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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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騎士と魔物

 俺達が森へと向かう間にも、騎士団と魔物の戦い――その戦況は変化していった。

 魔物は一体であり、騎士団は取り囲んで魔物へ仕掛けようとしたらしいのだが、魔物の方が動いて騎士団の包囲を突破してしまった。その一方で魔物は威嚇をしながら攻撃のタイミングを窺っているような状況であり、騎士団は守りを固めているためかどうにか踏みとどまっている。


 気配から幾度か騎士団と魔物が衝突したようだが、メルによると負傷者は出たみたいだが犠牲者はまだゼロ……そんな中で俺達は山を下りて森の中へ。

 そこで騎士団と魔物の姿を捉えた。どうにか包囲を維持しようとする騎士団に対し、魔物は例えるなら狼男――悪魔とは異なる、明らかに狼の頭部を持った、三メートルくらいはありそうな巨体を持つ魔物だった。


「俊敏そうだな」


 俺がそう呟くと同時、魔物が動いた。こちらの言葉通り素早い動きで騎士に接近し、拳を振りかざす。

 手には鋭い爪が存在しており、それが魔物の得物らしい――騎士は防御に専念することでどうにか防ぐことに成功。とはいえ爪は掠め小手があっさりと切り裂かれた……相当鋭利であり、まともに攻撃を食らったらそれだけで再起不能になりそうだ。


 そんな中で俺達は騎士達へ近づく……まず話しかけたのは、山へ入る前に会話をした隊のリーダーだ。


「無事……ってわけではないか」


 俺が声を掛けるとリーダーは目を見開いた後、


「……何をしにここへ来た?」

「仕事終わりだよ。帰る道中で魔物の気配がしたから寄り道しただけだ」

「そうか、勇者であっても用はない。ここは黙って見ていてもらおう――」


 そう言った直後、魔物の攻撃によって騎士の一人が弾き飛ばされる。途端、リーダーは険しい顔をしながら、


「落ち着け! 包囲を維持し攻撃を続けろ!」

「……このままではジリ貧じゃないのか?」


 俺が問い掛ける。それにリーダーはこちらへ首を向け、


「何だと?」

「騎士団として魔物討伐のために相当戦力を注いでいるみたいだが……状況を見る限り、魔物へ傷を負わせることもできていないんじゃないか?」


 俺の問い掛けにリーダーは目を細める。たぶん図星だな。


「事前の調査で魔物の戦いぶりについては分析できていた。だがその一方で魔物の防御能力などは把握できなかった……攻撃が通らず、対応に苦慮しているといった感じか?」


 リーダーは苦虫を噛み潰したような顔をする。例え相手が勇者であっても――いや、勇者であるからこそ、騎士団として弱い部分は見せられない、といった感じか。

 俺は改めてリーダーを見る。最初に二十代半ばと俺は考察したが、たぶんそれは正解で、若くして隊を率いる人間ということは、才覚も十分あるということだろう。


 魔物を倒しさらなる功績を……という風に考えているのか、それとも俺に対し弱みを見せることで政治的に影響が出てくると懸念しているのか――


「――はい、勇者トキヤ。あなたの言うとおりです」


 その声は、別のところから来た。視線を向けると、近づいてくる魔法使いらしき男性。


「剣や槍の攻撃だけでなく、魔法すら通せない状況です」

「おい――」

「これ以上戦いを続ければ、間違いなく犠牲者が出ます」


 俺達が会話をする間にも、別の騎士が魔物に吹き飛ばされる。


「それはあなたの本意ではないはずです。騎士団の力を誇示するために魔物を倒すというのは理解できます。しかし、犠牲が出ても成すべきことなのですか?」


 魔法使いの言葉にリーダーは苦い顔だったが……やがて、


「……仕方がない、ということか」

「はい、そうでしょうね……勇者トキヤ、手を貸して頂くことはできますか?」

「ああ、もちろん」


 俺はそう告げると、魔物を見据える。


「俺達が前に出るから、騎士達は下がってもらえるか?」

「構いませんが……援護は必要ですか?」

「大丈夫、遠巻きに魔物を囲んでくれ。魔物の挙動から、それだけで逃亡の危険性は少なくなるはずだ」


 こちらの言葉に魔法使いは頷くと、リーダーへ目を向ける。

 彼は魔法使いの視線に対し、周囲に目を向けた。


「魔物から距離をとれ!」


 指示に騎士達は大きく後退。それに合わせるように、俺達が前に出る。

 途端、魔物の標的は騎士から俺達へと移った。魔物はこちらをどう評価しているのか……グルル、とうなり声を上げると俺達に体を向け警戒を示した。


「……先の二体と同等くらいか」

「そのようです」


 俺は小声でメルと会話を行う。山の中で倒した二体と同様……ということは、今までと同様に一撃で倒すことも可能。

 とはいえ、周囲には騎士達がいる。あまり派手な魔法などは使えないし、なおかつ森の中であるため動きにくい。


 戦うには面倒な状況ではあるのだが――とはいえ、今の俺達にとっては大したハンデにはなっていないだろうか。


「ヘレナ、フィリス、いけるか?」

「ええ」

「大丈夫」

「なら――仕留めるぞ」


 俺の言葉と共に、一斉に魔物へ仕掛けた。


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