23:なんとかなる、たぶん
ふっふふ~ん♪
ゼラチンが上手く出来たのでゼリーを作って見た。
ちょっと独特の匂いがあったので匂い消しで少量のミントとレモンが入ったブルーベリーゼリー。
プルルンとしてキラキラと光って美味しそうに出来たからご機嫌だったのよ。
鼻歌混じりでちょっとリズムにのってたら、レザールさんとベリアさんに見られてしまった。
「 ・・・ 」
「ごめんなさね、一応ノックはしたのだけど・・・」
「歌だとは思わなくて、具合を悪くして倒れて唸っているのかと・・・」
「だ、だいじょうぶです・・・ ははは・・・」
選曲が駄目だったか、そりゃそうよね。ヘビメタだもの・・・
「それでその紫の物体は何だい?」
「これはブルーベリーのゼリーです」
「ブルーベリーだとデザートか?」
「アスピックゼリーとは違うのね」
ハッ、そうだった。
ここ等辺でゼリーと言えばおかずになるアスピックゼリーだった・・・
しまったぁ、やっちまったい。
「フルーツで作ったらデザートやおやつにならないかなぁと思いまして・・・
試しに作っただけなので、味の確認は今からなんです」
「あらそうなの? 私も興味あるわ。一緒に頂いてもいいかしら?」
「俺もいいか?」
「是非、食べてみて感想を聞かせていただけると助かります」
という訳で試食会が始まった。
器に盛りつけてテーブルに並べる。
どうせならと、生のベリー達で飾ってもみた。
生クリームも欲しい所だけど、さすがに今から作るのはちょっと・・・
「キラキラして綺麗ねぇ」
「これは女性陣が喜びそうだな」
眺めた後に3人で食べてみる。
うん、美味しい!
レモンのお陰で発色もいいし、かすかなミントの香りのお陰でゼラチンの匂いも気にならなくなっている。
私的には大成功だけど2人の反応はどうだろう。
「美味しいわねこれっ」
「さっぱりしていて口直しにいいかもしれないな」
おぉ、好評のようだ。
作り方が知りたいと言うので教えておいた。
とは言っても教えるって程のものじゃないのよね。
ジャムやジュースで簡単に出来るんだもの。
2人は家でも作ってみるといいながら帰っていったけど、何か用事があって来たのではなかったのだろうか。
まぁいいか、用事があるのならまた来るだろう・・・
そう思ったのだけどレザールさんはすぐに戻って来た。
「大事な事を伝え忘れていた。
明日、今年最後の交易商が来るから買い忘れの無いようにな。
それとロックバードの肉を魚と交換して欲しいんだが」」
「そうなんですね、買い溜めしに行かなければ!
魚は鮭とトラウトがありますよ、どの位必要ですか?」
「出来れば10尾欲しいのだが」
「ありますよ、今持って帰ります?」
「いいか?肉は明日渡すから」
「はい、ちょっと待ってくださいね」
燻製4と塩漬け4,無味の干物2を渡すとレザールさんは急ぎ足で帰って行った。
なるほど、用件は交易商の事を伝えるのと交換だったのね。
どんな物を売っているのか楽しみだ。
そろそろ白夜も終わるとあって町の中が賑わっていた。
あちこちに露店も出ていて歳末のバーゲンセールや酉の市を思い出させる。
私達はまず物々交換出来る店から覗く事にした。
調味料類はあのライカンスロープさんのお店で買うとして、雑穀類も買い足しておかないと。
見て廻っていると半分くらいのお店は物々交換可能みたいだった。
意外にもビックアントラースやヘラジカの角を欲しがる人が多かった。
ボタンや櫛、スプーンやアクセサリーを作るのに使うんだそうな。
ただ、そういった物との交換をと言われても私達には不要なんだよね・・・
裁縫は2人共お察しレベルだし、櫛やスプーンなんかは今あるので十分だし、アクセサリーは爪や牙で自作したのがある・・・
困っていたら1人のおばちゃんが木彫りの狼と交換はどうだと言ってきた。
見せて貰うと両手サイズの精巧に作られていた物だった。
角1本で木彫り狼2体に手編みのニット帽でお願いしたいと言われたので交換する事にした。
と言うか、私達が売り手みたいになってるんだけど・・・
