1:UMAとの遭遇?
新作始めました。
今作も猫被りおかんがちょっとだけ荒ぶる気がしますが
基本ほっこりスローライフです。
宜しくお願いします(*'ω'*)
私、西山清香 56歳。
現在神様の人違いによって暴風雨の中、山中でポツンと佇んでいる。
ちょっと待たんかいと言いたい。
説明位ちゃんとしろよとか、何故に暴風雨の中なのかとか、何故に山の中なのかとか色々と問いただしたい事はある。
けれどもまずはこの暴風雨を避けなければマズイんじゃなかろうか。
そう思い風雨が避けれそうな場所を求めて歩き出すも、この雨で周囲が見えにくい。
しばらく歩き回って小さな洞窟らしき場所を見つけたのでそこで雨宿りをする事にした。
洞窟の中は仄暗い。
だけど明りになるようなものは何も持って居ない。
ポケットに煙草とライターが入っているから焚火でもと思ったけど、雨が降ってるから枯れ枝とか探しに行けないし探したとしても濡れてて火なんぞ付かないだろう。
仕方がないので煙草でも吸って落ち着くかと思ったけど、これまた雨で濡れていて煙草はご臨終のようだった。
ライターは乾けば使えると信じたい。
他に持ち物なんて物は無くて、やはりここでも言いたい。
せめて持ってた鞄くらいは持たせてくれよと。
さて、ここはいったい何処なのだろう。
そもそもが、名前を間違えるとか神としていかがなものかと思う。
西山清香と西山京香、似てるかもしれないけどしっかり確認すれば間違えないんじゃなかろうか。
「あれ、君西山京香さんじゃないの?ごめーん、間違ったみたい。
うーん、どうしよう、君には用が無いんだよね。
まぁいいか、適当な場所に送るね」
なんとも軽口な神は本当に適当な場所へと私を降ろしたらしく、現在地が何処なのかさっぱり解らない。
山の中なのは解かるけども、そうじゃなくて何処の県の何山なのかが解らなければ帰り方も解らない。
勝手に連れて行ったのならちゃんと元の場所に戻して欲しかった。
あ、鞄が無いと言う事は財布もスマホも無い訳で。
これ無事に帰れるのだろうか。
やだな、彷徨った挙句に人知れず死んで発見された時には白骨死体とか・・・
取り敢えず体力温存の為に寝る事にした。
おっとその前に塗れた服は一旦脱いで水気を絞っておかなければ風邪をひきそうだ。
水気を絞った後に服を着直す。
幸い真冬と言う気候ではなさそうだ。
私は雨が吹き込まない位置まで下がって、壁に背を預けて目を閉じた。
目を覚ませば暴風雨は収まっており薄っすらと日が差し込んでいた。
どのくらい寝ていたのか、洞窟から出て日の位置を確認すれば、高い位置に有るので夕方ではなさそうだ。
ならば日がある内に場所の確認と何か口にできるような木の実か何かを探しておきたい。
熊や猪などに遭遇しませんようにと周囲を警戒しながら山頂目指して歩いてみた。
山頂から確認する方が手っ取り早いと思ったんだよ、山々が連なる山脈なのか普通に森に囲まれた山なのか。
出来れば川が流れる方向なんかもざっくりでいいから判るとありがたいのだけど。
幾つかの木に生っている実を見つけたけれど、柚子だったりレモンぽい物だったりと食べるにはちょっと酸っぱいような物ばかりだ。
疲労回復にはいいのかもと完熟していそうな柚子を1つだけポケットに入れてはあるけど腹の足しにはなりそうにない。
団栗や栗も一応見つけはしたけど生食には不向きなので拾っていない。
確か人間って3日くらいなら水さえあればなんとかなるんだっけ。
まさか56にもなってこんなサバイバルを経験するとは思わなかった。
しばらく歩くと山頂に辿り着いた。
どうやら山脈のど真ん中では無かったようで、眼下に広がるのは森でその先には町が見えた。
ならば下山して森を抜けて町まで行けば地名くらいは解かるかもしれない。
山から町まで流れる川も確認出来たので川沿いに進めば良さそうだ。
とは言え疲れたので少しばかり休憩する事にした。
休憩しながら「何でこんな目にあってるのだろう」と怒りが湧いて来る。
どうせ周囲に誰も居ないし大丈夫だろう。
「人違いしてんじゃないわー!
ごめーんじゃないんだわちゃんと謝って説明しろー!
私の荷物はどうなったーー!!
