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26話 斬刻旅団を追跡せよ

 一行は慎重に旅団の後を追った。

 シルバーライト・アーマーのおかげで修二の姿は半透明になり、先頭に立って道を探る形で進んでいく。


 日が傾き始めたころ、彼らは小さな村に到着した。


「あれは…バルムの村だね」


 アマテが小声で言った。


「知ってるのか?」


「アストラル王国を目指して旅してた時、この近くを通ったことがある。小さいけど平和な村だったはず」


 ところが。

 彼らの目の前で斬刻旅団の面々が村に突入すると、悲鳴と叫び声が聞こえ始めた。


「やめて!お願い!」

「何の用だ!ここには何もないぞ!」

「子どもたちをどこへ連れていく!」


 村人たちの叫び声が風に乗って届いてくる。


(子どもを連れ去ってる…?)


 皆の表情が険しくなった。


「行くぞ! 助けに!」


「待って!ユークさん!」


 ニャアンが修二の腕を掴む。


「あの人数じゃ勝ち目がないよ!」


「ニャアンの言うとおりだ。無謀だ」


 アマテも同意する。


「でも…。それじゃここまで彼らを追ってきた意味がありません!」


 人一倍責任感の強い声でミリアがそう唱える。


 修二は考え込む。

 確かに正面から戦えば負ける可能性が高い。


 しかし、目の前で起きている悲劇を見過ごすこともできなかった。


「よし、作戦を考えよう」


 修二は手早く計画を立てた。


「俺が透明化で近づいて子どもたちを連れ出す。ミリアは混乱させるための魔法を使ってくれ。ニャアンとアマテは村の人たちを避難させる」


 各自の役割を確認し、三人は納得したように頷く。

 そのまま彼らは、静かに村へと忍び込んだ。


 村の中央広場では、斬刻旅団のメンバーが村人たちを集めていた。

 子どもたちは泣き叫びながら、別の場所に隔離されていく。


(子どもたちを何のために集めてるんだ?)


 修二は半透明になり、メンバーの会話に耳を傾けた。


「これで三つ目の村か。噴火を起すのに必要な数の生贄は集まりそうか?」


「ああ、これくらいあれば十分だろう。儀式には子どもの純粋な魂が必要なんだから」


「あの方の復活に備えて、着々と準備が進んでるな。フフ…」


 修二は思わず息を呑んだ。

 

 子どもたちを生贄にする儀式?

 あの方の復活…?


 一体彼らが何を行おうとしているのか。

 全体像は見えなかったが、良からぬことを考えているのは明白だった。

 

 修二はすぐさま仲間たちに合図を送り、作戦を開始する。


 ミリアが杖を振り上げ、呪文を唱える。


「来たれ、光の精霊よ! フラッシュ・バースト!」


 まばゆい光がその場を包み込み、旅団のメンバーは目をくらませて混乱した。

 修二はその隙に子どもたちのところへ駆け寄った。


「大丈夫、助けに来たんだ。静かについておいで」


 震える子どもたちを励ましながら、修二は彼らを安全な場所へと導いていく。

 一方、ニャアンとアマテは村人たちの避難を手伝っていた。


「こっちだ! 早く!」


 アマテが大声で指示を出す。


「みんな、怪我してないかな?」


 ニャアンは回復魔法を使いながら、村人たちを安全地帯へと誘導していった。


「敵襲だ! 誰かいるぞッ!」


 ついに斬刻旅団の他のメンバーが気づき始めた。


「急げ!もう時間がない!」


 修二は子どもたちを連れて、村の外れにある森へと急いだ。

 その時、一人の黒い鎧の男が修二の前に立ちはだかった。


「――待て。お前、どこへ行くつもりだ?」


 その男は修二を見下ろすように言った。


「邪魔するな」


 修二は透明の短剣を構えた。


「ほう…。面白い武器を持っているな。お前はいったい何者だ?」


「ただの冒険者さ」


 男は不敵な笑みを浮かべた。


「それなら余計な真似はしない方がいいぞ。あの方の計画に逆らうものには死が待っているからな…!」


 男が剣を振りかざしたその瞬間、背後から赤い閃光が走った。


「はぁっ!」


 アマテの大剣が、男の背中を深く切り裂いた。


「ぐぁっ!」


 男は悲鳴を上げ、地面に倒れ込んだ。


「急げ、ユーク!」


「ああ。すまない」


 アマテに促され、修二は子どもたちを連れて走り出す。


 その後。

 村を脱出した一行は、しばらく走り続け、安全な場所で休憩を取ることにした。


「はぁ、はぁ…みんな…無事だったか?」


 修二が息を切らしながら尋ねる。


「なんとかね…」


 アマテが肩をすくめた。


「お陰様で、村人たちも半数以上は脱出できました」


 ミリアが報告する。


「でも…残りの人たちは…」


 ニャアンの声が震える。


「私たちだけじゃ全員を救うことができなかった…」


 彼女は悔しさを噛みしめた。


「でも、子どもたち全員を守れたじゃない。それだけでも大きいよ」


 アマテがニャアンの肩を叩く。


「奴らは生贄として子どもたちを捕らえてたみたいだな。何者かの復活のための儀式だって」


 修二の言葉に全員が沈黙した。


「何者かって、誰なのでしょうか?」


 ミリアが尋ねるも、修二は首を横に振る。


「…わからない。ただ…」


「ただ?」


 アマテが首をかしげる。


 修二の頭にはあるひとつの可能性が浮かんでいた。


(ひょっとして…奴らは魔王の手先なんじゃないんだろうか?)


 飛躍し過ぎているように思えたが、メンバーの一人が噴火がどうとか言っていたのが、修二には引っかかっていた。


「…いや。なんでもない。旅団の面々も大半が逃げたようだし、これ以上、奴らを追うことはできないな」


 彼らの行方は気になる修二だったが、これ以上の追跡は間違いなく命を落とす危険があると言えた。

 

「ひとまず、このまま王都へ向かおう」


「そうだね。王都でなら、何か情報が手に入るかもしれないし!」


 ニャアンが頷く。

 一行は救出した村人たちを近くの町へ避難させた後、再び王都への道を急いだ。

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