18:そう言う事か
家の間取りを相談していた私達だけど、結局は元の家と同じ間取りにする事になった。
私としては平屋の方が良かったのだけど、ここの積雪量は半端なく多くて平屋だと丸っと埋まってしまう事があるらしい。
だからどこの家でも2階建てにして、いざと言う時には2階の窓から出れる様にしているのだとか。
あー、確かに元の世界でも数年に一度玄関が埋まって2階から出るハメになったな・・・
間取りが決まったので明日は道具を買って来て解体作業に取り掛かる事にした。
リックス兄さんは自分の部屋があった事にホッとしたようで、僕も手伝えればよかったんだけどごめんねと言いながら教会へと戻って行った。
2頭の馬と幌馬車はここへと置いて行ったのだけど、この2頭はヘビードラフト種なのだそうでクィーンよりは小さいけど大型の馬なんだよね。
名前は「うーちゃん」と「まーちゃん」。当然私よりも体高がある訳で・・・
困った事があれば言うのよとか、無理はするんじゃないわよとか言われてしまった。
それにしても「うーちゃん」と「まーちゃん」って、2頭合わせて「うま」じゃない。
センス無さすぎじゃない?
さて買い出しに来ているのだけどね?
私達が欲しいのは木こり用の大斧とノコギリやバールな訳であって、ナイフではない。
なのに危ないからとナイフを勧められている・・・
いやいや大丈夫だから、大斧は無理だけどノコギリとバールなら使えるし普通の斧も使えるから。
ナイフじゃ解体作業出来ないでしょうが。
ニクスさんが使うからと言う事でやっと購入出来たのだけど、ちゃんと人の話は聞いて欲しいし客の求める品を売って欲しいのだけどね。
なんかこの店に対して苦手意識を持ってしまった。
でも他に金物屋は無さそうなんだよね。
私は眉間に皺がよってしまった。
次に寄ったのは調味料を扱っている食料品店。
ここの店主さんは魔族のライカンスロープさんだったのだけど、正直獣人と大差ないような気がする。
獣人の様に人に近い姿ではないけど、2足歩行の獣姿だからモフモフしていて触りたく・・・ダメダメ、初対面で触ったら不審者じゃないよ。
でもライカンスロープなら嗅覚が優れているだろうから調味料扱ってて大丈夫なんだろうか、ハーブとか香辛料の匂いきつそうなんだけどな。
「ああ、気にしてくれたのか。大丈夫だよ。
仕入れの時は匂いで品質などの確認はするけど
普段はこうやって瓶に入れてあるしね。
それに匂いで解るからまがい物に騙されずに済むからね」
なるほど、確かにそうかも。だったらここは安心して買い物が出来そうだ。
実はカレーに仕えそうなスパイスも売ってあって欲しくてたまらない。
でもカレーと言う物があるのか解らないからうかつに作れないんだよね。
そうだよ、あの本もまだ見て無いや・・・
取り敢えず普段使いの塩や胡椒、ハーブ類を買っておいた。
色々と興味がある物が多いのでまた来ますと言うと、スパイスの特徴が掛かれた冊子をくれた。
これは非常に嬉しい、間違いなく私はここの常連になるだろうな。
後はパンを買って戻った。
簡単に昼食を済ませ、と言っても最近は簡単に済ませることが多いな・・・
ニクス兄さんに言わせれば、私と出会うまではこんな感じの食事だったらしい。
なんなら生肉や生魚の時もあったとかで一瞬「えぇ―・・・」と思ったけど、刺身やユッケ、レバ刺し馬刺しなんかも生だ。
なんだ私も生肉や生魚食べてたじゃないよ。
解体作業を始める。まずは屋根部分からだ。
再利用出来そうな丸太と薪行きの丸太を見極めながら解体していく。
再利用出来そうな丸太はロープでゆっくりと降ろし、薪行きの丸太は下に人が居ないのを確認してからポイッと投げる(実際はどっこいせと言った感じだけど)
結構な年数が経っているので思ったよりは軽いのと、獣人になったからか以前より力があるように思う。
再利用出来そうな丸太が全体の1/3くらいだろうか。
なのでほとんどを雑な扱いで済ませる事ができる。
それにしても無駄に広いなこの家・・・
屋根の1/4が終わった所で休憩を挟む事にした。
買って来たローズヒップでお茶を淹れる。
これは元の世界でもおなじみのハーブで疲労にもいいんだよね。
ビタミンCがたっぷりなので美肌にもよかったりする。
生前はハーブティー好きでよく色々なハーブティーを飲んでいたのよね。
待って? 生前じゃないわよ、殺さないでもろて・・・
いや言ったの自分なんだけどさ。
生前じゃないわよ、元の世界ではだよ!
