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5:説明は必要だと思うのよ

さて掃除も終わったので玄関の泥除けマットを作ろうと思ったのだけど、まずは素材集めをしなければならなかった。

そこで私は昨日買ってきた植物図鑑を見てみる。

私が知っている物と同じなのか、別物なのか知りたくて買っておいたのよね。

植物図鑑の他に動物図鑑も買ってある。

森で暮らす以上、知識は有っても困らないだろうし、読む時間はたっぷりとありそうだからね。


えーっと繊維質が多くて丈夫な樹皮が取れそうな物は・・・

つる性植物でもいいな。


ヤマブドウ、フジ、アオジナ、アットゥシ。

アットゥシって何・・・

まぁ他の物は名前も見た目も見知った物だから、そっちでいいかな。

近場でありそうな物と言えばアオジナだろうか。


納屋に足を運び鉈を探してみるが見当たらない。

小型の手斧ならば私でも扱えそうだし、猪に遭遇しても・・・無理だね。

小型の手斧と一緒に一応包丁も持って行こう。

ほら、戦闘スキルに包丁捌きってあったし?

素手は1人で試すのは怖いじゃないよ・・・

後は剝ぎ取った樹皮を入れる籠も持って・・・背負子と背負子籠があったよ。

薪拾いする時には背負子がよさそうだけど、今は背負子籠かな。

背負って森へと踏み込む。

とは言え家の近くだけにするつもりだ。

迷っても嫌だからね。



樹皮か蔓をと思っていたのに、ジューンベリーとブルーベリーを見つけてしまい夢中で採取している。

日本で見かける物よりも背丈も低く、実も小さめだが1つぶ食べてみれば濃厚で甘かった。

自然の恵み万歳!と採取はしているけど、1本の木からは半分ほど頂いている。

残りの半分は野生動物の為に残しておかないとね。

日本でも問題になってたけど、森や山に餌が無くて人里まで降りて来てしまう野生動物達がいたからね。

そうならないように、ここではシェアしていかないとね。

夢中になり過ぎて奥まで入り込まないように気を付けないと。

念の為にと広口の瓶を持って来て居てよかった。

そう、ガラス製品は存在してるのよねぇ。

ジャムにして保存庫に入れておけば長期保存も出来るだろうから冬場のビタミン補給にはいいかもしれない。

持っていた瓶が満タンになったのでブルーベリー採取は終了。

2~3日後にもう少し大きい入れ物を持ってまた来ようと思う。

本命の樹皮か蔓を探さねば・・・

見つけてしまった、サボンソウを・・・

これ、石鹸の代わりにもなるのよね確か。

見た目も可愛い花が咲くし、庭に植えておくと良さそうよね。

これも後日採りに来よう・・・


その後はやっと蔓を見つける事が出来たのでせっせと採取した。

背負子籠が満タンになった頃には空がオレンジ色になっていた。

急いで帰らないと・・・


夜はカレリアンシチューにした。

豚らしき肉と玉葱、人参、ジャガイモを塩とハーブで煮込んだ物だ。

肉は大きめにカットしたので十分メインディッシュになる。

後はパンとサラダでいいだろう。

今は買って来たパンだけど、ドライイーストが売ってあったのでいずれ自分で作れたらいいなと思う。

ペチカでコトコト煮込んでいるとニクスさんが帰って来た。


「お帰りなさい」

「ただいま、ビッグアントラースは見つけられなかったが

 イッカクが居たので仕留めて来た」

「イッカク?」


私の知っているイッカクは海洋哺乳類だ。

こんな森の中に居る訳がないので別物なのだろうと見せて貰う事にした。


「ぶっ、これがイッカク?」

「ああそうだ」


見せて貰ったのはサイのような1本の角を生やした長毛の猪だった。

興味本位で触ってみれば、長毛なのに毛はゴワゴワとしていて硬かった。

この毛は掃除ブラシや箒にも使われるそうだ。

ん?・・・

もしかして掃除ブラシ用に刈り取った残りの毛で玄関の泥除けマットになったりするんじゃ?

