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6:聞いてないのよ

軽く洗った肉と水をたっぷり鍋に入れて、アクを取りながら煮込んで行く。

臭み消しに大蒜と生姜をぽいっ。

見慣れたネギは無かったので、リーキっぽいやつの青い部分もぽいっ。

不思議と大根や人参、ズッキーニは見慣れたものと同じだ。

具材として入れる分は乱切りに、仕上げの色取り用には千切りに。

野菜を放り込んだ後は塩で味を調える、煮込む事を考えて少し薄めにしておく。

一度沸騰した後はあまりグラグラと煮立たせたくないので薪を調整する。


煮込む間にもう1品、唐辛子粉があったのでタッカルビモドキを作る事にした。

コチュジャンがあればいいんだけど、ないからモドキなのだ。

ケチャップも無いのでまずはトマトの皮を湯剝きした後、乱切りにして形が無くなるまで煮込む。

形が無くなってきたら酢と砂糖を加えて汁気が減るまで煮込む。

コクを出したいので蜂蜜も少々加えて唐辛子粉とニンニク生姜も加える。

軽く煮立ったら一旦火から下ろしておく。

色的に鳥であろう肉をぶつ切りにしてサッと湯通ししておく。

今回はうまみも出したいので骨付きだ。

先程のタレに擦りおろし玉葱を混ぜて肉に揉みこんでおけば、食べる前に焼くだけでいい。

好みで芋や玉葱、キャベツなんかを入れてもいいけど、今回はサラダもあるので野菜は抜き。


うーん、やっぱり竃が欲しいな。

ペチカが階段みたいに2段構えになっているから2か所で調理は出来るけど、出来れば竃も欲しい。

作り方は知っている、知っているけど実際に作った事は無い。

ニクスさんがペチカを作ったのであれば竃も行ける気がするんだよね。

考えている内に夕暮れとなりコムタンも完成した。

ニクスさん親子も仕事を切り上げて入ってきたのでタッカルビモドキも仕上げますかね。


今回も食事は好評だった。

あれだけあったコムタンは空っぽになり、タッカルビモドキも無くなったしサラダも無くなった。

いくら体付きが大きいとはいえあの量の料理はいったいどこへ入ったのだろうか。

お腹がぽっこりと出ている訳でもないし不思議だ。


食後リビングでお茶を飲みながらニクスさんのお父さんに説明する事になった。

何処まで話すかと2人で悩んだのだが、今後の事を考えると会う機会も多そうなので全部話す事になった。

お父さんの名前はオンスさん。当然ながら雪豹の獣人だ。

オンスさんは事情が分かるとやっぱり子供として扱う方がいいと言った。


「キヨカの世界では寿命が短くてそれなりの齢なのかもしれないが、

 私から見て今のキヨカは未成人にしか見えないのだがね」


とまで言われてしまった。

そう言えばこっちに来てから鏡を見ていない・・・

なんとなく手を見て少し張りが出たような気がするとは思っていたけど、まさか?・・・


「ニクスさん、ニクスさんから見て

 初めて会った時と今の私って差があったりする?」

「そう言われれば肌の色艶が良くなったか?」

「やれやれ、だから鏡の1つくらい置いておけと言ったではないか」


オンスさんは鞄から携帯用の鏡を出して渡してくれたので覗き込んでみれば。


「うわぁお・・・、若返ってるどころの話じゃないねこれ。

 目の色変わってるじゃないか。

 髪はそのままこげ茶で白髪部分が白メッシュになってるけども」


目はパッチリ二重になってるし、虹彩は青紫になっている。

肌だって20代の頃のように張りがある・・・

アリェーニャ様?

確かにこの世界に順応させてくれると仰ってましたがね?

若返るとか聞いてないんですが?

えぇー・・・

折角ツキノモノも干上がって楽になったのに・・・

私腹痛とか腰痛酷かったんだよね、下手すりゃ頭痛までしてたんだよね。

それが50になって干上がったからやったー!と喜んだのに・・・

えぇぇ、またなのぉ?


