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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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十年という歳月

 天王会議まで、まだ期間はあったし、騒動の一つや二つあってもおかしくないと警戒していたが……結果から言うと、そうした事態はなかった。


 人が集まることで人同士の小競り合いはあったが、それは魔族や魔物とは関係のないもの。騎士団は町中の警戒を強めた結果、揉め事も小さい内に解決した様子だった。

 俺の方も、町に辿り着いた当初絡まれるのではないかという懸念を持っていたが、幸いそうしたこともなく、滞在費稼ぎとしていくら仕事を請け負いつつ、トラブルらしいトラブルもなかった。


 メルの方はフィリスやヘレナと一緒に町を見て回り、なおかつフィリスはいくらか指導を受けたらしい。ヘレナも宿の中で修行を行い、多少なりともフラストレーションが溜まる状況だとは思うが……不満一つこぼすことなく、淡々と修行を続けた。

 彼女としてはこんな状況下でも、着実に強くなっているから不満はない、ということなのだろう……そうして一日、また一日と経過していき、やがて町にも変化が訪れる。


 それは多数の騎士団がロードガーデンへと入ってきたこと……物々しい雰囲気に包まれた騎士団の姿を見ると、いよいよ始まるのだという気がしてくる。

 まだ王達の姿は見えない……が、これまでと同じような流れなら、慣例的には会議開催前に王達が人々に顔を見せる。町の中央に会議場が存在しているのだが、そこで会議が開かれ、開催前に上階のバルコニーから王達が並んで姿を現し、人々に顔を見せるということをしている。


 その後、重要な取り決めを行うべく話し合いが行われるわけだが……町では今回の議題は何か、ということで持ちきりとなっていた。


「やはり魔王復活に関することだろう。勇者トキヤが再び活動しているとのことだし、天王達も何かしらメッセージを発するはずだ」


 昼の酒場、そんな会話をしている人達の横で俺は食事をする。今日は良さそうな仕事もなく、休みでいいかと思いつつ食事をしていたのだが……会話が耳に入った。


「戦争から十年という節目だし、当初会議が開かれたらさらなる復興のための施策を発表とかも考えられたが、魔王に関することだろうな」

「まだまだ完全復興は遠そうだな。ロードガーデンは生まれ変わったくらいの復興を見せたが、他の場所はまだまだだ」

「フリューレ王国は魔物の対応に苦慮しているからな。つい先日、大規模な魔族討伐が行われ、成果も出したが……」

「本来ならそんな魔族を国内に入れないようするべきだよな」

「噂によると勇者トキヤの助力があったらしい。それが本当なら、フリューレ王国はもう少し頑張らないとまずいだろう」


 なかなかに辛辣な評価……だが、人間が治める大国として、もっと天王同士リーダーシップを発揮してほしい、という感じなのかもしれない。


「他の国について、動向はどうなんだ?」

「悪くはない、といった感じだな。しかし戦争以前と比べてもまだまだ商流が復活しているとは言えんよ。この十年は復興資材ばかりが優先されていたからな。今回の会議で何かあるかもと期待していたが……」


 不満をこぼす人物。ふむ、十年という歳月ではやっぱり解決していないことは多いというわけか。

 それだけ魔王の侵攻が大陸に大きな爪痕を残したということ……ふと、もし俺がこの世界に残るとしたら、どのような形で貢献できるのか考えた。


 ロードガーデンは、建物だけを見たら復興が完了したように見える。けれど、実生活ではまだまだ障害が残っているのだろう……俺にできることは魔物を倒すことだけだが、それでもやれることは――


「……ふう」


 小さく息をつく。俺は食事を終えて外へ出ると、ごった返している大通りが見えた。

 天王会議開催はロードガーデンにとって一大イベント、ただでさえ重要な交易路で人が多いところに、さらに人が多くなっている。


 加えて、それに合わせて騎士や兵士の姿も多い……俺は過去にも天王会議開催のためにこの町を訪れたことがある。その際と雰囲気はあまり変わっていない……独特の空気感だ。

 俺は次に天王達について考えた。彼らは俺なんか比べものにならないほどのカリスマ性と、人生経験を持っている。正直、魔王を二度倒した俺であっても、比較することなどおこがましいような存在である。


 だが一方で、天王達は勇者トキヤという存在に注意を向けているのは間違いない……さて、現在天王達は俺に対し何を思い、考えているのか。

 その内心など想像することはできない……が、俺はこの世界で得られた情報で推測を試みる。彼らの心情全てを察するのは不可能だが、ただ一点――魔王に関することであれば、もしかすると俺の方が知っているかもしれない。


「……まずは何より、魔王復活について意見を聞くところから、だな」


 そう呟きつつ、俺は宿に戻ることにした。


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