そう思いニクスさんに言ってみれば、余った皮があるからと試してみる事になった。

毛足は2㎝くらい残っていたので2人で皮の上を歩いてみれば思った通り良い感じに靴裏の泥が取れた。


「これを玄関前に置けば室内の汚れが軽減できるね」

「なるほど、それはいいな。

 だが夏が終わると強風も吹くようになるぞ?」

「・・・、風除室作るか」

「風除室?」


そうか、知らないよね。

玄関の開け閉めで室内の熱が逃げるのを緩和して、玄関内に雨風や雪の進入を防ぐ物だと伝えた。

ならば作ってみるかと言う事になり、明日は2人で作業する事にした。

作り方は動画で見た事があるだけだから不安だったけど、心配無用だった。

この家、ニクスさんの自作だったらしい。凄いね。

夕食の後にリビングでお茶を飲みながらどうやって作るか図案を考える。

明り取りの窓にはメガネウラと言う昆虫の羽を使うそうだ。

メガネウラって何よと図鑑をみたら・・・巨大なトンボで肉食と書いてあった。

一片の羽が50㎝もあるらしく想像するとちょっと怖いが、外殻も武器の素材になるとの事で意外と使い道のある有益なトンボだった。

だからと言って自分で捕まえようとは思わない。

基本、昆虫は苦手だ・・・


風除室の大きさはニクスさんの体格も考えて、横3m、縦3.5m、奥行き2mになった。

出入り口の扉は玄関同様に引き戸、その方が風に煽られてバンッて閉まらなくていいしね。

図案も描き終えたので寝る事にする。

明日は疲れそうだ・・・



さて本日の朝食はキャベツの酢漬けとソーセージを挟んだホットドッグにコーヒー。

この世界にもコーヒーは有るのだけど輸入品になるのでお高い。

今日のコーヒーは私の鞄に入っていたステックコーヒー(インスタント)だ。

残り3本だったのがアリェーニャ様が気を利かしてくれたようで20本に増えていた。

但し紙に包まれて瓶に詰められていたので、湿気などの事を考えると早めに飲む方がいいかもしれない。

ここでもアリェーニャ様に感謝をしておく。

思いがけずコーヒーが飲めた事でニクスさんはご機嫌だった。


食後少し休憩して、作業に取り掛かる。

木材はこんもりとあるので形成していくのだが、これが重労働だった。

チェーンソーや電ノコなんぞある訳がないのですべて手作業だ。

昔の大工さんは凄いと素直に感心したよ。

午前中は形成作業だけで時間が過ぎた。


お昼は簡単にパスタ。

なんちゃってカルボナーラにした。

コンソメなんて無いのでベーコンと玉葱をじっくり炒めて出汁代わりにする。

卵黄とバター、ミルクを入れて焦げないように混ぜ、とろみをつける為に少量の小麦粉を振りかける。

ダマになるのが心配な場合は先に水で溶いておけばOK。

塩胡椒で味を調えてパスタに絡めれば完成だ。

チーズがあれば入れても美味しいのだが、今日は無しで。

ニクスさんは美味しいと言って3人前をペロリと平らげた。

多めに作ったつもりだったけど次からニクスさんのパスタは4人前にした方がよさそうだ。


午後からは偶然やって来たニクスさんのお父さんを巻き込んでの作業となった。

挨拶もそこそこに有無を言わせずに手伝わせているニクスさん・・・

せめて私の事を何かしら説明してあげて欲しいのだが。

物凄く気になるみたいで時々視線が飛んでくる。


「後で説明してやるから今はまず手伝ってくれ。

 ほら、手動かしてくれよ。どうせ泊まって行くんだろ」

「むぅ、仕方あるまい。

 お嬢ちゃんまた後でな。ほら飴でも食べて待っておいで」


お嬢ちゃん・・・

どうしよう、実はおばさんなんですとか言い出せなくなった。

作業は任せる事になったので私の手は空いてしまったのだがどうしよう。

よし、ここはちょっと手の込んだ夕食にでもしようではないか。

保存庫へと行って材料を確認してみる。

牛かな?骨付きのすね肉があるじゃないか。

お、こっちは牛筋っぽい?

よし、野菜入りのコムタンにしよう。

量はどのくらい作ればいいだろうか・・・

足りないよりはいいだろうと、炊き出しですかってくらい大きな鍋で作る事にした。

ペチカに乗るか?と不安だったけど乗ったよ、よかった。

すね肉と筋肉を水に漬けて血抜きする間に、昨日採って来たブルーベリーでジャムを作っておく。

コトコトと煮詰めながらアクを取っていく。

ブルーベリー自体の甘さが強かったので砂糖は少なめに、発色を良くする為にレモンの搾り汁も少し。

良い感じになったら鍋を降ろして粗熱を取って、瓶に詰めれば完成!

さてお肉の血抜きも出来た頃だろうから、コムタンに取り掛かりますか!



読んで下さりありがとうございます。

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