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39話 対決・魔王ゼノブリス

 そして――。


「グオオオオオオ!」

 

 ゼルガや斬刻旅団のメンバーの魂を犠牲にし、巨大な爆炎が祭壇から立ち昇る。

 

 黒い大きな炎に包まれ、頭部には巨大な角を生やした敵がそこに姿を現す。

 この者こそが、同人RPG『クリムゾン・ファンタジア』のラストボス――魔王ゼノブリスであった。


「ついに…ついに復活したぞ」


 魔王の声が山全体に響く。


「このちっぽけな世界を、我が手で再び支配してくれる!」


 魔王が手を振り上げると、死の山が激しく揺れ始めた。


「注意してください! 噴火が始まります!」


 ミリアが叫んだ。

 山の火口から溶岩が吹き出し、辺り一面が赤く染まる。


「みんな、俺に任せろ」


 修二は仲間たちを守るように前に出た。


「魔王ゼノブリス…! 神聖勇者である俺が相手だ」


「人間風情が我に挑むと申すか?」


 魔王が修二を見下ろした。


「なるほど、レベル99か。口先だけではないようだ。手並み拝見させてもらうぞ!」


 魔王が拳を振り下ろす。


 とっさに修二は二刀を交差させてその攻撃を受け止めた。



「ぐっ!」


 凄まじい衝撃に修二の体が吹き飛ばされる。


「ユークさん!?」


 ニャアンが慌てて回復魔法をかける。


「だ、大丈夫だ…。まだまだこれからだ!」


 修二は立ち上がると、剣に力を込めた。


「聖剣技――光刃斬!」


 光の刃が魔王に向かって飛んだ。


「チッ! 小賢しい!」


 魔王が手を振ると、光の刃は霧散してしまう。


(通常攻撃は効かないってことか…)


 修二は考え込んだ。

 そのとき、アイテム袋の中で何かが光っているのに気づく。


(そうだ! こいつを封印するには最後の鍵が必要なんだ!)


 修二は素早く鍵を取り出した。


「そ、それは…!?」


 魔王の表情が初めて動揺を見せた。


「あ、ありえん…! 貴様、どこでその鍵をッ…!」


 修二は最後の鍵を高く掲げた。


「たしかに、それで我を封じることができるが…その前に、我に大きなダメージを与えねばならん! 貴様にそれができるのか!」


 魔王が巨大な炎の球を作り出す。


「みんな、力を貸してくれ!」


 修二が仲間たちを振り返った。


「もちろんだ!」

「任せてください!」

「やっちゃおう! ユークさん!」


 四人が円陣を組む。


「合体技――ホーリー・クロスブレイク!」


 四人の力が一つとなり、聖剣と竜殺しの大剣が巨大な光の剣へと変貌していく。


「うおおおお!」


 空中に出現したそれを、修二は魔王に向けて振り下ろした。


「…なッ、人間風情が…!」


 そのまま光の剣が魔王の胸を貫いた。


「グアアアアア!」


 魔王が苦痛の声を上げて膝をつく。


(今だ!)


 修二は最後の鍵を魔王に向けて投げた。

 鍵が魔王の体に触れた瞬間、巨大な封印の魔法陣が現れる。


「こ、この程度で…我を封印できると思うなッ…!」


 魔王が最後の力を振り絞って立ち上がった。


「まだ終わりじゃない!」


 修二は聖剣エクスカリバー(真)を構え直した。


(聖剣よ…頼む!)


 エクスカリバーが眩い光を放つ。


「聖剣技・最終奥義-――ラスティール・ジャッジメント!」


 修二の体が光に包まれ、聖剣から究極の一撃が魔王に向かった。


「我は…魔王ゼノブリス…。こんなところで…!」

 

 光が魔王を包み込む。


「グオオオオオオ…」


 魔王の姿が光の中に消えていく。

 そして、静寂が戻った。


「…やったのか?」


 アマテが呟く。


「ええ、魔王の気配が完全に消えました」


「ユークさん、すごいよー!」


 ニャアンが飛び跳ねて喜んでいる。


 安堵のため息をつくと、修二は捕らわれていた妻の元へと駆け寄った。


「リーシャ、大丈夫か?」


「ユーク…ありがとう」


 リーシャが涙を流しながら修二に抱きつく。


(家族を守れたぞ)


 修二は妻を抱きしめながら、心の底から安堵した。


 魔王ゼノブリスを倒した瞬間、山全体を覆っていた不気味な雰囲気は嘘のように消え去った。

 噴火も収まり、空が元の青さを取り戻していく。


「みんな、怪我はないか?」


 一度、リーシャのもとを離れた修二は、捕らわれていた人々を一人ずつ確認して回った。

 幸い、大きな怪我をした者はいないようだ。


「おじさん! ありがとー♪」


 子供たちが感激の声を上げる。


「おじさん一人の力じゃないじゃないよ。ここにいるみんなが協力してくれたからなんだ」


 修二は子供の頭を撫でながら、仲間たちの方を振り返った。


「ハッ。ユークがいなかったら、みんな死んでただろうさ」


 アマテが肩を叩く。


「そうだよ~! ユークさんが一番かっこよかったよ!」


 ニャアンが飛び跳ねながら褒めちぎる。


「最後に放った技はお見事でした」


 ミリアも微笑んでいた。


 その時、修二の目の前に光の画面が立ち上がる。

 同時に、空中に文字が浮かび上がった。

 

 【システムメッセージ クリア条件達成:ラストボス 魔王ゼノブリス 撃破完了】


(やっと魔王を倒せたんだ)


これで京香の元に帰れる。

そう思うと、胸の奥が熱くなった。


(とりあえず、全員を安全な場所まで送ろう)


 修二は立ち上がると、捕らわれた人々に声をかけた。


「皆さん、我々がヴァレス村まで送らせていただきます」


 修二たちは子供や女性を支えながら、ゆっくりとヴォルガ火山を下り始めた。




 ◇◇◇




 下山途中、修二はこっそりと《エックスリンク》のスキルを使用した。


 【@isekai_villager_A: ついに魔王ゼノブリスを倒した 長い戦いだった これでみんなが平和に暮らせる #クリファン攻略完了】


 すぐに例のアカウントからリプライが来る。

 

 【@MirokuinMasato30: お疲れ様でした キミならクリアできると思ってた 本当にありがとう このことはずっと忘れない】


 そのメッセージには、どこか達成感のようなものがあった。


 どこの誰かは分からないが、きっとこの人にもこの人なりのドラマがあったのだろうと、なんとなく修二はそんなことを思った。

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