せめて元の場所に戻せーー!!」
思い切り叫んだら「戻せー」と木魂が返ってきた。
少しだけ気が晴れたけど、余計にお腹がすきそうなのでこれ以上は止めておこう。
座れそうな岩を見つけてそこに腰掛け自分の足元を確認する。
スニーカーで良かったと思った。
まぁ冠婚葬祭用くらいしかパンプスなんて物は持って居ないのだけれども。
仕事帰りだったから伸縮性のあるストレッチ素材の上下でウィンドブレーカーを羽織っていたのも良かったと思う。
仕事上体力も多少はある方だと思うし。
鞄があれば予備の煙草もカロ〇ーメイトとペットボトルのお茶もあったのにな。
思い出しても手元に無いのだから空しくなる。
少し休んだし、気を取り直して歩き始める。
まずは下山しながら川を目指そう。
舗装もされていない道なき道なので下りは歩きにくい。
気を付けないと躓いてしまいそうだ。
周囲にも気を付けないと、素手でクマや猪なんかに遭遇したくない。
いや武器があればいいって訳でもないのだけれどもね。
クマよけの鈴なんてあるはずもないので、代わりに歌を歌う事にした。
浮かんだのは「森のくまさん」
なんでこれしか浮かばなかったんだろう。
ある日森の中で熊さんに出会ったとか、出会ってんじゃないわよ、出会いたくないわよ。
違う歌、違う歌にしないと。
次に浮かんだのは洋楽だった。
駄目だ、歌詞覚えてないよ。
仕方が無いので「ふふふん~♪」で口遊んだ。
要は獣に人間の存在知らせる事が出来ればいいのだから「ふふふん~♪」でも問題はないはず。
そんな感じで何曲か口遊んだ所で川辺に辿り着く頃が出来た。
川辺に辿り着いた頃には日が傾きかけていた。
ライターを取り出し火がつくかを確認すれば大丈夫だった。
それならばと一晩焚火が出来る様に周辺で枯れ枝や流木を集める事にする。
集め終わったら川と森の中間辺りで焚火の準備を始める。
松ぼっくりを見つける事ができたので着火剤代わりになりそうで安心した。
松ぼっくりと一緒に乾いた枯葉も載せて火をつけて見ればモクモクと煙が出た後に火も燃え上がった。
後は火を絶やさないように枝や流木を投げ入れればいい。
レクリエーションで焼き芋をやった時の知識が役に立ってよかったよ。
とは言え、川は昨日の雨の影響で水が濁っているので飲む事も出来ない。
ここは柚子の出番だろうか。
完熟してるしそこまですっぱくはないよねきっと。
そう思い皮を剝いて食べる事にした。
「おい、こんな所で何をしている。仲間と逸れたのか」
柚子を食べた後に転寝をしていた私は誰かに声を掛けられ揺り起こされた。
寝ぼけた視界に飛び込んで来たのは透き通った青の瞳だった。
外国人?! え、此処って外国だったって事?
いや、カラーコンタクトかもしれない。日本語喋ってるし。
そう思ったものの次に視界に飛び込んだのは白銀色の髪の上でピコピコと動く丸い耳。
こんな山奥でコスプレ? しかも夕暮れに?
思わずじっと見つめてしまった。
「獣人が珍しいのか。何処から来たんだ?」
「何処からと言われましても私にも分りませんし、此処が何処かも分かりません」
そう答えながらも頭の中は半分パニックになっている。
今獣人と言った? 獣人なんて空想の世界の話では?
知らないだけで実はひっそり隠れ住んでいたとかUMAとか?
「自分の名は解かるか?」
「西山清香、キヨカです」
「キヨカか、名前が解かるのであれば記憶喪失ではないな。
誘拐か捨てられたか・・・」
「ある意味誘拐でしょうかね?」
「ふむ、詳しく話を聞かせて貰えるだろうか。
何か力になれるやも知れん。
が、まずは場所を移そう。ここは物騒だからな」
促されるままに焚火を消して後を付いて行く。
案内された森の中には巨大な馬が待っていた。
8本足・・・
そんな馬は神話でしか知らない。
もしかしてもしかしなくても、これは地球ではないと言う事だろうか。
異世界とか異星とか。
いやいやまさかねと思いたかったけど、空に浮かぶ3つの月を見て嫌でも納得するしかなくなった。
「馬には跨れるか?」
「その前に登れない気がしますね・・・」
私の伸長169センチ、対する馬の体高2メートルくらいをどう登れと。
自慢じゃないけどこちとら運動音痴な56歳で股関節だって硬いわよ!
「では少々失礼する」
そう言ってその獣人さんは軽々と私を抱えて馬に乗せた。
獣人さんの身長は3メートルくらいでそれに比べると私は子供くらいの大きさだろうか。
私を乗せた後に獣人さんも馬に跨る。
「急ぐのでしっかりと鬣に掴まっていてくれ」
「はい」
鬣と言われても痛くないのだろうかと不安だったが中途半端に掴む方が痛いのだと言われたのでしっかりと掴む事にした。
読んで下さりありがとうございます。
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と言うか悩み中です(;´Д`)