申し訳ないけど他の人にはまたの機会にお願いしますと伝えた。
だって必要な物が買えなかったら本末転倒じゃないよ。
その場を離れて野菜を売っているお店へと行く。
じゃが芋人参玉葱を2箱ずつ、この3点があれば何とかなる、たぶん。
後はキャベツとカブとトマトを1箱、レモンとサラダ菜も1袋ずつ買っておいた。
次にライカンスロープさんのお店で調味料や香辛料を買う。
ライカンスロープさんは肉があるなら肉と交換でどうだと言ってくれたのでイッカクのバックボーンリブとアングリーベアの肩肉があると伝えた。
悩んだあげくライカンスロープさんは肩肉を選んだ。
大きさを見て驚いたライカンスロープさんは、あれもこれもとスパイスを追加してくれた。
他の人はもっと小さい塊なんだって・・・
次に雑穀を売っているお店へといって、各種雑穀と粉を1袋(30㎏くらい)購入した。
後はパンと酵母を買って、最後にレザールさんの所で卵を購入してロックバードのお肉を受け取る。
荷車も大分埋まったし、さあ帰ろうか。
「リュン、貿易商の露店は見なくていいのか?」
「あ・・・、見る!忘れてたよ」
危ない危ない、すっかり忘れてたよ・・・
移動して覗いてみれば、本当に色々な物が売ってあった。
靴や服から食料品、なんだか使い道がよく解らない物まであった。
私が気になった物は3つある。
1つは香りからしてたぶんウーロン茶の茶葉。
店員さんの説明だと他大陸から仕入れた物らしい。
もう1つはちょっと高いけどコーヒー豆。
これも他大陸から仕入れたのだとか。
そして一番気になるのが、この紫芋。
紫芋って名前になっているけど薩摩芋だと思うんだよねぇ。
これはエルフの国で作られているんだそうな。
保存方法が難しくて1ヶ月くらいしか日持ちしないのだと言っていたけど、そうか知らないのか。
薩摩芋は寒さに弱いからすくもを被せて土の中に埋めておくと長持ちするんだよね。
あ、すくもって言うのは籾殻の事ね。焼き芋作る時にも重宝するんだよ?
若い子は知らないかもだけど・・・
ウーロン茶もコーヒー豆もお高いのに紫芋は安かった。やはり日持ちしないと思われてるからだろうか。
ウーロン茶とコーヒー豆は小袋で大銀貨1枚、日本円だと1万円の感覚だ。
それに対して紫芋は大袋で小銀貨1枚、千円くらい。
ニクス兄さんと相談してウーロン茶とコーヒー豆が小袋を1つずつ、紫芋は大袋を5つ買う事にした。
紫芋をまとめ買いしたからか、店員さんはオマケにとオレンジの小袋を1つくれた。
買い忘れはないよねと確認した後家へと戻った。
「日持ちしないと言っていたがそんなに紫芋を買い込んで大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、たぶんこれ私が知っている芋だと思うんだよね。
試しに1つ、焼き芋で食べてみようよ。
もし私が知ってる芋だったら保存方法も知ってるから6ヵ月持つよ?」
「6ヵ月もか!」
ペチカに放り込んで焼き芋にしてみた。
パカッと割って見れば透き通た黄色のシットリ系だ。味はとても甘かった。
やったぜ、これ当たりの薩摩芋だ!
最近ホクホク系が多くてなかなかこの甘みの強いシットリ系に出会えなかったんだよね。
まさか異世界で出会えるとは。もっと買っておけばよかったぁー!
「なんだこれは、甘いが嫌な甘さではなくて旨いな!」
「でしょー、これ当たりだよ。凄く美味しい。もっと買えばよかった」
「次に買う時は多目に買えばいいさ」
「うん、そうだね」
ちなみに保存方法については、この世界だと知られていないようなので内緒にする事になった。
薩摩芋は食物繊維が豊富でビタミンCも採れるし、便秘にいいなんちゃらって成分が入っているらしい(うろ覚え)
つまり運動不足になりがちな冬場にはもってこいなのよね。美肌効果もあるし?
味噌があればトン汁も作れたのになぁ、残念。
作者の地元ではトン汁に薩摩芋を入れます。ほんのり甘くなって美味しいんですよ~。
読んで下さりありがとうございます。




