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33話 真の英雄として認められる

 王城の玉座の間には、大勢の貴族や騎士たちが集まっていた。

 中央には王座に座る国王と、その横に立つ王国の重臣たち。


 修二たちは厳かな雰囲気の中、玉座の前まで進み出た。


「オーリアの勇敢なる冒険者たちよ。汝らは王国武闘大会において見事な勝利を収めた。その勇気と知略に対し、王国は最大の敬意を表する」


 修二たちは国王に一礼した。


「約束通り、褒賞を与えよう」


 国王の手示しにより、侍従が豪華な箱を持って前に出た。

 箱が開かれると、中には青く輝く美しい剣が収められていた。


「これは古より伝わる伝説の武器――竜殺しの大剣・ドラゴンベイン」


 侍従が剣を取り出し、修二に差し出す。


「我が国の宝として大切に守られてきた剣だ。本来はトウヤに渡す予定だったものだが…真の勇者に渡すべきと判断した。受け取ってくれるな? ユークよ」


「はい」


 修二は恐る恐る剣を受け取った。

 手に取った瞬間、剣から澄んだ音色が響き、青い光が強まった。


「おぉ…。剣がそなたを認めたようだな」


 国王は満足げに微笑んだ。


「ありがとうございます」


「うむ。さらに王国はそなたに〝神聖勇者〟の称号を授けることにした」


 その言葉に、会場からどよめきが起こった。


「勇者は通常一人しか与えられない称号だが…。そなたの力と人格はこの称号に相応しいと判断した」


 国王の隣に立つ老参事官が前に出て、修二の首にメダルを掛けた。


「なら、トウヤはどうなるんでしょう?」


 メダルを受け取った修二が国王に尋ねる。


「彼もまた勇者のままだ」


 国王が答えた。


「我が国には二人の勇者がいても良い。両者には友好的な関係を望もう」


「わかりました」


 まわりの仲間たちから祝福されながら、修二は新鮮な気持ちでメダルを見つめた。


(神聖勇者か…。ずいぶんと立派な肩書きを受け取ってしまったなぁ…)


 そこで修二はふとあることを思い出す。


「陛下、ひとつお願いがあるのですが」


「何だ?」


「エルド連邦にある死の山について、自分たちに調査させていただきたいのです」


 国王は少し驚いた表情をした。


「隣国の領地の調査…? なぜそんなことをする必要がある?」


「どうやら噴火の兆候があるらしいのです。それが事実なら、アストラル王国に被害が及ぶかもしれません」


 修二の言葉に、国王は考え込んだ。


「ふむ…。たしかにそのような歴史があることは知っておる。なるほど…我が王国の危機というのなら、確かにそうだな。では、新たなる勇者ユークにその調査を任せよう」


「はい。ありがとうございます」


「必要な支援は惜しまん。護衛の騎士団も付けよう」


「いえ、私たち四人だけで大丈夫です」


 修二ははっきりと断った。


「そうか。そなたの判断を尊重しよう」


 国王は頷き、玉座から立ち上がった。


「皆の者! アストラル王国の新たなる勇者、ユークとその仲間たちに栄誉あれ!」


 会場全体が拍手に包まれた。




 ◇◇◇




 玉座の間を出た後、四人は王城の廊下を歩いていた。


「すごいね、ユークさん! 勇者様になっちゃったよ!」


 ニャアンが無邪気に喜ぶ。


「まさかこんなことになるとは思わなかったよ」


 修二は照れくさそうに笑った。


「竜殺しの大剣か。これは面白いね。これがあれば、もっと強力なモンスターにも対抗できる」


 アマテが新しい剣を感心して見つめる。


「そうですね。死の山の調査にも役立ちそうです」


 ミリアが冷静に言った。


 そのとき、廊下の角から人影が現れた。

 トウヤだった。


「よお、〝神聖勇者〟さんよ」


 彼の声には皮肉が込められていた。


「トウヤ」

 

 修二は平静を装って挨拶した。


「まさか勇者の称号をもらうとはな。おめでとさんと言うべきか」


 トウヤの表情は複雑だった

 怒りと挫折、そして何かを決意したような強さが混ざっている。


「が…。俺たちも負けてられない」


 彼の言葉に、修二は頷いた。


「ああ。次は正々堂々と勝負しよう。透明化に頼らずにな」


「フン。それなら、余裕で俺たちが勝つだろうな」


 二人の視線がぶつかり合う。

 そこには敵意よりも、むしろ互いを認め合う気持ちが芽生えていた。


「エルドの死の山、調査するんだって?」


「何か知ってるのか?」


「詳しくは知らん。だが、噴火の予兆があるというのは真実らしい。あの火山は不吉な象徴だからな。何が起こるかわからない。気を付けろよ」


 修二はトウヤの情報に感謝した。


「次に会う時は、俺の方が偉大な功績を残してるだろうな。じゃあな」


 トウヤはそう言い残し、踵を返して去っていった。


「嫌味だけど、なんだかんだ言って、悪い奴じゃないのかもね」


「うん! ちょっとだけ見直したかも!」


 そこでミリアが尋ねる。


「いつエルド連邦に旅立ちましょうか?」


「少し休んでから、数日後には出発しよう」


 修二の言葉に三人が頷く。

 こうして彼らの次の目的地が決まった。




 ※※※




 その夜。

 修二は城の一室で《エックスリンク》のスキルを使っていた。


 【@isekai_villager_A: 今日、俺は神聖勇者になった まだ魔王にはたどり着いてないけど一歩前進した エルド連邦の死の山に魔王の手がかりがあるかもしれない 絶対に倒してみせるぞ #クリファン攻略】


 ポストを終えると、修二は窓の外の星空を見上げた。

 ふと、現実世界の京香のことを思う。


(京香、元気にしてるかな…)


 そんなことを考えながら、修二は勇者として新たな冒険へと踏み出す決意を胸にするのだった。

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