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24話 黄金の盾を手に入れてしまう

 中心には大きな祭壇があり、そこには台座が置かれていた。


(ひょっとして…ここに置くのか?)


 修二はアイテム袋からメガトンロプスの心臓を取り出した。

 それは今も不気味な鼓動を続けていた。


「アタシが倒したメガトンロプスの心臓じゃないか」


「えっ、ユークさんどうしたの? 急にそんなもの取り出して…」


 不思議がるアマテとニャアンに、修二は簡潔に告げる。

 

「ひょっとしたら、手がかりが手に入るかもしれないんだ」


 なおも不思議そうに眺める彼女たち。

 ただ、修二には確信があった。


 ゆっくりとメガトンロプスの心臓を台座に乗せる。

 すると――。


 突然、祭壇が明るく輝き、周囲に刻まれた文様が光り始めた。


 その時。

 奥にある扉がゆっくりと開く。


「なんでしょう。何か浮かび上がりましたけど」


 ミリアが祭壇に近づいて文様を解読しようとする。


「なんて書いてあるか分かるのか?」


「いえ…。これは古代語…? わたしにはちょっと…」


「見せてくれ」


 アマテが近くに寄って文様を眺める。


「うん、少し読めるな」


「え!? アマテさん読めるの!?」


「アタシの故郷では似たような文字を使ってるからね。えっと、なになに…」


 アマテは眉をひそめながら、文様に刻まれた文字をひとつひとつ解読していく。


「…あぁ、なるほど…」


「何かわかったか?」


 修二が問うと、アマテが頷いて答える。


「――闇の王は戦士が倒した だが完全に消し去ることはできなかった 闇の王の魂は焔の山の奥深くに封印された しかし、いつの日か再び力を取り戻し、この世界に災いをもたらすことだろう その時のために我ら戦士の仲間はこの遺跡を建て、次の戦士への手がかりを残した――〟 読めるのはここまでだな」


「闇の王って…たぶん魔王のことだよね? 私たちの読みが当たってたってこと?」


「信じたくはないが…。まぁ、そういうことでしょうね」


 実際にその文字を見て、アマテが納得したように呟く。


 四人は黙り込んだ。

 予想していたとおり、状況はどうやら深刻のようだ。


「ユークさん! あそこの部屋も調べてみよう!」


「ああ。そうだな」


 一行は新たに開いた扉の奥へと進む。

 そこは小さな部屋であり、中央には黄金の盾が置かれていた。


「見てあれ!」


「なんだありゃ…」


 驚くニャアンとアマテの横で、ミリアが静かに呟く。


「次の戦士への手がかりって…ひょっとしてこれのことじゃないでしょうか? ユークさん」


 彼女に促され、修二はその盾を手に取る。

 すると――。


 黄金の盾は虹色に輝き、修二の手にしっかりと馴染む。


「すごいっ~!」


「おぉ、ユークにぴったりだね」


「はい」


 ユークの姿を見て、三人は納得したように頷く。

 

 その時。

 何かに気づいたようにアマテが口にする。


「ん? そこにも文字が書かれてるぞ?」


「え?」


 アマテが指さす方へ修二は目を向ける。

 盾の縁に短い文様が刻まれていた。


「〝盾は聖剣と共に――〟だってさ」


「聖剣?」


 ニャアンが小首をかしげる。


(あっ)


 とっさに修二は苦い記憶を思い出した。


 ヴァレス村から追放される原因となった聖剣。

 ひょっとしてそれが必要なのではないだろうか。

 

「ユークさん、どうしたの?」


「いや…。聖剣にちょっと心当たりがあってさ」


「ほんと!?」


「けど、それを手に入れるのは少し難しいんだ。前にニャアンには話したよな? 村から追放されることになった理由を」


「たしか剣を盗もうとしたって疑いをかけられたんだよね? えっ、まさかその剣が?」


「聖剣エクスカリバー。村ではそんな風に呼ばれてた」


「!」


 修二はミリアとアマテにも、自分がヴァレス村から追放されることになった経緯を簡単に説明した。


「…あんたにそんな過去があったなんてね。ちょっと驚きだよ」


「ユークさん、大丈夫ですか…? 奥さんと娘さんと離れ離れになって」


 ミリアが悲しそうな顔をする。


「いずれ戻る機会は来るさ。それよりも今は力をつけないと。魔王に復活の兆しがあるなら、誰かがそいつを倒さなくちゃいけない」


「うん…。たしかにそうだね」


 真剣な表情でニャアンが頷く。


「もちろん、それが俺たちである必要はないけどさ。でも、新たな勇者様の力になれることがあるかもしれない」


「よーし、みんな! 強くなろう!」


 ニャアンの声に残りの二人も同意を示した。




 ※※※




 遺跡から出ると、すでに日が傾き始めていた。

 夜にはオーリアに到着し、四人は無事神殿へと戻ることができた。


 就寝前、修二は《エックスリンク》を使い、今日の発見を投稿する。


 【@isekai_villager_A:古代遺跡で勇者の記録を発見 魔王と火山の関係が判明した #クリファン攻略中】


 あれからもゲーム攻略中というテイで、修二はポストを投稿しつづけていた。

 今ではフォロワーもつくようになり、リプライをもらえるまでになっていた。


  『X』にポストをするようになって気づいたことだが、 『クリムゾン・ファンタジア』のファンは熱狂的な者が多い。

 伝説の同人RPGと呼ばれている理由を修二はなんとなく理解し始めていた。


 【@06dudunovel: 焔山は中盤のメインストーリーですね 火山が噴火すると周辺の町が壊滅するのでそれまでに聖剣が必要ですよ】


【@sdsdfsfyo: 勇者パーティが王国武闘大会で優勝した後に火山の噴火イベントが始まるから それまでに聖剣を入手しておかないと詰むぞ】


(勇者パーティが王国武闘大会に出場?)


 これは初めて知った情報だった。


(ってか、勇者ってこの異世界に存在してたのか。あの女神、そんなことひと言も言ってなかったんだけどな)


 少し面倒なことになったと修二は思う。

 

 勇者とは魔王を倒す存在だ。

 現実の世界へと戻るには、勇者よりも先に魔王を倒さなければならない。


(魔王に勇者…。なんかいよいよって感じだぜ)


 これまで表に現れなかった存在が実際に明るみになり始めたことにより、修二は自分の旅がいよいよ本番に突入してきたことを知る。


「よし」


 修二は決意した。

 ある程度力をつけて、ヴァレス村に戻って実力を認めてもらおうと。


(そこでレベル反転バグの条件を達成して、ついでに聖剣も入手しよう)


 勇者パーティが王国武闘大会で優勝するまでがタイムリミットだ。

 今後の予定を決めてから、修二はこの日は就寝した。

 

(京香…。ぜったいに現実の世界に戻るからな。待ってろよ)

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