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第21話 美しい光景である

「ふ~む……」


 朝にぐっすり仮眠が出来たので、かなり調子が良い。

 きちんと約束通りに始業チャイムの直前に起こしてくれた多々良浜さんには感謝だ。


 おかげで、授業中に寝てしまう事もなく、こうして考え事ができている。

 え、授業をちゃんと聞けって?


 中身はアラサーなんだから、高校1年の勉強なんて余裕だし。


 ───昨晩の晴飛の定期報告の内容から察するに、俺に課せられた使命はどうやら晴飛のサポート全般ということなんだよな。


 当初は、取り敢えず晴飛の周囲の女の子の情報だけ集めればいいかと思っていたのだが、どうやら俺の認識が甘かったようだ。


 そりゃ、ただ単に主人公様の周囲の女の子の情報を集めるだけだったら、実銃とか最新の狙撃ライフルとか要りませんもんね。(白目)


 なお、晴飛に常にはりついていろという訳ではないらしく、学校生活について生徒視点からの報告やサポート、いざという時の用心棒というのが俺に求められている物のようだ。


 業務分担って大事。


 さて。


 となると、俺の大目標はとにかく晴飛の近くに居ることだという事になる。

 主人公様と円滑な関係を築いていくことは、咄嗟の際の晴飛の護衛のためにしろ、定期報告のためにしろ役立つことだ。


 大目標から逆算して、ゲームの各イベントごとに何をすべきか?


 アラサーリーマン時代の悲しい性でスケジュールチャートを引いたり、マイルストーン設定を授業そっちのけで内職する俺。


 なにせ、いたいけな男子高校生に普通に銃火器を与えるようなバックがついているのだ。

 しくじったら、バックにいる組織?からどんな罰があるのか分かったものではないのだ……(泣)


 アラサーリーマン時代以上にプレッシャーを感じながら、俺はガリガリと今後の作戦を練るのであった。




 ◇◇◇◆◇◇◇




「という訳で、お昼ご飯を晴飛と食べたいんだけど」

「「え⁉」」


 2限の授業終わり。

 授業中に集中して内職を終えた俺は、開口一番告げる。


 考えた結果、他クラスの晴飛と仲良くなるためには、昼休みの過ごし方が当座は重要だと思ったのだ。


「あの、橘君。『という訳で~』の、一番重要な部分の説明が抜けてるんですが?」

「ゴメン、それは色々と言えない……」


 ここは理由を伏せて、深刻な感じを出した方が良いかという策略で、俺は思いつめた表情で聞いてくれるなと告げる。


 実際、聞かれても答えられないしな……。


「なんで、1組なんですか?」


 普段は温厚でニコニコしている多々良浜さんが、すんごく冷たい目で見てくる。


 そして、その背後からクラスの女子たちがめっちゃこっちを見てくる。


「え、いや……昼休みのランチ会もクラス内で一巡したし……」

「私たちだけじゃ不満ですか?」


「あ、いや不満とかじゃなくて……」


 少し悲しそうな顔をする多々良浜さんと、バックでもっと悲しそうな顔をするクラスメイトたち。

 罪悪感が凄い……。


 そんなに、俺との昼休みのランチタイムが楽しみなの?


「まぁまぁ、みな実っち、落ち着いて。要は橘っちは1組男子の観音崎君と仲良くなりたいってこと?」

「う……うん。そうなんだよ三戸さん」


 助け船を出してくれる三戸さんに、全力で乗っかる俺。


「みな実っち。過保護である事と2組のクラスの中に橘っちを閉じ込めておくのは違うよ。それを望まないって言ってたのは、他ならぬ、みな実っちだし」

「う……それは……」


「1組との懸念事項について提言したのは私だけど、だからと言って橘っちに窮屈な想いをさせたくないんだ」


 三戸さんは笑顔だが、その眼には確固たる意志が宿っていた。

 ギャルが正論っぽい事言うと、謎に説得力があるのって何なんだろうね?


「そうだよね……」

「私たちが1組を目の敵にするのと、橘君が同じ男子の子と仲良くするのは切り分けて考えないとね……」


 その真っすぐさと揺ぎなさに、クラスの空気も風向きが変わってくる


「うう……私が間違っていました……。私は学級委員長失格です……」

「そんな事ないよ、みな実っち。橘君を守りたかったんだよね?」


 床にへたり込んでしまった学級委員の多々良浜さんに手を差し伸べ励ますギャル。

 美しい光景である。


「私からもいいか?」

「久留和さん……」


 ここで、以外にもシャイな女番長の久留和さんが参戦してくる。


「護衛役として私がついている。任せてくれ」

「そうだね護衛役は必須だね。久留和っちがいてくれれば安心だ」


 いや、あの……。

 俺が晴飛の護衛をしようって話なのに、なんで護衛の俺に護衛を付けようって話になってるの?


 構図が訳わかんなくなるんだけど。


「……分かりました。私の方で、1組の学級委員の江奈さんと調整してみます。ただ、昼食会の開催の仕方についてはこちらに一任させてください。それでいいですか橘君?」

「お、おう……。その前に、まずは俺の方から晴飛を誘ってみるよ」


 この世界では、学食でご飯を食べるのも、男友達とご飯食べるのも大変なんだな……。


 男女比1:99と貞操逆転世界の裏側の面倒くささを感じつつも、取り敢えずは目的は遂げられそうで安心した。

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