に行われた話し合い。場所はロードガーデンではなかったが、同じように正規の入り口ではない場所から、建物の中へと入った。

 そして俺は――過去のことを思い出そうとした時、廊下の先に両開きの扉が見えた。


 近づくにつれ、体が少し緊張し始める……それをさせるのはこの空間にある独特の気配。天王が建物の中にいるためなのか、それとも天王達がいるからこそ、何かしら人々が張り詰めているためなのか。

 どちらにせよ、この場所が非常に特殊な空間であることは間違いない……案内役が扉の前で立ち止まる。俺もまた歩みを止め、扉を見据える。


 この扉の先に、天王達が待っている……俺は一度深呼吸をした。案内役は俺の様子を見て、準備が整うのを待っている。

 次いでどういう話になるのかと予想し……何を問うのかを頭の中で整理。正直、交渉に持ち込むといった気は一切ない。というより、駆け引きなど百年以上の歳月を生きる天王達に通用するわけがない。


 十年前、戦争が終わった後に話し合った時、俺はただ真正面からぶつかった。それが今回も通用するかわからないが――


 俺は案内役に視線を向ける。直後、彼は頷き扉を開けた。

 廊下から室内の様子が見える。そして、


「ようこそ、勇者トキヤ」


 女性の声――クリス女王のものだ。俺はその声と共に歩き出し、会議場へと入り、扉が閉まった。


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