「あー・・・、キヨカ。

 おそらくツキノモノとやらは来ないと思うぞ・・・」

「この世界は皆寿命が長いからな。子を成す時以外は」

「はいはいはいはい、解かった!言わなくていいから」


つまりは猫と同じって事よね、OK理解した。

それならまぁ若返ってもいいか・・・

あれ、見た目が20代って事は娘よりも若くなったかも?

いや同い年? まぁどっちでもいいか、どうせもう会えないんだし。

と言うか・・・


「もしかしてさっきのって、私声に出てた?・・・」

「んむ、シッカリと聞こえたな」


ぅわぁ・・・聞かなかった事にして欲しかったぁ。


という事でこの世界?この国では立派に未成人となったらしい。

それならそうと言っておいて欲しかったぁ。

そりゃこの見た目なら皆飴ちゃんくれるハズだよね・・・

いや背が低いってのもあるからだろうけど。


「あれ、私の身長ってどうなんだろう。伸びるのかな?」

「いや伸びないんじゃないか?」

「20歳で成長は一旦止まるしな?」

「おぉぅ・・・」

「まあリスなど小型の種族も居るから安心しろ」

「その小型の人達の身長は?」

「180㎝前後か?」

「私よりは高いじゃないか・・・

 待てよ、他大陸に居る人族の身長はどのくらい?」


私と同じくらいではないのかと期待して聞いてみる。


「確か人族は180~200㎝と聞いた気がする」

「そうだな、実際に会った事はないが貿易商の話だとそのくらいらしい」


チーン、高かったよ・・・

いやでも180ならそこまで差はないし、というかまず人族とは遭遇しないじゃないか。

まぁ気にしても仕方がないか、もしかしたら少しは伸びるかもしれないし。


気が付けば夜も更けていたので寝る事にした。

オンスさんは空いている左の部屋で寝るらしい。

布団はどうするのだろうと思ったら、ちゃんと持参していた。


「どうせ何も無いのは解っていたからな」


と笑っていたが、さすが親子でよく解っていらっしゃる。

自室に戻り布団の中で会えなくなった娘に話しかける。


ちょっと娘よ、おかん若返っちまったよ。

しかも寿命がとてつもなく長いらしいんだよ。

そっちではおかんの扱いどうなってるんだろうか。

仕事帰りの途中だったから何らかの事故死とかなのかな。

もしそうなら、慰謝料ぶんどってやりなね。

墓はいらんから、山か海に散骨しておくれ。

あ、後生命保険が2つほどあるから手続きも忘れないようにね。


まぁどうせ伝わらないんだけど語り掛けるくらいいいじゃないか、自己満足だよ。

そう思いながら眠りに就いた。



翌日の朝食はパンケーキ。

ベーキングパウダーが無いので卵白を泡立ててメレンゲを使ったやつだ。

固めのメレンゲにするので腕がつるかと思った。

きっと大量に食べるだろうと予測して作ったのに、綺麗に無くなった。

なんなら足りなかったかもしれない。

オンスさんは奥さんにも食べさせたいと言っていた。

メレンゲが大変なだけで簡単に作れるのでレシピを教えておいた。


食後ニクスさんとオンスさんは昨日の続きで風除室の製作だ。

すでに骨組みが出来上がっていたので後は壁と屋根と明り取りの窓だね。

屋根が苦労しそうだ。

作業は2人にお任せして、私は川へと洗濯にやってきた。

あの石鹸は洗濯用で合っていたようだった。

シャワー用の石鹸は別にあって、スッキリとした匂いの物だった。

よかったよ、間違ってなくて。

朝からメレンゲなんか作ったせいで右の二の腕が瀕死だ。

でも洗濯続けてたら二の腕が引き締まっていいかも?

ならば左手も頑張って使わないとだね。

オンスさんの分も含めて3人分、いい運動になった。


干し終わった後は掃除を済ませて昼食の準備に取り掛かる。

今回はピザにしてみた。

ピザソースやケチャップが無くても、トマトとたっぷりチーズがあればそれらしい味になるからアラ不思議。

大判のピザを10枚ほど焼いたのにやっぱり綺麗に無くなった・・・

あの2人の胃はブラックホールじゃなかろうか。

読んで下さりありがとうございます。

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