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三度目勇者の異世界紀行  作者: 陽山純樹
第二話

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スタート地点

 朝、起きた時点で既にヘレナとフィリスはおらず、支度を済ませるとメルがやってきた。


「行きましょうか」

「……この格好でいいのか?」


 ちなみに双方旅装姿である


「貸衣装屋を見つけましたので、まずはそこへ行きましょう」

「……貸衣装?」

「はい」


 俺はメルの案内により外へ出て、当該の店へ。そこは観光都市であるためか、見た目的にも映えるような衣服が多数あった。


「トキヤは自分の感覚で服を選んでください」

「俺のセンスで……?」

「その方が嬉しいです」


 メルが言う。まあ彼女が言うなら……ということで、地味な配色の衣服を選定。着替えて下の服はザックにしまい外に待っていると、


「お待たせしました」


 メルが外に出てくる。白いワンピース姿となっており……俺としては、ずいぶんと新鮮に映る。


「一度荷物を置きに宿へ戻りましょう」

「わかった」

「それで、どうですか?」


 袖などを気にしながら問い掛けるメル。まあ感想を問われたので、正直に答えるとしよう。


「うん、すごく綺麗だよ」


 ――あまりに直球の言葉だったからか、メルは面食らったような顔をした。


「……トキヤの口からそのような言葉が出るとは」

「どういう意味だよ……まあ確かに、こういう感じで褒めたことなかったけどさ」


 そうは言いつつ、俺は頭をかく。


「それにほら、毎日のように君は綺麗だね、とか言われたら引かない?」

「……想像してみると、それはそれで面倒そうですね」

「だろ?」


 俺の言葉にメルは笑い、俺もまた笑う。


「……それじゃあ一度宿に戻るとして、プランはどうするんだ?」

「色々と見て回りましょう。とはいえ、無駄な買い物はしませんよ。旅にかさばるような物は要求したりしませんのでご心配なく」


 ……逆に、旅に支障がなければよいということだろうか。俺はなんとなく指輪とかネックレスとか、アクセサリー系の小物を頭に浮かべたのだが……ま、とりあえず町を見て回ってからだな。

 その後、俺達は宿に服を置いて改めて町中を歩くことに。昨日、買い出しのために大通りを歩いたのだが、目的が違うと町の見方も変わり、目に入らなかった店にも注目するようになる。


 だが、メルの方は大通りに立ち並ぶ店には入らない……少しすると道を逸れた。一本道を入ると、人の数も少なくなったが、さすが観光都市と言うべきか、観光客らしき人がそこかしこにいる。


「どこに向かうんだ?」

「まずは私個人が見たいと思っていたものを……良いですか?」

「構わないよ」

「まずは美術館に」

「美術館?」


 そう言われて、ふと俺はメルの趣味について思い出した。


「そっか、絵画収集とか趣味だったな」

「憶えていてくれたのですね」

「そこは仲間なのに今やっと思い出したのか、と言及するところじゃないのか」

「言いませんよ、そもそも私もあまり話題にあげませんでしたからね」

「オルミアの家には絵画がたくさんあるんだっけ?」

「たくさんと呼べるほどではありませんが、私が個人的に好きだと思った物はあります」

「旅の最中に目当ての物を見つけたら……と言ってもかさばるし、値段だって高い物もあるし道中で買うには不向きか」

「さすがに衝動買いするほどのものではありませんし、お気になさらず……ちなみにトキヤは美術についてはどうですか?」

「俺に審美眼はないし、美術館とは無縁の世界で生きてきたな」


 メルは笑う。予想通り、といった感じだ。


「私も高価な絵とそうでない絵の区別はできませんよ。私はあくまで、好きな物を好きなように収集しているだけですし」

「そんな中で今回美術館か……」

「今、最先端の絵画はどんなものなのか、見ておこうと思いまして」


 ちょっとだけ気合いが入っているように見える……ま、彼女が楽しそうならオッケーかな。


「ただ、トキヤ、これはあくまでデートなわけですし、つまらなければ即刻プランを変更しますので」

「そんな薄情な人間じゃないよ……ただ、そうだな。メルがどうして絵画収集が趣味なのか、という点から訊いてもいいか? 仲間から話を聞けば、俺としても興味が出てくると思うし」

「そうですか? といっても、そんな大それた理由はないのですが……」


 そう言いつつもメルは俺に語り始める……その最中、俺は二十年前の旅路について思い出す。

 仲間として共に旅をした間柄だが、こうして趣味を語り合うことはほとんどなかった……まあ、話題がなかったのもある。俺は異世界の人間でこの世界のことをほとんど知らなかった。だからこそ、メルとしても雑談をどうすればいいかわからなかったはずだ。


 けど今、三度目の召喚によって俺はようやく、この世界の人間と同じような見方ができるように思える……ある意味、この世界の人間になるスタート地点に俺は、ようやく立ったのかもしれない。

 では、元の世界に戻るのか、それとも――メルの話を聞きながら、美術館に辿り着くまで脳裏では思考を続けることとなった。


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