あれ、もしかして生産スキルの調薬Cってさ、ハーブやスパイスの効能知ってるからだったり?
なるほど、そう言う事か。
薬なんか作れないわよ薬剤師じゃないわよとか思ってたけど、ハーブやスパイスの知識だったかぁ・・・
まぁ自分達だけなら大丈夫でしょ、たぶん・・・
休憩の後は夕暮れまで解体作業を続けた。
本業の大工さんが見たらきっと危なっかしいんだろうなとは思う。
いいのよ、解体出来て怪我さえなければ。
夕食はスープを作って食べた。
疲れた体に染み渡って美味しかった。
ポタージュが恋しくなったけど、この世界にあるのかわからないし。
ああ、そうだ料理の本も見ないと・・・
そう思い本を見始めたのだけど、寝落ちしたらしく気が付けば朝だった。
うぅーん、無念。
朝食後はまた解体作業だ。
お昼過ぎには頼もしい援軍が来てくれた。
パパスさんが声を掛けてくれたらしく、魔族の人やドワーフの人、獣人の人と種族に関係なく手伝いに来てくれていた。
そして子供は危ないから離れて見ていろと言われてしまった・・・
いやだからね・・・と思うけどこれは私が慣れていかなければならない事なんだよね。
解っているけど心理的な抵抗が・・・
仕方が無いなと諦めて、クィーンに廃材を持って来て貰い薪を作る事にした。
ノコギリの扱いもだいぶ慣れたのよ?
最初は戸惑ったわよ?
日本のノコギリだと引き切りだからあまり力もいらないんだけど、西洋ノコギリだと押し切りだから体重も掛けなければならないのよね。
慣れるまではなんで切れないのよ! 不良品じゃないの!とか思ったわよね。
夕暮れ時になる頃には壁まで取り払われて骨組みだけになっていた。
早いな・・・
ここは料理を振舞いたいところなんだけど、ぐっと我慢。
まだ料理本見てないから何がNG料理なのか把握できてないからね。
皆さん明日も手伝いに来てくれると言うか、家を建て終わるまで手伝いに来てくれるそうだ。
凄く有難い。
間取り図を見せてくれと言われたので見せると皆さんで、納屋だの厩だの薪置き場だのの位置を書き加えていった。
外に出なくても行き来出来るようにとすべて繋げて長屋っぽくなるみたいだった。
うん、これはありがたいね。
出来ればお風呂が欲しかったけど仕方がないかな、シャワーが主流みたいだし。
「ん? お嬢ちゃんは風呂が好きなのか?」
ドワーフさんに聞かれたので、何度か入った事があって体が温まるので好きですと答えておいた。
元の世界では毎日入っていたなんて言えないし、何処でお風呂を知ったのか聞かれても困るからね。
ドワーフさん達は週に1回くらいお風呂に入る習慣があるのだそうだ。
風呂が好きなら作ってやると言ってくれたので大喜びしてしまった。
そう言えばドワーフ族って物作りが得意なんだっけか。
他にも何か希望があれば作ってくれると言うので、ペチカだけではなく竃もあれば嬉しいと言えばそんなもの朝飯前だから任せておけと笑顔で言われた。やだドワーフさんたらイケメン!
生活が落ち着いたら何かお礼を考えねば・・・
この日は気合を入れて料理本と向き合う。
作っても大丈夫な料理を見つけなければ・・・
そう思ったのに気が付けばやっぱり朝になっていた。
読めたページは2ぺージで、載っていたのはホットケーキとサンドウィッチ。
これじゃ夕飯にならないんですけどぉぉぉ!
頑張って本を読むのよ私!
読んで下さりありがとうございます。




